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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(71)
前話
「さぁ。エミーリエ。目を開けて」
カロリーネお姉様の声で瞼をあける。鏡に映る私は別人だった。
「わ、私?」
「そうよ。何度もお人形ごっこしておいてよかったわ。似合う、メイクを把握できてるもの。クルトもびっくりするわ」
「本当に奇麗よ。これが本当の婚礼ならよかったのに」
残念そうにお母様が言う。
「大丈夫です。本当の婚礼をあげますから。これは東のための式なのです」
見違えた自分に見とれながらもどこか冷静な自分がいた。そう。これは幸せを求める式じゃない。身を守るためのもの。
「あらあら。眉間にしわが寄ってますよ。花嫁には似合いませんよ」
「そうですよね」
鏡の前でにっこり笑ってみる。うん、いつもの私だわ。にっこりしていると扉がノックされた。
「はい」
「準備はできたかね。花嫁の父を務めに参った」
「お父様!」
慌てて開ける。
「エミーリエはもう私の娘で嫁ではない。息子と婚礼を上げるのだから、と言われたが、名誉ある花嫁の父をさせてくれないか?」
「もちろんですとも。カロリーネお姉様の予行練習にすればばっちりですわ」
「予行だなんて。エミーリエ。もっと自分を持っていいのよ。あなたはこの王家の大事な娘なんだから。私の妹よ」
カロリーネお姉様が涙ぐんで抱き着く。
「お姉様……」
「姉上! 兄上が暴動を起こしますよ。早く、エミーリエ姉上を出してください」
ヴィルヘルムまでくる。私の姿を見てヴィルヘルムがぽかん、と口を開けている。
「本当にエミーリエ姉上?」
「嘘ついてどうするのよ。フリーデも来たのね」
「エミーリエ様。とてもお美しいです。これならクルト様もあっという間に仮ではない婚礼を上げたくなりますわ。婚礼衣装は今以上に素敵なのですから」
「え? え? どんな姿?」
「クルト!」
クルトの声がお父様の背後から聞こえてヴィルヘルムが飛んでいく。
「花婿は向こうで待つの! フリーデ行くよ!」
「はい!」
二人は花婿を定位置に置きに出ていく。使命に忠実なこと。クルトの情けない声が聞こえてくる。私は思わず笑ってしまう。誓いのキスでちゅーって言わないかしら。
「さぁ。情けない息子に渡すべく行こうか。わが娘よ」
「はい。お父様」
一気に気持ちがほどけて私は手をお父様に預ける。短いながらもバージンロードを歩く。本来ならこの王城の中の最大級の大きさを誇る神殿で挙げるけれど、今は親族のみの簡素な式。お父様の手からクルトの手に手が渡される。じっとクルトが見つめる。口はぽかん、と開いている。私はその顎を上に押して閉じさせる。
「何、ぽかんとしてるの。式は始まっているのよ」
「エミーリエがあんまりにも奇麗で……」
「クルトこそ」
コホン、と咳払いが聞こえる。クレメンス様がみていた。クルトも私も表情をただして教皇様を見る。軽くうなずかれると聖典を広げられた。古代語で神話が語られる。初めて男女が生まれた神話を。そして結婚とはと語られ続けてきた話をなさる。ふいに、言葉を切って、またクレメンス様は私たちを見た。名を呼ばれる。そして愛を誓うかと簡素化した言葉で尋ねられる。私たちはお互いを見て誓う。
「それでは、指輪はすでに与えられている。今日より、クルト・ディートハルト・ヴァルツァー陛下とエミーリエ・エヴァンジェリン・オットー妃殿下は王座の高みに座ることを神、ヤーウェから許可されたと宣言する。誓いの口づけを」
私たちは向かい合って見つめあう。私は目を閉じる。クルトの息が近づいたかと思うと頬に軽くキスされた。さすがにちゅーの言葉はなかった。唇に落ちるはずのキスが頬に落ちて私はびっくりして目を開ける。
『ちゃんとしたキスは本番でね』
クルトの心の声が初めて流れてきた。
「クルト……」
こんなにも大事にされているなんて……。感極まって私の目から涙がこぼれる。クルトはそれを優しくぬぐって微笑む。私も自然と微笑んでいた。本番とか仮とかそんなことはどうだってよかった。私はクルトの妻になった。それだけで天に昇る心地だった。この人を一生愛していこう。支えていこう。そう思う。
「ありがとう。エミーリエ」
今度は額にキスを落とす。それから前に向く。クレメンス様は式が滞りなく済んだことを宣言された。私はその時よりクルト王の王妃になったのだった。
あとがき
ついに、婚礼が!! しかーし。本来のはまだまだ先。そして、一線を先に超えるんだなー。ネタバレはここまで。朝活の一環で更新中。
原稿ははるか83話まであるので余裕なのです。でもこのあとが山場。がんばらねば。そして急にサムライ・トルーパーが聞きたくてCD出してきました。でも本来聞きたかったのでないものが家にあり、アマゾンミュージックでアルバムを検索するしかない。それは面倒なので手軽に青嵐編聞いてます。
さて、今日は何をしよう。
これから仕事ですが、帰ったら、星降りやって他のアカウントのところの新連載を始めて(過去作)、まんべんなく更新をかける。
その後でこれの続きですね。最近、皆様によくスキをいただきますが、あの闇のつぶやきの性でしょうか。すみません。ご迷惑おかけしています。
とりあえずは浮上してますので、ご安心ください。それではここまで読んでくださってありがとうございました。
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