【千字掌編】いつか秋声の中で……。(土曜日の夜には……。#12)
安田圭子は土曜日の夜には必ず、堤防沿いを歩く。季節は夏。蝉の声も昼間と違って静かで、時々季節外れの虫の鳴き声が混じる。ミステイクなバックミュージックを聞きながら、そぞろ歩く。この時間はいつも自分一人だ。
と。思っていた。
前方に男性が圭子のようにそぞろ歩きをしていた。浴衣を着ているのか、なかなか風情のある男性に見える。声を掛けて時間の邪魔をする気にはなれなかった。それに自分の時間を邪魔されるものも嫌だった。そんなわけで声を掛けずに通り過ぎて家へ帰ろうとしたところで、声を掛けられた。
「なかなか涼しい夜ですね」
「ええ。まぁ……」
これ以上の会話はしたくないと言外に言いながら圭子は答える。それを察したのか、男性はまた、と言って去って行く。
「また?」
圭子は相手の言葉を不思議に思いながら圭子自身も帰っていく。
翌日、圭子は危険レベルが最大の昼間に古書店を訪れていた。古書店雨柳堂。涼しい風が効いていて避暑には最適な場所だ。そこで圭子はゆっくりと古書を見るのが好きだった。たまに手を取って目次を見て内容を確認する。
世は電子書籍の時代だが、圭子は紙媒体の本の方が好きだった。
「また、お会いしましたね」
不意に声がかかって、圭子は悲鳴に近い声を出しそうになった。慌てて自分の口を押さえる。
「ここの跡継ぎなんですよ。今は祖父がしていますが、父は違う分野でして、僕が文学部に行ったことで跡継ぎ確定なんです。それで、今はバイト程度にここで働いています。昨夜は堤防でお会いするとは思わなかったので、つい声を掛けてしまいました。すみません」
「あ。それは別にいいのですが、女性と話していて大丈夫なんですか? 彼女か奥さんいらっしゃるでしょう?」
「仕事ですから。それに僕はまだ彼女も奥さんもいたことがないのです。その本、面白いですか? 理系の本でなかなか難解でした」
「あ。これは目次で面白そうに感じたので。そんなに値の張る物でもないですし」
「京滋。油を売ってるんじゃない。本棚の掃除をしなさい」
奥から主の声が飛んでくる。どこかに監視カメラでもあるのだろかと上を見る。
「防犯カメラはありません。祖父はすぐに気配を読むのが上手くて。じゃ。ごゆっくり」
そう言って孫息子は別の区画に行ってしまった。なんとなく隣にいた場所が寂しく感じる。今更相手してもらえる年齢でもないのに。圭子は本を持って奥へ行った。
それから堤防沿いと古書店で一言二言交わす間柄になった。
たった、それだけのことだが、圭子はそれを楽しみにしていた。
まさに、涼を感じる夏。この夏が薄紅葉の季節にはどう変わっているだろか。期待と不安があった。
が。なってみないとわからない。次の秋声の季節に思いをはせる圭子であった。
いつか秋声の中で……。
圭子の恋が花開こうとしていた。
あとがき
夏の話で夏の季語で使えそうな物と考えて「涼」をメインにと書いてたら最後に秋声とな。おいおい。秋だろ、それ。でも圭子に夏中に恋が芽生える事はない。行き遅れだから。人見知りなので絶対夏中にフォーリンラブはない。そして新たなショップができあがりました。古書店雨柳堂。全体像把握してませんが、これから重要な場所になっていくでしょう。珈琲ショップとバーと古本屋。あとどれぐらい店はできあがるのでしょうか。なんだかゲームみたい。あのしむ○○ーのような。そしてなぜ、いつの間にか季語シリーズになっているんだい? これも提出しようかしら。陽だまりも提出しないと行けないけれど。明日でもいいか。日曜日までにすませれば。明日は週末スケジュール。ゆっくりします。でも、朝活スケジュールをしてもらうと必ず朝にシャワー。いや、今、電気代が高騰してるんですが……。です。のでその間にいろいろと。今朝も待ち合いでプランを立ててもらったので、また転送して今度は平日と一緒に冊子にします。日課のアクアリウムとガーデニングを取り入れて再度設定したのでした。しかし、bingの方が正確かもしれない。ChatGPTさん、遅れとってる?