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【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫になっていました。(4)再編集版

前話

「姫様!」
 アーダの声ではっと私は目を覚ました。
「うわっ」
 浴槽からお湯があふれていた。ある程度入れればお湯を止めようとしている内に寝てしまった。今や、お湯は床にまであふれて私はずぶぬれだった。
「とにかく、一度、お部屋に」
「あ・・アーダ? 部屋が濡れるわ」
「だったら、このままさっさとお風呂に入ってください。片付けと服は置いておきますからっ」
 言われるままにお風呂に入る。その前段階でアーダに服を脱がされた。い、一応、年頃の乙女なんだけど・・・。そう言うと却下、と言われてしまいそのまま、お風呂へドボーン。お湯もじゃばーとあふれる。だけどこの深さがナイス。ニホンのお風呂みたい。って考えて。ニホン・・・ってどこだっけ? と考えた。この世界にはない島国だったと思い出して少し涙ぐんだ。
「ありゃりゃ」
 お風呂の向こうからウルガーの声が聞こえてきた。
「派手にやったね。ゼルマ」
「ちょっと。乙女のお風呂を覗かないでよっ」
「俺、まだ、部屋にしかいない。風呂から叫んでいるのはそっちだよ。あ。アーダ。服あった? 置いてあげて。俺はこの惨状を片付けるのを手伝うから」
「ウルガー様!」
 アーダが明らかに慌てている。王太子にさせるなどと、という所ね。
「いいから。いいから。将来の奥さんだもん。それぐらいさせてよ」
「って。覗かないでよっ」
「はいはい。アーダ、早く手伝ってあげて」
「は、はい! 姫様! そろそろよろしゅうございますか?」
「よろしゅうって上がること?」
「はい」
「いいけど、アーダも覗かないで。服さえ置いてくれたらいいから。アーダはウルガーを手伝ってあげて」
「姫様!」
「なぁに?」
「湯が部屋にまで行っておりますので扉が開けっぱなしなのです。アーダが壁になりますからその影でお着替えを」
「なんですってー!」
 自ら招いた事とはいえど、下手すれば見られてしまうという事実に叫ぶ。
「お早く」
「何? 見て欲しいの?」
 ウルガーの気配が近づく。
「覗いたら桶投げるわよっ。湯ごと」
 おっと、と言ってまたウルガーの気配が遠のく。私は風呂桶を手放すともどかしい思いで着替える。服に着替えられてほっ、とひと息つくけれど、まだ床はお湯だらけだった。
「履き物はこちらです」
 木の皮か何かで編んだ履き物が降ろされる。足を入れて立つ。
「掃除、手伝うわ」
 アーダからタオルのような物を受け取ってしようとするけれどアーダから取り上げられる。
「姫様はまだ髪の毛を乾かさないと。湯冷めしますから」
「でも、この不始末は私が原因よ。責任があるわ」
「君はもう責任なんて持たなくていいんだよ」
 ウルガーが近づく。
「でも」
「早く、髪を渇かしてもらって。でなけりゃ、ちゅー」
「風呂桶取りに行って殴るわよ」
「だから、早く行っておいで。でなけれれば、ちゅー」
 ごん。
 頭を殴る。鉄拳制裁だ。
「いてー。まぁ、いっか。それだけ元気ってことだから」
 ぎくり、とした。この国にきて気持ちがカチコチに固まっていたのがこのお風呂騒ぎで消えていた。この人には一生敵わないのかもしれない。そんな予感がしたエリシュオン国、初日だった。

