【ショートショート】桔梗の簪(恋物語シリーズ2)
ある秋の日、少女と少年は出会った。幼いのに一気に恋に落ちた。だが、少年と少女の国は同じではなかった。少年は桔梗の簪を少女の髪に挿して言う。
「いつか大人になったら迎えに行くから。それまでこの簪を持っていて。桔梗の花言葉は『永遠の愛』。僕は君に永遠の愛を誓う」
「ええ。待っているわ。この桔梗の花言葉に想いを託して」
そっと二人は触れるか触れないくらいの軽いキスをして別れた。少女の頬に一筋の涙が伝っていた。
数年後。少年は立派になって帰ってきた。少女はあの日の簪を挿して同じ場所で待っていた。
「迎えに来たよ。フユネ」
「ナル。あなたなのね。ずっと待ってた」
挿していた簪を渡す。
「これはもういらないわね。あなたに返すわ。永遠の愛はもうここにあるもの」
二人はそうして大人のキスを交わした。秋の風がそよそよと冬音の髪をなでていた。
あとがき
よく書く桔梗の花言葉のモチーフと冬音の恋です。どこに行ってもこの名前。ナルと冬音。過去作では名前をいささかイジりましたが、こちらではオリジナルの名前と新たな簪というものを使って書いてみました。冬の王子とか言うショートショートも昔書いたような。こんなに大人な話ではなかったですけど。謎の王子と少女の運命の恋を描いたものでした。かんざし、ということでうなじとか髪に妖艶に挿している女性とかイメージにあります。やっとこのモチーフもここで最終形態を取ったかという所です。元々二次の主人公の娘と王子の恋物語で出たモチーフです。それがオリジナルで桔梗と一緒になり、何かの拍子に謎の出会いと再会を描き、四回目にしてモチーフ像が完成しました。私のショートショートはわりかし長めなんですが、今回は余計な事をそぎ落として短めになりました。こっちのあとがきが長い。オキイメして頂ければ幸いです。尚、この恋物語シリーズはラブゲームを始めとして一連のシリーズ作にします。どんな恋が描かれるかは直前までわかりません。直打ちなので。これを逆にあとからテキストエディタに落とすのです。あとがきは外すけど(笑)。まぁ、次の3もまた書きますねー。
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