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【未完小説(完結目指します)】とびっきりの恋をしよう! 第二部 第六話 子育てと恋人の時間

前話

 こうして子育て、もとい、育成が再開された。レンとサーコは毎日、恋人つなぎで太陽の間に行く。そこで二人はサーコの言う、優しい気持ちを送る。すると優しさに触れた分だけ、育成が進む。太陽はもう、今にも育ち切ってしまいそう見えたが、まだまだ力は足りなかった。月はまだよちよち歩きを始めた頃とでもいう、初期の段階だった。レンは、太陽のようにフレアも出ていないのでよく月の子の頭をなでた。そのたびに発光する。淡い光は母の面影を思い出させ、レンは胸がいっぱいになる。それをまた月の子とサーコで慰めるのが常であった。
「お前はいい子だなぁ。パパのこと慰めてくれて」
 ジュースを片手に月の子をなでる。またもピクニックを開催していた。月の子はなでられた分だけ発光して大きくなっていく。太陽の子とは少し違った育ち方をしていた。
 最近では「食べる」という芸まで覚えた。サーラの作るリンゴパイが好物で、それを近くまでもっていくとかぽっと口のような穴をあける。そこへパイを入れてやるとはねて喜んで食べている。その消化したものはどこからでるの? という問いにはなぜか答えがなかった。甘いものがとにかく大好きでレンは歯磨きをしてやっていた。歯もないのだが。その様子をサーコがニコニコ見ている。サーコは驚くべき月の子の生態を目にしてもいつもニコニコとみていた。太陽の子は食べ物は食すつもりはないらしいが月の子が食べているのを面白そうに見ていた。太陽は神々しくなっていくのに月の子は本当の幼児のようになってきていた。
「お前。本当に月になる気があるのか? 天にはリンゴパイはないぞ?」
「差し入れぐらいはできるわよ」
「サーコ!?」
 驚きのまなざしでレンがサーコを見る。
「読まなかったの? 太陽と月が誕生したら私たちで天に連れて行かないといけないのよ。太陽と月の車に乗って」
「そうなのか?!」
 レンは初耳だったようだ。サーコはため息をつく。
「育児に夢中になってこの子たちの行く末をまだ知らなかったのね。ある意味、パパとしては立派だけど失格よ。この子たちの将来を決めるのは私たちなんだから」
 サーコがしっかりとして言う。いつの間にかサーコは強い母になっていた。さしずめ、レンは子供をあまーくあまーく育ているダメ父親だ。そんなに過保護になる必要はない。サーコを過保護にする癖がここでも出ていた。
「パパはだめねぇ」
 深いため息とともにサーコが言うと月の子も同意する。
「お前なー。もうリンゴパイ持ってこないぞ。ママばっかりだったら」
 それは困ると月の子が焦っておろおろする。
「ばーか。パパはそんな意地悪しないよ。ちゃんと最後まで面倒見てやる。で、その車ってどこで手に入れるんだ? 作るのか?」
「そこはまだ調べ中。レガーシの資料が膨大で調べるのに時間がかかるの。パパも手伝うわよねぇ?」
 ちろん、と面倒なことは押し付けるレンをサーコが見る。蛇ににらまれたカエルだ。
「調べます。調べる。だから捨てないで」
「なんでそこでレン子ちゃんなのよ」
「しらん。ルーの女の子っぷりが身についたのかもしれん。ルーは可愛い女の子だもんなぁ~」
 またでれでれである。はぁ、とため息をつくサーコと太陽の子であった。

