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おまめのおしり

「おまめのおしりって、どこかなぁ?」
我が家の4歳児がそら豆をみながら独りごちている。

そら豆そのものがもうお尻みたいだな…と私は思ったけど、お尻要素を強めてしまっては相手の思うツボになりそうだったので口にするのをグッとこらえた。

だから歌った。
♪おまめのおしりはここなのか? という即興曲を歌った。

子どもを膝に乗せて「おまめのおしりはここなのか?」と歌いながら、子どもの頭を触り、つぎは肩、鎖骨、膝、つま先、脇腹…とくすぐったそうなところをつつくという遊び。

ぎゃはははと楽しそうな声をあげて笑いこけている4歳は、もはや豆の尻がどこかなんて気にしていないだろう。尻はどこだっていいんだ。

もしかしたら豆なりの「尻」といわれる場所が見つかるかもしれないけれど、決めつけずに「どこなんだろう?」と思いを巡らせることに楽しみを覚えてほしい。もしかしたら君にとっての脇腹は豆にとっては尻みたいなものかもしれないしね。

…なんだか自分の言っていることがよくわからなくなってきた。また寒さがぶり返してくるからか思考の方も動きが鈍い。

茹で上がったそら豆はさっきとはうってかわってしおしおとした表情だ。茹でる前の方が美味しそうに見えるのがやや複雑。でもその薄い皮をやぶると、目にも鮮やかな黄緑色が顔を出す。

「いやぁ〜整いましたわぁ」とサウナ上がりのそら豆はビールでも飲み出しそうな勢いだ。晩ご飯までまだ時間があるけど、一粒口にお出迎え。

そら豆独特の香りがふわりと香って、中の豆が二枚貝みたくパカっと割れてほどよい歯応えで広がった。塩気が最高。
ちなみに個人的な話だけれど、「塩味:えんみ」という言い方が苦手なので「塩気」とか「塩っけ」とかって言っていきたい。

ああうまい。もうひとつたべたい。
キッチンで食べるとなんでも旨く感じてしまう。

胃腸炎明けの胃は、茹で上がったそら豆みたいにまだしおしおとしているので無理は禁物。
だけど、そら豆をビールでよろしくやりたかったな。

そら豆の尻のなぞはいつの間にか消え失せてしまったけれど、子どもの尻ブームを侮ってはいけない。いまや尻が探偵をする時代なのだから。

そら豆が眠っていた梱包材の敷かれたサヤ。
そのひと部屋を借りて、丸くなって寝よう。
尻はどちらに向けたらいいですか?

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