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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(48)

前話

「エ、エミリーエ様、お待たせいたしました」
 よれよれのフリーデが戻ってきた。私はにっこり振り返る。
「おかえりなさい。いつもありがとう」
 背中に隠していたつつましやかな光景はもう跡形もない。共犯の料理長たちと証拠をけしてある。このテーブルに今乗っているのはフリーデも好きなハーブティー。
「い、いえ」
 あてどなくこの増改築をした宮殿をさまよったのだろう。アールグレイのグラスの氷は解け切っていた。グラスに水滴がついている。それに、すぐ、フリーデも気づいた。
「申し訳ありません。氷が解け切ってしまいました。もう一度」
「いいのよ。また迷うわよ」
 強引にグラスをとって一口飲む。飲み頃だった。
「う」
 鉄壁の侍女、フリーデも固まっている。このクルトの宮殿は恐ろしいほど入り組んでいる。住みながらも私も迷うもの。
「それより、このハーブティーのんで女子会しましょうよ。二人きりの食事はどうだったの?」
 私はテーブルに座ってキラキラお目目でフリーデを見る。カロリーネお姉さまも時々こうして乙女な目をしていた時があったと思い出す。きっと、あの方を思っていたのだろう。恋の話はいつだって楽しい。
「え、ええ……まぁ」
 固まっているフリーデの手を引っ張って座らせる。
「ほら。さっさと座って。楽しかった?」
 ポットからハーブティーを注ぎながらフリーデに質問する。カロリーネお姉さまがいたら矢継ぎ早に質問攻めだわ。
「あ。はい」
 フリーデはタコみたいに真っ赤になっている。それが乙女チックでうらやましくなる。私なんてクルトに考えてること流れっぱなしだから恥じらいも何もないわ。
「エミーリエ様はどうだったのですか?」
 照れ隠しにカップで顔を隠しながらフリーデが聞いてくる。さすが最高位の侍女。やり返してくる。
「そうね。いつもよりロマンティックだったわ。蝋燭を立てたの。電気でないあかりは久しぶりだったわ。なんだか里心が付いたわね」
 しみじみという。眠る前には電気なんてものはなかった。いつも夜は蝋燭の明かりだった。
「懐かしい時間だったんですね」
「ええ。それにクルトがすごく素敵に見えて。これは蝋燭が功労者だったわね。薔薇の香りのする蝋燭でね。お母様からいただいた蝋燭なのだけど、真ん中に薔薇の花も生けてあったの。誰が考え出したのかしら」
「それならクルト様が指示なさってましたわ」
「クルトが? あのクルトがねぇ……」
 想像がつかない。気障とは程遠いのに。
「クルト様はずっとエミーリエ様をお待ちだったのです。私と同じく。私もクルト様に連れられて一度だけエミーリエ様が眠る屋敷に連れて行ってくださったことがありました。それはもうすやすやお眠りで美しい姫様でしたわ。この方にお仕えするのだと思うと誇らしく感じたものです」
「え? あの屋敷、だれでも入れたの?」
 鍵も何もなかったの?
 フリーデと顔を見合わせる。今から考えるとそれは恐ろしすぎる事実だった。
「古い文献には精霊が姫をお守りしているとアリアーナ姫の記述にありましたが、エミーリエ様の屋敷にはいませんでしたわ」
「契約が長すぎたか、お母様の術が解けたのね。それにしても鍵の一つもないなんて……」
「今考えると恐ろしゅうございますね」
「鍵なら僕が持ってるよ」
「クルト!」
「クルト様!」
 ヴィルヘルムを無事寝かしつけてクルトが女子会に割り込んできた。
「これからコイバナだったのに……」
「それを聞きに来たのさ。ヴィーじゃ話にならん。二言目にはフリーデしかないんだから。『よっぱらったのらー。ふりーでー』だからね。とっとと寝ろとベッドに押し込んできた」
「まぁ!」
 何が恥ずかしいのかどうかもわからないけれど、フリーデは声を上げるとまた真っ赤になったのだった。


あとがき
寝込んでおりましたが、その間、悪役令嬢ものにはまってました。めちゃコミではまり、以前聖女もの小説三冊読んだだけの経験ですが、興味が引かれたので悪役令嬢もののあらすじを立ててしまいました。ですが、ここにおけるほどましな文章が書けるとは思えず、ちまちま隠れて書いてkindleで記念に発行しよかなといった体です。こちらでは今まで書き溜めたものの続きを書き続けることとなります。あらすじだけのものもあり、整理しつつ書いていきます。当面、この眠り姫シリーズ6を続けます。
漢検も冬の二月は寒くて嫌なので来年の六月として学習ペースを落としました。その矢先に寝込んで頭から最初に学んだこともぶっ飛んでおります。手帳生活も朝活もぶっとんで本来なら一週間近く寝込むのですが、さすがに欠勤だらけではいけないのでしっかり今日は出勤してきました。でも、しんどいのは確かで。その合間に熱帯魚の薬浴の面倒もあり、倒れそうです。また。そしてがーんな水虫ができたかも事件。この年で水虫がないのが自慢だったのに。でも、水虫がどんなものかわからないので皮膚科に行くことがありそうです。なにぬってもかゆいのでもう保冷剤をスリッパに挟んでアイシングしてます。おかげで鎮静化しました。なんなんだろう?? 漢検三級は先日受けて自己採点では合格のようです。珍しく部首が満点でした。いつも、取りこぼすのに。送り仮名はやばいですが。次から各段にレベルがあがるのでちまちまとせこせことしていきます。更新が何日か途絶えたらぶっ倒れていると思ってください。今年はもう四回目です。普段は一、二回起きるだけなのですが。ストレスがたまりきっています。外出がままならないので。博物館も行かなくなってどこ行こう? です。当分、日本シリーズを楽しみに見てます。阪神勝ってほしいなぁ。WBCも楽しみ。野球漬けの日々です。という長いあとがきというか言い訳を書いて今日の更新を終わります。

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