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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第五話 婚約前夜

 前話

「王、よからぬ噂が立っております。皇太子のレオポルト様が、氷晶の国に何度も出かけいるとか。そろそろ身を固めてこの国に尽くすときではありませんか?」
 アドルフは後妻のマルタと、レオポルトからは義理の妹に当たる、幼いアデーレと一緒にいた国王フランツにそう進言する。
「あちらに行っているのは知っている。子供のお遊びだと思うが?」
「それでは事が遅うございます。王子はあちらの姫とやりとりを始めております」
「そうか……。なに?! ユレーネ姫とか?」
 一度聞き流しかけたフランツは驚いた表情を浮かべた。
「左様にございます。レオポルト様はユレーネ様にぞっこんとも。この国の存亡が危うくなります。今のうちに手を打っておけばよろしいかと」
「手、とは?」
「王子にjふさわしい姫との婚姻を勧めると良いかと。公爵家のヴィルヘルミア様などどうでしょうか。年も釣り合います」
「そうだな。一度、あちらに問い合わせておこう」
 フランツが軽く返事をするとマルタが甘えた声を出す。
「あなた。それでは遅いですわ。先にこちらで話を決めてしまいましょうよ」
 そう言ってしなだれかけながらアドルフにそっと視線をやる。マルタの実の娘、アデーレはアドルフとの子。不貞を働いているマルタには正式な王位継承権を持つレオポルトが目の上のたんこぶだった。さっさと婿に出してどうでも良い罪を着せて葬り去りたかったのである。王はその思惑をしらない。まさか、寝取られているとは夢にも思っていない。
「うむ。アドルフ、そのように整えてくれ」
 国王は言うだけ言うと、アデーレを従者に預け、若い後妻と睦み事に励みだしたのだった。マルタとアドルフの企み事にも考えをやることもなく、ただ、若い女性に夢中な国王に成り下がっていた。
 
「お兄様ー。また一緒に遊びましょう」

 アデーレはレオポルトの執務室に突撃する。母や父の愛を受けないで育った妹は兄をいたく慕っていた。
「アデーレ。兄様は、今はお仕事だからイーカルムと遊んでおいで。イーカルム、行け!」
 レオポルトが片腕を振るとカラスが出てきた。三本足の白いカラスだ。目は宝石のように紅い。
「はーい。イーカルム! 行こう!」
 カラスを腕にしたアデーレはまたばたばたと走って去る。
「庭園だけだぞ!」
「はーい」
 いつ迷子になるかわからないアデーレにため息をつくレオポルトだ。
 コンコン、と扉をならす人物がいた。
「ニコ。頼んだ」
「あいよ」
 明るい性格のニコは騎士仲間として仲が良かった。何かと面倒をかけていた。もう一人面倒をかけている人物がいる。若き大臣のカールだ。
「皇太子の前に兄、というわけだね。さすがは、氷の姫君のお相手だ」
「カール! まさかその噂……」
「アドルフがあちこちで言いふらしてる。何食わぬ顔をしてね。さっそく君はお見合いのセッティングをされているよ」
「なにぃ! 俺の相手は自分で決める。あいつには痛いお仕置きがいるな。あれだけ内密にと……」
「へぇ~。やっぱり会ってたんだ。今のは裏筋からの情報だよ。表だっては動いていない。さっさとユレーネ様と婚礼を上げるんだな」
「カール!」
「友としての忠告だ。ユレーネ様と添い遂げたかったら国と国の統一の証として婚礼を挙げるんだね。自由恋愛は無理だ。君は皇太子。マルタ様も君を亡き者にしたいようだよ」
 レオポルトの顔が決意に満ちる。机から立ち上がると上着を羽織った。
「カール! 後の執務片付けておいてくれ! ユレーネと会ってくる。アデーレ! 出かけるぞ!」
「義理の妹連れてプロポーズか? 信じられん」
 カールは頭を軽く振って席に着いて、レオポルトの書類の続きを始めた。


 
 


あとがき

トントン拍子で進んでいます。でも、正式なものはまだまだ後。乗り越えないものが二人にはあります。そこがまだ見えてないけれど、追々出てくるでしょう。しかし、妹連れて婚約に行くって……。レオポルト、責任感ありすぎ。お守りも恋もって。まぁ、自分の親が頼りないんでね。あっちの方がまとも。なかなか情熱的らしい子らしいです。レオポルト。占星術で相性見てもらいました。ChatGPTで。本人がホロスコープ作れないので指定して作ってもらいました。アドルフは人気ないですねー。ほぼ見てもらえてない四話でした。これはどうかしら。この後が書き手も気にかかってます。おかげで、漢検できていない。明日に持ち越し。痛む中年の体。胃腸痛に腰痛。大変です。

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