 そんな楽しいピクニックから帰るとサーコが言い渡す。
「さぁ。レン。頭切り替えてもらうわよ」
「へ?」
「これから太陽と月の車について調べるの。一からつくらないといけないとなると大変よ。それに育成の後で天に昇ってもしばらくは様子をみてあげないといけないみたいなの」
「えぇ~~~。天に昇らせて終わりじゃないのか?」
 いつ果てとなく続く育児にレンは驚きを隠せない。天に上る時には大人だろうと思っていた。実際、太陽の娘は育成してからその後、何もしていない。ただ、育成者として見守っていただけだ。手は加えていない。それが、自分たちの時は手を加えることになっている。育成はどこまで続くのか恐ろしくなってきた。その様子を見ていたサーコはバシッとレンの背中をたたく。
「やぁねぇ。人間みたいに十八年も二十年も見るわけじゃないわよ。ただ、最初の頃は不安定だから見守ってあげないとだめなの。ほら。さっさと座る」
 サーコは椅子の背を引くと座るように指示する。レンがすとん、と座る。呆然自失というとこか。
「いいじゃない。かわい~い娘をいつまでも見れるんだから」
 にっこり、とサーコが言う。
「サーコ。根に持ってるな」
「何の根?」
 すっとぼけるサーコである。むろん、わかってはいる。レンにかまってほしいが、言えない立場だ。育成者としてレンよりも何歩も先を行ってやきもきさせたのだから。果ては倒れて心配をかけた。今さら、かまってと言えるはずもなかった。ただ、時々妙に強烈な孤独感に襲われることがある。自分の中の闇が強くなっている気がする。いつか肥大して暴走するのでは、と恐れを抱く時があった。そんなことを考えながらページをめくるサーコの横顔をレンは見ていると突然立ち上がった。
「レン?」
「サーコ! デートだ!!」
「ちょ……ちょっと! なんでお姫様抱っこなの!」
 レンはサーコを横抱きに抱えると飛び出していく。
「レン! 外は危ないってレガーシが!」
「外は外でもこっち」
「あ。バルコニーだ」
 レンはそっとサーコを下ろす。
「育児の合間にリラックスも必要だ。最近、なにかとやれ子育てだ、育成だと走り回ってたからな。息つく暇もなかった。サーコが寂しそうな顔をしてるの見たら、あんな調べものあとでいい。レガーシがするさ。サーコはここで俺と内緒の時間を過ごすの」
 そう言ってバルコニーに座るとサーコを引き寄せて膝の上に乗せてしまった。
「レ……レン。近いんだけど」
「だろ。だからこうしてるの。サーコが寂しくないように」
「どうしてそれ……って、なにしてんの!」
 サーコの首筋に唇を寄せていたレンはサーコの鉄拳制裁を受ける。
「ちょっとはドキドキするだろ? 俺だってこれぐらいはできる」
「自慢することじゃない! もう! 私はここに座るの!」
 強引にレンの膝から降りると向かい合って座る。じっとレンはサーコを見る。
「こんな風に向かい合ってても恋人の時間にはならないぞ? キスぐらいしたらいいじゃないか」
「ぐらいって!」
 ぼかっ。
 サーコが恥ずかしさのあまりまたどつく。
「じゃ、何もしなくていいのか? あんなに結婚しましょって言ってたくせに」
「あー……。それはそうだけど、いざ実際となるとぉ~」
「とぉ~?」
「最後まで言わせるな!!」
 またぼかっとサーコは殴る。
「鬼嫁!」
「なによ!」
 レンが立ち上がって逃げ出すとサーコが追い回す。いつもの二人だ。そこへサーラが雷を落としにやってくる。
「寒空の下で何しているんですか! レン皇子! サーコが風邪をひいたらどうするおつもりですか!!」
「やべっ。サーラ、サーコ。すまん! 俺は逃げる!」
 バルコニーから室内に入るとぴゅーっと出て行ってしまう。
「こらー。男の責任とってけー!!」
 サーコが叫ぶとサーラの顔から血の気が引く。
「サーコ。まさか……」
「ん?」
「一線を越えたのですか?」
「どこで超えるの!! こんなバカ寒いところで!!!」
「よかった」
「そりゃ。そんな雰囲気だったけど……」
 ぼそっとサーコがこぼす。
「今、何か?」
「ううん。なんでもない。多分、レンはおじいちゃんに連絡しに行ったんじゃないの? 鳥がさっき入ってきたから」
「あ。レン皇子とご老体の鳥ですね。確かに。サファン皇子の方はどうなのでしょうか。外はレガーシがこの館を見えないようにしてその前には霧の迷路を作って誰も近づけないようになりましたからね」
「へー。レガーシ。さすが魔術師」
「さ。サーコはあたたかい飲み物でも飲んで暖まりましょう。風邪をひいては大変です」
「そうね」
 サーコもバルコニーから室内に入る。

 レンのキス。ちょっともったいなかったかな?

 ないと安心するとちょっと小魔物がとびでる。まだ、まともにキスなんてしたこともない。それでも正妃と言ってはばからないレン。その愛情がうれしかった。ちゃんとした恋人になりたい。そうも思う。レンを支えていけるように……。将来は妻として。

 サーコはまだ来ない未来を夢描いていた。


あとがき
いい雰囲気になる時も増えてきました。でも、そう簡単にいちゃいちゃできません。調べものが~。宮中のことも出てきましたし。予想外のことが出てきて大わらわ。イメージがあるんですが、あれは何というの? と思って単に車とかになる。戦車なんだけど古代エジプトの戦車ってイメージつかないので。車でもむりよね。二頭立ての車ぐらいにしないと。でも馬いるの? ともなる。しかし、調べながら自力で書くと決めた以上、がんばります。

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