ソボクなギモン①野菜は身体にいいのか?という疑問その1
という記事を読みました。
要旨としては、「野菜と果物を食べるとがん予防が期待できる」と国立がん研究センターが言っているというものですが、本当に野菜と果物を食べるとがん予防になるのが明らかになっているのでしょうか?
気になったので調べてみました。
国立がん研究センターが、①野菜・果物の摂取が一部のがん(食道がんなど)について、リスクを低下させると発表していること、②野菜・果物の摂取を推奨していることはそのとおりです。
では、がん全体でみると、どれくらいリスクが減るのでしょう?
同センターが公表している、日本の6つのコホート研究からの約20万人のデータを併せたプール解析(2017年発表)では次のようなものになっています。
男性では、果物の摂取量と年齢と地域のみ調整した全がん罹患リスクの間に統計学的に有意な負の関連がみられましたが、他の喫煙、飲酒、検診受診歴等の要因を調整したところ、この関連は消失しました。野菜摂取と全がん罹患リスクの間にも、関連は認められませんでした(図1)。女性でも、野菜・果物のいずれも、全がん罹患リスクとの間に、関連は見られませんでした(図2)。
国内最大規模の研究だと、野菜、果物いずれもがんとの関連は見られなかったとの結論です。
そして他の国での大規模なコホート研究に関して、こう述べています。
野菜・果物とがん罹患の関連を検討した10万人を超える規模のコホート研究では、これまでに欧米からは3件報告されています。そのうち2件の、50万人級の非常に大規模な研究で、野菜のみ、ごく小さな予防的関連(高摂取により2%~6%の罹患率の低下)を見出していますが、果物には予防的関連は報告されていません。一方、アジアからは、死亡率を評価指標とした中国の前向きコホート研究の報告がありますが、やはり野菜も果物もがんと関係なしと報告されています。野菜や果物と部位別のがんとの関連を調べた研究でも、近年、関連が見られなかったという報告が多くなっています。
海外でも同様に、野菜・果物の摂取とがんは関連がほとんどみられていないというのが、最新の研究結果のようです。
となると、野菜や果物ががんを予防するとは科学的に断定できないのではないか?
また、同センターの「がん予防法の提示」でも、野菜・果物は次のように述べられています。
野菜・果物と脳血管疾患およびがん全体との関連を見たコホート研究では、果物と脳血管疾患との間に負の関連が見られたのに対し、がん全体との間には特に関連は見出されませんでした(Takachi et al. Am J Epidemiol 2008)。これまでの複数の研究からは、野菜・果物は少ない摂取量のグループにおいて、がんのリスクが上がることが示されていますが、多く摂れば摂るほどリスクが低下するという知見は限られています。
野菜・果物によるリスクの低下が期待される、食道・胃・肺がんは、いずれも喫煙との関連が強く、食道がんは飲酒との関連が強いがんです。従って、まずは、禁煙と節酒が優先されますが、脳卒中や心筋梗塞等をはじめとする生活習慣病全体にも目を向けると、野菜・果物を毎日とることがすすめられます。
がん全体に関して、野菜・果物はあまり効果が確認されてないし、禁煙と節酒の方が重要だけど、がん以外の病気のことも考えると、摂取したほうがいいんじゃない?くらいな感じですかね。
ついでに、野菜・果物不足でがんになる人ってどれくらいいるんだろうか?ということも気になったので調べてみたら、これも同センターが発表しています。
![](https://assets.st-note.com/img/1730603099-hj2TnExM7SQ19rksop4CYRIv.png?width=1200)
男女の合計でみると、国内のがんの発生(2015年)のうち、なんと合計0.3%が野菜・果物不足によるものと推定されています。
…これ、少なくないか?それはリスクと呼べるのだろうか?
実際に2005年の研究の時には、こう述べられています。
また、食事要因の影響が欧米の推定よりもはるかに小さいことが示されました。これについては、日本人の食事がもともと健康的であることのほかに、この研究では塩分、果物不足、野菜不足に限って推計していることが挙げられます。日本人の食習慣を調査で正確に把握することは難しく、誤分類などによって、本来のリスクが過小評価される可能性があります。食事要因を明らかにしている疫学研究の数も限られます。
少なくとも日本人にとっては、今のところ食事要因のうち果物・野菜不足のせいでがんになったという人は、ほとんどいないと一応言えそうです。
というわけでですね、これらを総合考慮してみるに、国立がん研究センターは、野菜や果物ががんを予防するとは別に断定していないし、今のところ最も信頼できそうな大規模研究でもその効果は確認されておらず、一部のがんについては予防効果がありそうだから、摂取しておくのがオススメ、と言ってるに過ぎなそうです。
もちろん、今後研究が進めばまた変わっていくこともあるのでしょうけども、少なくとも今の時点で、「がん予防だ!野菜食え野菜!」と声高に叫ぶのは、正直非科学的だろうと思います。