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【連載:ロマンス・ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第十四話 ハレの日アメの日

前話

「綺麗よ。步夢」
 次は沙夜が涙する番だ。最終の試着で沙夜はもう泣いている。步夢はししょーが自分の式以外はなんとしてでも古の女王の衣装を着せるといって昨日までひらひらのキラキラの服を着せるので辟易としていた。その重さだったと思っていた。心の中にある重いものは。なのに、消えない。步夢は見て見ぬふりをしていた事があった。これか……。日史の読み通り、智也、だった。今頃、智也と式を挙げていたのか、と思うと複雑なのだ。好きな人は当騎。でも幼い頃から好きだった人は智也。思い出をあまり思い出さないと思っていたが、自分で自分をごまかしていたようだ。当騎がいなかったら智也と間違いなく式を挙げていただろう。だが、今世も三人そろった。どっちを選べばよかったのか。結果的に智也が亡くなって選ぶ必要性はなくなった。だが、心の呵責は大きい。最後に優衣と両思いになったと言うがふりではないのか?
 優衣もこんな思いをするのだろうか。暖と今は幸せそうだが。

 式次第の練習も終えて、縁側に座って考えているとぽろっと涙が一粒でる。智也の前では步夢は泣き虫だった。その步夢にローマに行くように言ったのも智也だった。会っておいで、と……。それで、踏ん切りをつけて強行した。結果的に、どの時代でもあの人でなければならないという認識を新たにせずには居られなかった智也ではない。あの魂とこっちの魂は違う。明らかにそうだった。だが、別れるつもりだった。それなのに当騎は追いかけてきた。勘当されても。もう、それで崩れた。当騎しかみられなかった。今もそう。当騎しか目に入らない。なのに、智也と生涯を共にしようとした自分が嫌いだ。
  
 嘘つき。

 步夢は自然と言っていた。
 
「自分に正直なだけだ」
「当騎! ひめちゃんは」
「ぐっすり寝ている。ちーがそばにいるから大丈夫だ」
「そう」
 目を伏しがちにして庭を見ていた步夢は当騎に抱きしめられた。
「智也を想いだしたんだな。俺もだ。この国なら三人で結婚できそうだな」
「そうね……。って一妻多夫じゃないの! 聞いたことないわ」
「それでも俺たちだったら文句なかった」
「そうね。智也。死んじゃうんだもん。あんなにやつれて。あんな顔になって」
「見たのか?」
 弛緩した顔を……。とは聞ききれなかった。優衣は見ていると思った。ずっと着いていたから。
「ちらり、とね。これじゃ、ミイラと一緒よ、って思った」
「そうか。人の自然な流れだ。苦しく思う必要はない。いいか。智也が居ないときは俺はお前を誰にも渡さない。次、智也が生まれていたらおれはお前を智也に譲る。お前はものじゃないけれど、智也だって一回はいいめしてもいいだろう?」
 当騎の気持ちに涙が出てくる。当騎は誰にも渡したくないはずだ。それが智也でも。でも智也の事を大事にも思っていた。それは知っている。その前はほんの少ししか当騎は会っていない。今回、一緒に過ごして初めてそう思えたのだろう。だけど……。步夢は惑う。
「私、智也が居てもやっぱり当騎を選ぶ。裏切る。表では智也とデートしても夜中に当騎に抱きついてキスする。そんな自分がいやらしいの。あの浄化できない闇の中でさまようほど罪深いわ」
「罪深くない。俺も同じだ。表でいくらいいここといってもやっぱり步夢は俺のものだ。智也にも譲れない。やっぱり、俺たちしょうがないな」
「うん」
「明日の式に響かないほどで泣け。それぐらいならひめもわからんだろ」
「ひめちゃんは私のティアラに夢中よ」
「そういや、もう一人恋人がいたか。お前、あちこちに男作るなよ」
 古の女王にも恋人がいた。その恋人の部分は古の女王の塚の中で眠っている。いつ、起きるかはわからない。
「男、多いな。奪取を誓う」
「もう。当騎ったら」
 面白げな当騎の言い方に步夢はくすくす笑う。だが、同時に涙も出てきた。
「とうき~」
「つらいな。泣け。そしてまたハレの日を迎えよう」
「うん」
 そうして日史がそっと見守る中、当騎と步夢は新しい生活を迎える準備をしたのだった。

