【連載小説】ファンタジー恋愛小説:魔法の遺産~運命の紡ぎ手~ 第五話 記憶の一欠片
前話
「それじゃぁ、最後の一日いってきま~す」
セリーナは通勤している街の図書館の途中まで馬車で行く。一応、姫であり、王位継承者である。誰かに誘拐されることがないように、途中までは厳重警備なのだ。図書館の中にも私服の警備員がいる。さりげなくいるため、セリーナしかわからない。その警備も終わりだというのでいくらか明るい雰囲気が彼らにあった。
「えらく荷物持ちだったのね」
警備主任にぼそ、っと言うとセリーナは仕事をする。これで最後。思うだけで涙がこぼれそうだった。こんなに大好きな仕事とこれからの執務。両天秤にかければ勝つのは圧倒的に司書だった。けれど、姉の開けた穴を埋めることもしないと行けない。セリーナには王族の意識がしっかりと根付いていた。誰かに王族の勤めの大事さをこんこんと説明されていた記憶がある。母かと思っていたが、あれは父だったのかもしれない。自分と同じく、自由になれない身分を思って伝えていたのかもしれない。
そんな考え事をしているとどん、と誰かにぶつかって本が落ちた。
「すみません。お客様。お怪我はって……レイスなの?」
「いちゃ悪いか?」
「別に。私は仕事に戻ります」
すっと本を拾って通り抜けようとしたときレイスが引き留めた。
「何?」
思いの外いらだった声で自分もびっくりした。レイスもびびっている。
「最近の王族の系譜が書いてある本があると聞いている。閲覧したいのだが……、忙しいのなら別の……」
「みんなが私に回してくる仕事でしょうが。こっちよ」
セリーナはレイスを閉架図書の部屋につれていく。マルコムが見ていて軽く肯いたのでそのまま階段を降りる。
「えーっと王族関係の本は……。こっちね」
すたすた広い閉架図書の迷路をなんなく通り抜けるセリーナである。レイスはそれに着いていくのに必死だ。
「はい。これ。禁帯出本だから、持ち出し禁止ね。さ。上がりましょ」
ずしり、と重い本を数冊レイスの両手に乗せるとセリーナは図書館に戻り出す。レイスは必死になって階段を上がる。
「なんつー重さ」
ようやく元の部屋に戻った頃にはレイスは汗だくになっていた。
「この部屋は温度調整してあるから、汗は簡単にひくわ。戻すときは声かけて一緒に行くから」
「あ。ああ……。ありがと、な」
照れながら言うレイスにセリーナはにっこり笑う。
「最後の日ぐらいいろいろしたいの。何でもござれよ」
その笑顔の後ろに悲しみが伴っていることがなんとなくわかる。声をかけようとしてとまる。
この悲しみは王族に生まれた証。むやみに声をかけて励ませるものじゃない。
レイスはなぜか王族の心得を思い出して止める。自分の中にそんなもの自体があるのが信じられなかった。
これが記憶の欠片?
レイスの記憶の欠片の一欠片がはじめて戻った時間だった。
あとがき
司書の講義を受けたことがあるので、こんな話が思い付きました。もともとアーティファクトを探す旅、がChatGPTさんのお言葉でした。そこへ本というのは? という投げかけに飛びついたChatGPTさん。そしてその本は石版と化したのでした。つい、十戒とかロゼッタストーンとか思い出しちゃって。十戒は石版にだれだったかモーセが必死で書いて山から下りると、引き連れてきていた人は偶像崇拝をしており、第一回石版は神の怒りに触れて割れたか壊されたという話を思い出してついつい。あの後、第二回十戒石版ができたと思うのですが。いや。石版はロゼッタストーンだけか? こんなあやふやな知識でやっております。星彩も一話書けたものの、その後の漢検勉強で手間取り、万が一明日出勤になるために準備をしたりいろいろしていたらこんな時間に。もうパソコン触れる時間あと一時間。一時間で書けと? 先に更新しとこーとしてます。セリーナもなんとなくできた名前でお姫様らしく在りません。姉ちゃんの方がイリスだったかしら? 姫っぽい。そしてしっかり物の姉ちゃんはとっとと嫁ぐのでした。女王にはなりたくないと恋愛結婚です。その姉との別れもあるのですが、まだまだそこには至りません。しばらくこれと他の話が続くでしょう。「緑の魔法と恋の奇跡」は十話になったので、なんか探します。後五話のストックなので、貴重なんです。訳ありやら最後やらがあるので当分は持ちますが。あともう少しで100日というところで台風。おかげで自宅で台風対策です。スマホのバッテリーやらいろいろ探し出しての充電タイムです。さて、これはなんのユングが関わっていたのやら。思い出せないのでキーワードには出しませんね。
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