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【連載:ロマンス・ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第十六話 手のかかる国王陛下の奥さん騒動前編
前話
「ひめちゃーん。おいしい?」
小さなスプーンでソフトクリームをすくって口元に運ぶとペロッとたいらげる姫夏である。
「おいちい。まま、もっと」
「パパのもおいしいよ。ひめ」
両方かがアイスクリーム攻撃を受ける姫夏であるが、喜んで食べている。
「きらきらきれい」
伝統のレインボーソフトをさして姫夏は言う。
「ママもこのレインボーソフトは大好物なの。悲しいときも嬉しいときも見てくれたのよ」
步夢の言葉に姫夏は反応する。
「まま。えんえんしたの?」
「ずーっと昔ね。今はパパがにこにこさせてくれるの」
このど若い夫婦に周りはざわざわしたが、そんなもの気にしてない。海外旅行者か、とそのうち観客はいなくなった。家族水入らずの時間だ。いや、ペット同伴は出来ないため、千輝は屋敷で居眠り中だ。そこへ邪魔者がやってきた。冬玄だ。真っ先に姫夏が見つける。
「とっと!」
「あら。とっと。どうしたの?」
「拝謁届けが受理された。さっさと行くぞ」
「とっと。まって」
姫夏が言う。スプーンを器用に持ってアイスを差し出す。
「とっとも。おいちいよ」
姫夏が人を思いやったのは初めてだ。まぁ、と步夢は言って姫夏を抱きしめる。もういっぱしの母親だ。母もそうだったのだろか。私を引き取ったのは結婚前と言っていたけれど。
「まま。とっともー」
「とっとはいつでも食べられるからいいのよ。さぁ、とっとの作ってくれた用事にいきましょか。あなた」
ぶっと、当騎がアイスを飛ばす。
「あ……あ……」
「だから、あなたって」
「知らん。俺はパパか当騎!」
「もう。ま。いっか。パパが通じるし。冬玄待たせたわね。行きましょ」
きりっとして立ち上がると姫夏を当騎に預ける。その不思議な色の瞳は何を見透かしているのか。姫夏はなぜか悲しげな母の背中をじっと見ていた。
*
「国王陛下におかれましては、ますますのご繁栄。誠におめでとうございます。陛下に拝謁させていたく……」
えーとなんだっけなーと宮廷マナーを思い出していると人の影が目の前に落ちた。
ん?
「今更他人行儀な挨拶などいらぬ。亜須伽」
顔を上げるとそこにはいかつい顔をした男性がいた。
「白影……なの?」
パルヴァール語から日本語へ切り替える。
「ああ。冬玄が妻を見つけたと言ってきたから謁見を許した。どこに行けばいいんだ」
「焦らないで。相手に記憶がないかもしれないのよ。いきなり、国王から妻になれ、なんて言われたら萎縮しちゃうわ」
「だから嫌だったんだ。継ぐのが」
「お前しか息子が居なかったんだからしかたないだろう。どうやら、空港にいるらしい。私はイギリス大使館にいた」
「それを早く言え。空港へ行くぞ」
さっさと歩く白影の服の袖を步夢はひっぱる。
「ちょっとまったー。この重々しドレスを脱ぐ時間をちょうだい」
「着いてくるのか?」
「当たり前でしょ!」
何考えてるのかしら、ぷんぷんしながら見知った宮殿を歩く。時間は多く経っているのに構造はそれほど変わっていない。王宮から僧院への抜け道を通って、ししょーの控え室で着替えさせてもらうとようやく外に出る。
「さすがは恐ろしいほど生きてることはあるな。よく、その道を知っていることだ」
「老けばばぁみたいな言い方しないで。まだ、十六歳」
「そうなのか? 何歳でその子を?」
「預かったの! 恥ずかしい想定させないで」
「うぶだな」
「案内しないわよ!」
当騎と冬玄は繰り広げられる漫才に笑いをこらえている。
「ままー。だっこー」