華の宮に住まいが変ってから一週間も経とうとしていた。ウルガーはあの日のお風呂騒ぎ以外来ていない。私はこの華の宮の主だからどこへ行ってもいい、とは聞いてたけれどそれ以外の場所への案内はなかった。軟禁、と思っていた。そんな日々でも金木犀の香りは私の心を穏やかにしてくれていた。父の車椅子を押しながら金木犀の庭を散歩する。
「いい香ね。お父様。お母様を思い出すわね」
 お母様というたびに胸がきゅっ、と締め付けられるような気がする。香に乗せて思い出が運ばれてきているようだった。
 日が経つにつれ、私の行動範囲は増えた。あくまでも華の宮の中だけ。だけど、多くいる女官と思われる女性達は私を見るとひそひそしたり、一定の言葉を発しているのに気づいた。隣にいたアーダに聞く。
「前から気になってるんだけど、みんななんて言ってるの?」
 その言葉にアーダは顔を赤くしたり青くしている。
「アーダ?」
 強い語調で聞くと、そっと言う。
「お手つき、と皆、言っています」
「誰が?」
「ゼルマ姫様にございます」
 お手つき・・・。
 一分ほど固まっていた。もしかして三分も固まっていたかもしれない。その時に父の車椅子を押してなくてよかったと、あとからすぐ思ったぐらいだった。
「お手つきですってーっ!」
 私の叫びが華の宮を通り抜けたことだろう。
「ウルガーを呼びなさい。今すぐ。事情をたしかめるわっ」
 私の勢いにアーダは不思議そうに見る。
「お手つき・・・ではないのですか?」
「当たり前よっ。至って清い仲よ。借金のカタに来ただけよっ。いいから。私を軟禁してるのなら、ウルガーを呼び出しなさいっ」
 私の勢いに非常に驚いていたアーダはある事に気づいたらしい。
「姫様。ここから出てはいけないという決まりはございません。お好きなところに行けますが・・・。ただ、王太子様に会うには手続きが・・・」
「だったら、外へ行けても意味がないでしょ。いーから呼びなさいっ」
「姫~。ちゅー」
 そこへ運良く当の本人が来た。まずは鉄拳制裁よ。「ちゅー」と言ってるところに拳骨を落とす。
「痛いなー。姫はすぐ拳骨なんだから」
「お手つきってどーいうことよ。お手つきって」
「あー。あの噂ね。父と母に借金払って代わりに来てもらったと言っただけだけど? どこかの誰かが流した噂だよ」
「知ってるなら処理しなさいっ」
「その噂があれば当分、ここには誰も来ないからね。正妃がいるとなればよこしまなヤツが来るから」
「どーいうトコなのよ。ここはっ」
「俺とゼルマの愛の巣」
 どかっ。
 もう一つの鉄拳制裁が炸裂したのだった。
お手つき騒動はよくある事らしく、ウルガーが毎日、宮に来るようになるとなりを潜めていた。流石に王太子様の御前で妃の悪口は言えないらしい。それもあって、私は最低限の人数以外は外してもらった。主にアーダが世話をしてくれる。一部屋で環境は整っているからそんなに女官はいらない。
その内、フローラという若い独身の女官がやって来た。どうもお偉いさんの娘らしい。ウルガーと親しく話しているのを見て釈然としない思いで見ていた。私らしくないわね、と心の中で呟く。そんな時、決まって「ちゅー」、がやって来る。顔に何か出ていたのだろうか。不思議に思いながら拳骨制裁を発動する。
「一回ぐらいちゅーさせてよ」
「い・や。これでお手つき騒動が復活すれば嫌だもの」
「もう。そんなことを話す女官はいないよ。話さない女官だけ残したから」
「どうだか」
 つん、とそっぽを向く。
「ゼルマー」
 へたれの声が聞こえる。
「なによっ」
「語学の勉強しないの?」
「忘れてた。エルノー! アーダ!」
 となりの父の部屋へ突撃する。エルノーは王太子直属の執事なのでといって父の面倒をアルバンと一緒に見てくれていた。そしてエルノーは語学で不自由な思いをなさっては、と行ってこの国の事を教えてくれていた。アーダもこの国の風習や礼儀作法などさまざまなことをこの二人から教えられていた。アルバンも一緒に生徒になっている。
「やっと来られましたね。姫。ウルガー様と仲良くなさってましたか?」
「誰が、あんなのと。それより語学の勉強しましょうよ。ねぇ。お父様」
 父は言葉を話すことが少なくなっていたけれど笑顔は残っていた。微笑みを浮かべて私に笑いかけてくれる。
「大好きよ。お父様」
 ほっぺにちゅーをする。それを見たウルガーの声が聞こえた。
「父に出来て夫にできないってどーいうことなの」
「まだ、夫じゃないもーん」
「ゼルマー。ちゅー」
「い・や」
 私とウルガーはエルノーとお父様を真ん中に追いかけっこを始める。そこへアーダのの雷が落ちる。
「姫様! 走るなどしてはなりません! 勉強しないならこの本を燃やしますよ!」
 子供向けの絵本のような物だけど、そこにはこの国の神話や歴史が描かれていて私はいたく気に入っていた。
「だめー。ウルガーはフローラと仲良くしてれば? さぁ。お勉強しましょ。アーダ、エルノー」
「はい。それではこの本は姫様にお返ししますよ」
 その本をもらって抱え込む。大事な本だった。まるで昔、お母様に読んでもらった絵本のように、この本だけが私をここにとどめてくれる最後の綱だった。この本のお姫様だけが私がここにいていいと言う印だった。


あとがき
異国へ来ると必ず、言葉の問題やら文化の問題が生じるもんです。ここは事実に忠実に勉強してもらってます。そして現在は鉄拳制裁しかないゼルマさんですが、その内いい物ができます。これを書いていた頃は木の花言葉を調べていたのでそういうのが随所に出てきます。何か木の花言葉で書けないかと思っていましたが、案外少なくて挫折しました。で、この作品に取り入れています。あー。また眠気が。パソコンに向かうと眠いなら漢検か?
以前早起きして漢検の勉強したときは三十分ほどうたた寝しました。どうなんでしょう? 今は。珈琲を飲みたいのですが、今からでは遅い。パソコンしまって漢検を久々にやってみよう。パソコンデスクも少々片付けてみます。片付ければ少しはリフレッシュするでしょう。そもそも雑然とした空間では集中力は芽生えない。ほんの少しの手間がきっといいでしょうね。習慣化もしてたので、そこは効果を実感してます。パソコン周りを整理した初日に千円札が見つかったりしたのです。なので、お金はないででしょうが、気持ちは楽になるでしょう。ということで投下して片付けますー。

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真宮彩蓮(藤宮美琴から移行中)またもチャットGPTさんに決めてもらいました。
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