 そして式本番に至る。昨日、かなりの気持ちの整理は付いたものの重いままだ。
「まだ、とれぬのか?」
 堂の入り口で緋影がいう。
「ひ……お父さん!」
「みんな知っている。步夢が苦しんでいることを。この中で式をするのは酷ではないか、とも」
 步夢は泣き笑いの表情になった。
「いいの。これで。これで、私と当騎とひめちゃんは家族になれるから。あとは昔の妄執だわ」
「そうか、では行くぞ」
「はい。お父さん」
 しっかりと緋影を緋影といいかけることなく、お父さんと呼んだ。仲間であり、父なのだ。
 バージンロードを祖父でなく、父と歩く。今までなかったことだ。初代はあったかもしれないが。記憶の彼方だ。今、ちゃんと父と歩いている。步夢は父にいう。
「お父さん。ありがとう」
「なんだ、今更」
「昔を思い出したの。初代もひねくれてありがとうが言えなかったの」
「そうか。ほら、夫の手だ。しっかりとるんだ」
「お父さんありがとう」
 步夢は涙で目を潤ませながらハグをする。そして向き直って憮然としている当騎の手を取る。
「お父さん。なんだから妬かないで」
「步夢はずっと俺のもん」
 そこでこほん、と式を進めるししょーが咳払いをした。姫夏は沙夜に抱かれて。古の女王のティアラの子供用を乗せて真っ白いドレスをきてご機嫌だ。
 式が進む。そして誓い合う。当騎はヴェールをあげて步夢の唇に軽く触れた。步夢は向日葵の笑顔だった。ししょーが宣言を下して式が終わる。
「まま、だっこ」
「ひめちゃん……」
「抱いてお上げなさい。式は終わったけれど、これからひめちゃんを一緒にした家族が始まるのですよ」
 沙夜が姫夏を步夢に抱かせる。
「ひめちゃん。素敵ねー」
「まま。きらきら。ひめだいしゅき」
「ママもパパもよ」
「これからいっぱいいろんな思い出作っていこうな。ひめ。ちーもな」
 優衣が持っていたリードを強引にひっぱって離れると步夢と当騎の元へ千輝が行く。
「ぴぎぴぎ!」
「ちーも、俺たちの家族だ」
 千輝を当騎が抱き上げる。千輝はあん! と子犬特有の甲高い声で返事する。

 みんな、笑顔だった。智也の死を乗り越えた二人を見て皆、安心していた。細かいことはわからない。だが、一つの山を乗り越えた、と皆感じていた。
「次は白影とお嫁さんね。ブーケは優衣にあげるわ。次にここで式をあげるのはあなたよ。優衣」
 ブーケを渡すと優衣が抱きついてきた。
「大事なお姉さん。離れても姉妹ですわ」
「ええ。どこに居ても姉妹よ。大事な思い出を共有した。智也もいてほしかったわ」
「そうね。空の上からみてますわ。ようやく素直になれたかって」
「ま。口が達者なこと」
「ほら、いつまでも個人話しない。親戚一同の写真を撮るよー。早く集まって」
 やっぱり、進行役は母さん役の日史だ。
「さぁ、陛下」
 ししょーもいう。
「むー。優衣、行こう」
 当騎が步夢の手を取る。步夢は優衣の手を取る。そこにはまるで智也がいるかのようだった。

 智也、ありがとう。

 写真をとりながら步夢は当騎を見つめ、智也に礼を言っていた。この人と一生添い遂げる。
「あなただけみつめてるわ……」
「俺もお前だけ見つめてる……」
 合い言葉を交わして見つめ合っていると日史のお叱りが飛んでくる。
「まっすぐ向いて!」
「はいはい」
 そして日史は写真を撮る。いい思い出の写真となった。これは持って行こう。步夢はにっこり向日葵の笑顔を浮かべながらカメラのレンズを見つめたのだった。


あとがき
 なかなか、一気書きしていると、矛楯した文章が。読み直して、ここはどこ? になって辻褄をあわせるのにしばらく頭を使いました。そして今回から、ロマンス・ファンタジー小説(オマージュ)と分類になります。恋愛ファンタジー小説と同じ扱いです。出版社によってはジャンル分けがいろいろあるようで。どこかでみたロマンス・ファンタジーにしとことおもっていたらいつの間にか和風がはいってて。そんなに今、和風でもないのに和風じゃ、読めば違和感覚えるよね、と反省して取り外しました。たんなるいちゃちやもんです。題名のキーワードもぎりぎり突っ込んだ感じもするし。でもそうなんだよね。二人はお互いしか目に入ってない。見るとすれば姫夏と千輝のみ。そこを中心に今は話が動いています。三部でようやく、複雑な伏線の収集がはじまり、またばらまかれるかもしれません。智也の事は第一部でごらんください。しかし、設定が混み合っていてややこしい。全6シーズンの間にたまった人間模様でございます。四神は四魔将ではございませんゆえ。お間違えのないように。あの方々は空の彼方におられます。今頃どこかに転生してないかな? でも、生かし切れない設定になるのでないと思います。出演は当騎達のメンバーだけです。当ると関西弁で自ずとモデルがわかりますよね? あともご覧の通りでございます。長々とかいてすみません。頭がこんがらがっていて。野球も見てられなかった。負けたところ見てえーといってトラテレを切ったという。それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

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