【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(60)
前話
「大丈夫か?」
アルミが倒れた男性の側で吠えている。ヘレーネは倒れた男性の手をなめ始めた。意識が戻ってきたようだった。かすかに、何かを言っている。
「ウルガー! 今、マチルダって……」
「だな。とにかく王宮に連れて行こう。衰弱が激しい。このままではまさに永遠の別れだ」
ウルガーはアルミのリードを私に渡すと男性を担ぎ上げた。私は二匹の犬を連れてウルガーの後をついて行く。そのまま診療所に連れて行く。
「点滴をしよう。栄養失調のようだから」
「マチルダ様には……」
「しばらく、黙っておいた方がいいな」
別の声に振り向く。
「ダーウィットお兄様!」
「もし、助からねば、聞かぬ方がいい知らせだ。それにトビアスは父上が認知している。離婚が成立しても親子揃って生活できるとは限らない」
「そんな……」
楽観的に捕らえていた未来が崩れていく。
「兄上! なにもそんな杓子定規に言わなくとも」
「たまには酷なこともある。浮かれすぎはいけない」
「そう。そうね。でもこの方を看病するのはいいでしょう? お兄様」
「ここでは最低限の治療をして華の宮で隠して治療しろ。マチルダ様に簡単に知らせるわけにはいかない。看護はウルガーに聞け。もう焼き餅を妬いているぞ」
「この真剣な時に焼き餅なんてて……」
ちらっと見ると上手く隠した顔色の下に確かに嫉妬の炎があった。そんな事で?
「ウルガー」
「わかっている。マチルダ様にとっては大事な人だ。それはゼルマにも俺にも当てはまる。ただ、男の側に置いておきたくないだけだ」
「なら、俺が側にいてやろう」
「マティアスお兄様!」
こうも関係者がぞろぞろ集まるとマチルダ様の目にとまるのではと心配になる。
「とっとと点滴を済ませろ。その後は俺が警備団にいた経験を元に看病をする。ゼルマ、
華の宮の一室を借りるぞ」
「ええ。それはかまわないわ。でも、キンモクセイの宮から遠くした方がいいわ。最近トビアス様がタピオ達と遊びに来るから」
「そうか。そこまで元気か。それはいい。宮の一室は私が抑えよう。いいな。ゼルマ」
ダーウィットお兄様が宰相としての手腕を発揮する。
「華の宮の主として許可いたします」
「そういえば、華の宮の主人はゼルマだったか。母上の時と変わらない気がしていた。すまない」
「いいえ。これでウルガーの嫉妬から逃れられるなら両手挙げて喜びますわ」
「ゼルマ。そんなに俺の嫉妬はいやか?」
「いや、じゃなくて手に負えないの。また『ちゅー』と言って遊びましょ」
私は言ってから後悔した。ウルガーの目が輝いている。
「奥さん。それならさっそくキンモクセイの宮でいちゃつこう」
「まだ、結婚してません! それから点滴も終わってません!」
「え~」
ヘタレのウルガーがまた生まれたのだった。
あとがき
にこねこ様のライブ見てたら遅くなりました。とりあえず、更新逃げです。エッセイ書く頭もないし。野球もないし。貫徹の次の日なのでもう寝ます。キーワードもつけず、更新し説きます。では。逃げます!