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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(67)
前話
花嫁研修もつつがなく終わり、カロリーネお姉様のウェディングドレスが出来上がってきた。これはカロリーネお姉様には内緒の話。別にお母様と私とで使わないウェディングドレスの仮縫いをしてある。もったいないけれど、仮縫いだから使い道はあるわ、とお母様が言うのでお言葉に甘えた。スタイリッシュなお姉様にはすらりと体の線が出るようなシンプルなウェディングドレスに決まった。ヴィルヘルムやクルトはまるでお姫様のようなデザインを押してきたけれど、ショートカットの花嫁には似合わないとフリーデと説得した。お姉さまは快活な方。そして大人な方。人生の酸いも甘いも経験してきたお姉様にしか着こなせないようなドレスを作ったつもり。その箱を私が持たされて、お姉様の宮に行く。兄弟姉妹の一行に珍しい視線が来たけれど、いつものこととすぐ解放された。いつも、行ききしているからよかったわ。最近は手紙も落ち着いて、私もお姉様をお人形にすべく、お母様と突撃していた。ああでもない、こうでもないと服をとっかえひっかえ。ドレスもどんな衣装もお姉様には似合っていた。私はそこまで似合うものはない。どこかクラッシックないでたちになってしまう。短いスカートが苦手でたまらないの。目の保養と言われても着る気はないわ。クルトが持ってくるけれどいたしません、と突っぱねている。半袖は涼しいから着るようになったけれど。もう、冬を通り越して初夏になろうとしていた。あの婚礼の準備が始まったころは冬真っただ中だったのに。時間がたつのは早いわ。
「お姉様! ご成婚おめでとうございます。ウェディングドレスよ。正式な」
私が言うとお姉様はきょとんとなさる。
「え。仮縫いしたのに」
「それはダミーなの。みんなでデザインを選んでお姉様にプレゼントするサプライズを計画していたの! はい。本番のウェディングドレスよ」
箱を開けて中身をだす。そのデザインにお姉様はまぁ、といって瞳を輝かせる。
「さすが、エミーリエね。私が求めていたのはこれよ! すっとしたラインのこのシンプルなドレスが着たかったの。伝統衣装はこてこてして嫌だったのよ。ということはお母様も結託したのね」
「母は手伝っただけですよ。仮縫いで作ったのは娘にでもおあげなさい」
「娘!」
お姉様は目を回しそうになった。横でヴィルヘルムが支える。それをクルトが助ける。
「ヴィー。姉上につぶされるぞ。身長を考えたほうがいい」
「なんですってー! まるで私が重いみたいじゃないの!」
ヴィルヘルムとクルトとお姉様の追いかけっこが始まる。ほのぼのとした雰囲気に私もフリーデもお母様もにこやかに見つめる。
「ちょっと! 母上! 姉上を止めてください!」
「この際、姉の愛情をたっぷり受け取っておきなさい。じゃ、ここは任せましたよ」
お母様が面白そうに見ては去っていく。
「エミーリエ!」
「フリーデ!」
「しーらないっと」
「存じません」
「ひー!!」
三姉兄弟の追いかけっこを悠々と眺めていた私とフリーデ。サプライズは無事成功したのだった。次はフリーデの番ね。一人ふむふむと納得していると、流れたのかクルトが余裕っぷりをみせて私にアイコンタクトを送ってくる。私が軽くうなずく。それを見たお姉様がギアをあげる。
「ひー!!!!!」
さらに猛追をくらった兄弟だった。面白おかしい日々が過ぎていこうとしていた。
珍しく兄弟仲を書いてました。もう80まで書いているので、この頃の話は見直して、え? となることが多いです。しかし、疲れた。今日は通院であのきつい坂を上って行ったので、へとへとです。しかも、4000字の「とびきり」の四話目も執筆。土壇場で考えながら書きました。あとは「最後の眠り姫」の続きなんですが、書けるのかしら。ついに東へと発つのですが、その前に事前情報を入れ忘れました。エミーリエに復習させるか。休憩取って書いてきま~す。ここまで読んでくださってありがとうございました。
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