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【新連載・ロマンス・和風ファンタジー小説】あなただけを見つめている……。 第一部 クロスロード 第十六話 優衣のセカンドラブ

前話

「優衣……さん? ししょーに優衣さんの好物のクッキーを持って行ってくれって頼まれたけれど、食べない? 俺が嫌なら当騎に預けるから」
「ちー。お前、ドアを開ける芸ぐらいは持ってないのか?」
 当騎が千輝頼みをするとドアが少しあいた。
「ちーちゃんはドアは開けれませんわ。暖。少し、話を聞いてくださいますか?」
「え。俺? いいけど……」
「ありがとう。そこの椅子に座ってくださいな。当騎は姉様の元へ。多分、さっきので不安定になってますから」
「どんなときも優衣は優衣なんだな。じゃ、これ。必ず渡したぞ。くってないと言われてもしらん。ほれ」
 クッキーの入った入れ物を渡すと当騎は背中を翻す。
「姉様に謝っておいて」
「自分で言え! むーは泣いた。ちー。ママのところに帰るぞ」
「ぴぎ!」
 とてとてと出てくる。当騎はその遅い走りしかできない子犬を抱き上げる。
「ママの涙を止めてくれ。俺にはできなかった」
 そう言って千輝の頭をなでる。
「姉様……」
 步夢の名を小さく優衣は言う。当騎は振り返って言う。
「何か言いたければ、自分で言え。姉妹だろう?」
「はい。あとでまたそちらに行きます」
「そうか。ちー。ママのところまで競争だ」
 下ろすと当騎が走り出す。千輝はとてとてと必死に走り始める。当騎は千輝に合わせて走る。まるで自分の子のスピードを考えて走る親のように。
「もう、あの二人はいつでもどこでも一緒なのかもしれませんね」
「え?」
「いいんですの。独り言です。ではクッキー頂きましょう」
 そうして優衣はもう一つの姉用の椅子に座ると智也の思い出を語り始めた。
「うんと幼いときから私と姉様と智也はいつもおままごとなどして一緒でしたわ。姉様と奥さん役を争って。いつも最終的には気の強い姉様が奥さん。旦那様が智也。娘が私になるんですの。あるとき、姉様が熱を出して寝込まれたときがありました。そのとき、無理矢理智也とおままごとをして奥さん役をやっと手にしたのです。でも、その最中に姉様は高い熱を出して病院へ。そんなにつらいときに私は智也の奥さん役を満喫していたことに恥ずかしくなって泣いてしまったのです。すると智也は泣いている私に今度からは三人でしようね、と約束してくれたのです。何気ない三人だからこそ一番楽しいと私もわかりました。それからずっと智也ばかり見てきました。姉様の婚約者になってもまた当騎のような人が現れて智也が私を見てくれるんじゃないかって想ってました。それは、智也が再び、療養に来てから少し微妙になりました。ぎこちないというか……。姉様は当騎をとうに早く見つけて智也との生活を守るために最後のデートといってローマへ向かいました。その頃智也は余命宣告を受けていて私がお世話しました。少しでも傍に居たかった。でも、智也の心も姉様に向いていました。二人とも同じ人間なのです。時々記憶だけがはがれて別の人間になることがあるらしく、今回もそうだったらしいです。姉様は当騎を諦めて智也との結婚を選びました。でも、枕をずっと濡らして寝てました。毎朝晴れ上がったまぶたがいたいたしかったですわ。そのうち当騎が来て自然と智也は一歩引くようになりました。当騎に命果てるまで姉様を貸してほしいと言われたそうですが、もう姉様と当騎の間は裂くことができない仲でした。智也も知っていたのか、私が告白して乗り換えないかというとそれもいいねと、笑って言ってくれたのです。それから少しの間ですが、私は智也の恋人としていろんな話ができました。我が家で大事にしないといけない宝物を受け取ったのもわたくしでした。智也はもう姉様じゃなくて、私を見てくれていました。その智也を忘れることはできません。こんな智也への想いを持ったままのわたくしを受け入れてくださいますか? 暖」
「優衣……さん」
「優衣でいいですわ。暖はそう呼んでいい資格があります。わたくし、こんな複雑な状況でもあなたに会えたことはうれしいんですの。だけど、持っていた想いがあなたを裏切るような気がして……」
「もう。終わった恋だよ。そして俺はその智也さんの思い出と想いを持つ優衣ごと愛してる。初めて見て、一気に惹かれた。俺の片側に居るべき女の子がいるってすぐわかった。初めてあったのに会った気がしない。ずっと知っている子だと思った。だけど。重いなら、切り捨てていいよ。そのまままるごと優衣を愛する。俺は……」
「暖……」
 優衣の瞳から涙がぽろぽろこぼれる。
「好きなんですの。暖が。でもどうしていいかわからない。失恋したてで別れも告げられず終わった恋を終わらせられないんですの」
「智也を嫌いにならないで。好きで居て。俺はその優衣ごと好きになるから。智也も俺の一部になるんだ」
「当騎みたいなこというのですね。当騎も自分の一部だから幸せにしたいと言ってましたわ」
「そうだね。一部だからね。だめ、かな?」
 戸惑うように言う暖の顔を優衣はまっすぐ見つめる。

 当騎だけ見つめていたいの。ある日、そう言って姉はローマにたった。わたくしも暖だけを見ていたい。

「暖!」

 クッキーがこぼれる。だが、優衣はそれすらわからず暖の胸に飛び込んでいた。そのまま泣きじゃくる。それを暖はしっかりと抱きしめた。昔に比べやや男っぽい暖に優衣は不思議さを感じつつ、泣きじゃくったのだった。
 こうして、優衣の二番目の永遠の恋が始まったのだった。


あとがき
見出し画像は優衣&暖です。さすがにこの話の時に步夢と当騎ではかわいそうということで画像化。髪の毛の色を変えることも考えたのですが、一応日本人なので黒。別のところにお住まいの方は色を変えます。第二部からでしょうかね。今日は、野球、またエラーで一点入れられ負け越し。岡田監督のお怒りが目に見える。かわいそうに。みなさん。そりゃ、延長でエラーで一点入れられそのまま終わったら今までなんだったんだ?になりますよね。私もダウンしていてほぼ放送を音だけで聞きながら寝てました。明日で最後。広島戦。その後にオールスター。そして後半戦が始まる。上半期の振り返りがいりますよね。それはそれでエッセイの勉強でいたします。とりあえず、三件の投稿しとこうと。休みなので。でも、中途半端な寝方でしんどいです。少し横になってから寝ます。頭の中は空っぽなので二部もいじれず。四神の内の二人が外国の王室の人なのでそこをどう出すかっていうので苦労してます。奥さん捜しがあるため。この人達ときどき活躍するけれど、奥さんあげないと人格が困るのでとりあえず、そこは入れてます。今回活躍するのやら。式もあるし。とネタバレでした。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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