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【長編小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(82)

前話

「どうしたの? ゼルマ。目をそんなにキラキラさせて」
 フローラお姉様がアイリたちと抱っこしながら言う。
「キラキラしてます?」
「ええ。珍しく」
「プロポーズされたの!」
 そう言って左手の指輪を見せる。
「この指輪、ウルガーの手作りなんです。字も刻んで石もブローチから取ったんですって。すごくうれしくて」
「まぁ。やっとそうなのね」
「やっとって……」
 私とウルガーの声がハモる。
「ウルガー」
 お母様の雷が落ちる。
「ダーウィットから強引に奪って華の宮に閉じ込めてまだプロポーズもしなかったのですか? 出来事が次々と起こっていきつく暇もなかったのは承知してますが、そんなに奥手とは。兄上たちを見習いなさい」
 その見本となるお兄様方はうろたえていた。
「ウルガー。どこの鍛冶屋で作ったのだ。教えろ」
 マティアスお兄様がウルガーの肩を揺さぶる。
「これ、そんなに重要?」
 まじまじと指輪を見る。
「いいわねー。ゼルマは愛されて」
 エーヴィーお姉様が言う。やや、恨みがはいっている。しかも、私でなくマティアスお兄様に。
「ウルガーとゼルマはもう一度、デートに行きなさい。恋にくるっている恋人たちではなかったのですか? 子供を作る勢いで愛を語らってきなさい。今さら遅いですよ。それは」
「あ。お母様。寝所は共にしませんが、ウルガーがキンモクセイの宮に引っ越してきます。その手配をしないと」
「それぐらい、母がします。あなたたちはとっとと二人きりになって夫婦になってきなさい」
「って。婚礼が……」
「婚礼なんて後でよいです。やっと落ち着いたと思っていたのにその手前とは……。母の命令です。デートに行きなさい」
 お母様どうして怒ってるのかしら? きょとんとしているとお母様の表情が柔らかくなって私に言う。
「呆れているのですよ。あれだけちゅーちゅー言っていて肝心のデートはおざなりなのですから。恋人らしい行動なさい。落ち着きすぎです」
「そういわれてもなぁ」
「ねぇ」
 顔を見合わせているとお母様がほうきを出してきた。あれで追い出す気?
「わかりました。パレードの道順を見てきますー。ウルガー行くわよ」
「ゼルマー」
 私が走り出すとウルガーがついてくる。あっという間、城を出た。
「どこへ行くの? あの野原?」
 レテ姫の野原。あまり今は行きたくないかな。
「アルポおじいさんのところで子供たちとアルポおじいさんが見れるパレードの道を考えよう。あそこは下町で治安が悪いからパレードからは外されているんだ。だけど、子供たちは本屋から見るのが一番だと思うんだよね」
「そうね。市場の方まで出かけさせるのは逆にあぶないわ」
「それに、少し下町の衛生状況も見ておきたい。ある程度整えたけれど、また取っ散らかってるかもしれないからね」
「あ。市場へ寄って。八百屋のおばさんに自慢するー」
 にへら、と私までウルガー笑いをしてしまう。顔じゅうの筋肉が緩んでいる。
「そんなにうれしいの?」
「ええ。天に届いてさらにその上まで行きそうなぐらい嬉しいわ。ずっと待っていたのだもの。これを」
「そうか。待たせて悪かった。ゼルマはそんなに俺を好きだとは思わなかったから」
「でなきゃ、戻ってこないわよ」
「そうだったね」
 歩きながらウルガーが予告なしのちゅーを仕掛ける。通りすがりの住人はいない。誰もいない、小道の真ん中で熱々ぶりを発揮している私達。流石に長時間は恥ずかしい。そっと離れる。
「俺のゼルマ。これからはずっと一緒だ」
「そ、そうね。もう、本格的なちゅーを往来でするのはやめて。恥ずかしいじゃない」
「キンモクセイの宮ならいいの?」
「う」
 望む心と恥ずかしい心がせめぎあって答えられない。ウルガーがそこを狙う。
「もう」
 ウルガーの胸元に抱き着いて今のちゅーを落ち着ける。これ以上は持たないわ。すると、ウルガーがひょいと横抱えにして私を抱き上げた。
「歩けないんだろ? このままアルポおじいさんの店に行くよ」
「おろしてー」
「やだ。こんなゼルマめったに見られないからね。理性のないゼルマなんて何百年かに一度だよ。十分楽しませてもらうよ。これからが楽しみだなぁ」
「う」
 同棲生活がどんな生活になるか、今から恐ろしい私だった。


あとがき
パープルウッドの式もしてるし、木の宮でも何か渡して言ってるのに、ゼルマ姫には届いていなかったようで……。ウルガーも苦労するのう。つくづく思う。このシチュエーションは現代日本の影響が入ってるようで。瀬里としての心が落ち着く所だったんでしょう。二十の世界観を持つ姫も大変だ。
昨日、Gがでました。格闘の末退治したものの、初めて見ました。この部屋で。母が階下でシュッと一吹きしているので追いやられて上がってきたようです。凍死ジェットというスプレーがあるのですが、高くて買えませんでした。ブラックキャップは買いましたけれど。これを置いて追い払う予定。
本来なら眼科へ行っていたのですが、昨日の戦いで日付を超えていたのであえなく没にして寝てます。フィルター変えもなかなか進まず。ずぶ濡れ覚悟なので、うーんと渋ってます。でも、綺麗な水を保つには必要な作業。夜に持ち越しますが頑張ります。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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