「はいはい。ゆめちゃん。可愛いわねー。ママ、大好き」
おもいっきりすりすりする。
「親馬鹿」
「何!?」
「なんだと!」
また組んでいる相手が変わる。
「ほれ。早く行かないとししょーに捕まるぞ」
「とっともだっこー」
「ひめ。来い」
「あ。ちょっと、ひめちゃん!」
步夢から冬玄が姫夏を抱き上げる。
「とっとー。しゅりしゅり」
「ああ」
「冬玄が子育てしてる」
步夢と当騎がぼうぜんと見る。
「ほれ。ひめは私が抱いていくから歩け」
「もう。ししょーに運転頼むわよ」
「それはやめてくれ」
王家の二人がハモる。
「じゃ、安定できる運転手に案内して。と。娘を返して!」
「怖いな」
じろっと步夢が見る。
「抱っこ癖が着くぞ」
「いーの。ひめちゃんはこれで。つたえ歩きもはいはいも見られなかったんだから」
「何のことだ?」
「こっちのこと。ひめちゃんー。ままがいいよねー」
「とっとー」
がっくりと首を垂れる育ての親。
「はい。とっと。のんは渡さないわ」
変なライバル視されながらタクシーを拾う。ついでに王家の身ぐるみも当騎に剥がされてししょーのお忍びの服を着せさせられてたのだった。
*
步夢に着いてきた先は冬玄も知っている国際空港の王室専用室だった。
「確か、ここの職員さんなんだよね。千輝と暁輝を見分けたあの人。白影。いいこと。いきなり抱きしめたりするのはダメよ。ただでさえ、ややこしい身分なんだから」
「妻のためなら王位も捨てる」
「やめてー。お鉢が回ってくるから」
「それもいいな」
冬玄がにやつく。
「とっと!」
「だから、冬玄と」
「ひめちゃん、この人はとっとね?」
「あい」
冬玄はこめかみを押さえてこらえている。步夢にとっと扱いされたら終わりだ。
「えーっと。すみません。この間、犬と猫のリードひいていた職員さんいますか」
「直球だな」
「それしか手がかりがないのよ」
「いますよ。ローラ。お客様だよ」
「この格好で王室専用の区域に居るのにおとがめなしなのか?」
当騎が真理を突いてくる。
「ちょっと、ね」
「おひっ」
得意技の記憶を弄ったようだ。あまりしない技なのだが、究極に困ると使う。
「あとでお仕置き」
「えー」
「えーじゃない」
「そこ。痴話げんかをするでない」
「うるさいわね」
「うるさい」
二人で抗議するが女性がやってきて目的を思い出す。
「ローラさんですか? もしや日本の記憶や白影という名前に心当たりはありませんか?」
一応、パルヴァール語で聞く。
「へ、陛下。何か落ち度でも」
「陛下は一人だけでいーわよ。ただ、白影という名前に記憶はない?」
「白影……」
ローラから日本語が漏れた。同時に涙だポロリと流れる。
「あら。どうしたのかしら。私」
次から次へと出てくる涙にローラは困惑する。
「ああ。無意識下にあるのね。少し、思い出させてあげるわ」
ローラの手にそっと触れる。するとローラはまっすぐ白影を見て見つめる。だんだん驚愕の表情になってくる。
「はく……えい」
「ローラ。君なんだな。私の片翼は」
二人は人目をはばかることなく抱き合う。步夢はそのまま、二人から離れる。当騎と冬玄は驚きのまなざしでその光景を見ていたのだった。
あとがき
すみませんー。ケーキが食べれる年齢を調べて知ったのですが、一歳四ヶ月ではソフトクリームは食べられません。脂肪分5パーセント以内しか。ヨーグルトでクリームの代わりをするらしいです。未来にはきっとあかちゃんようソフトもあるだろう。という期待を込めてすみませんでした。それと体調不調もここ数日昼の薬を飲まなかったツケでした。忘れてて。明日は、どこを載せようかしら。いろいろ発掘してきてます(^^ゞ。
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