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28歳助産師、子宮体がんになった話③

夫の最後の夏休みの日。
私は仕事を午前休みにして一緒に病院へ向かった。
夫も医療者のため、私たちは待合いでパソコンを開いてガイドラインや文献を
なんとも言えない気持ちで眺めながら過ごしていた。

その病院ではプライバシーのため、患者さんを番号で呼ぶ。
はずだった。
なのになぜか、私を見つけた看護師さんは
そろりそろりと近づいてきて、小声で私の名前を呼んだ。
明らかにビップ対応(?)だった。
いや、勝手にそう思ったのかもしれない(笑)
とにかくこれまでとは違う対応に、またまた悟った私。

診察の前に、エコー室に入る。
元気な先生が、無言で作業を始める。
また悟る。これはただ事ではないぞ。

夫と診察室に入る。
先生「実はね、がん細胞が出てしまってね。僕も本当に驚いていて」
私「はあ、そうでしたか」
夫「(無言)」

とまあこんな感じで進んで行ったように記憶している。
先生の説明ではおそらく子宮体癌の一番ステージが低いと踏んでおり、
完治するには子宮摘出しかないが、子供を望むなら薬で温存治療する
ことができる(ここまですでに待合いで予習済みだった)
迷わずに、後者を選んだ。
けれど、ステージはまだ決まっていない。
少しでも筋層にがん細胞が進んでしまっていたら、リスクは上がる。
すぐに検査を組んでもらいその日中にMRIを受けた。

夫は淡々と、なんとも冷静で、治療方針について質問をしたりしていた。
私もこんなにもすんなりと受け入れている自分に驚きすら覚えた。

そう、がんと宣告されても、がーんとは、ならないのである。
どちらかというと、じわじわドキドキやっぱりかぁ…さあどうしよう、
というのが私のがん宣告だった。

2回目のMRI。
筒の中に30分閉じ込められる。前回とは大違いの気持ちだった。
もちろん指輪は真っ先に外した。
だから、ただひたすらにどうなるかわからない未来について、
ひたすらに、ひたすらに、考えて、願った。

続く

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