【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(73)
前話
翌朝、目が覚めるとクルトの腕の中にいた。クルトは優しい目をして私を見ていた。私はあたふたする。その私をクルトはぎゅーっと抱きしめる。
「エミーリエ、かわいい。食べちゃいたい」
「ちょっと。クルト! 朝ごはんじゃないんだから!」
「それもそうだ。誤解がないように言うけれど、エミーリエが抱き着いてきたんだよ。俺は起きてびっくりしたよ。一度戻したのにまた抱き着いてたんだから」
その言葉に真っ赤になる。
「寝相悪すぎるわね。キアラが間にいないとダメみたい」
「だね。でもキアラはあのベッドを気に入って間に入ってくれないんだよ」
「キアラの薄情者ー」
恨みがましく見るとキアラは背伸びして朝ごはんを催促しだした。
「俺たちも着替えて朝食とろうか」
「そうね。着替えてくるわ」
ベッドから降りてまだ夢心地のままふわふわ歩いていると声がかかってくる。
「あとで父上から執務の引継ぎにいくからねー」
「はぁい」
本当に王妃なのね。お母様の執務を私は引き継ぐことになっている。カロリーネお姉様の婚礼を完遂しないといけない。
相変わらずつつましやかな朝食をとると、薔薇園へキアラの散歩に出る。
おじい様にもう一度会えたら、寝相の悪さでも直してもらいたいわ。
「俺はうれしいけれどね」
「もう!」
相変わらず流れっぱなしの声に辟易する。もう口から何も言わなくていいんじゃないの?
「それはそれでい・や。エミーリエのかわいい声が聞こえないもん」
「わがまま」
「わがままはキアラだよ。また何か見つけたみたい」
え?
見ると、またかしゃかしゃしていた。でも扉でもない。
「箱? 爆弾じゃないわよね?」
「たぶん。キアラが触った段階でどかーんだから」
そっと手にして開ける。中には花嫁のヴェールが入っていた。
「これ、お母様の……」
「中に手紙が……」
クルトが広げる。
『おじい様からあなたの婚礼が近いと知らせが入ったわ。お願いして私の花嫁のヴェールを送ってもらいました。幸せにね。最愛の娘エミーリエへ。母』
「お母様」
私の瞳から涙がぼたぼた落ちる。手にしていたヴェールをクルトがとる。
「クルト?」
「泣きたいなら思いっきり泣けばいい。ここは君専用の薔薇園だ。誰も来ない。それからこれは、君の涙でボロボロにならないように今だけ預かっておくよ。母上に見せて変えてもらえばいい。言い伝えに古いものと新しいものを身に着けた花嫁は幸せになれるんだろう?」
「青いものも、ね」
そう言いながらもぼたぼた涙が落ちる。キアラがすり寄ってくる。私はキアラを抱き上げるとその体に顔をうずめて思いっきり泣いた。あの日以来姿も声もおぼろげになったお母様。お父様。もう一度会いたくてしょうがなかった。でも、ホームシックは封印しなければならない。私はもう王妃なんだから。今だけ。今だけなの。泣くのは。そう思って私は泣き続けたのだった。
あとがき
抱き着き事件です。どうせクルトも寝てる時に抱き抱きして寝てるからお相子なんです。二人して抱き枕代わりなんで。よくもおとなしくいられるわね、と思うのですが、それはそれ、いずれ、が来るのでした。はい。
眠れず、もう12時間以上。もう午後も半ば。加湿器が来ないー。アロマ対応なのかしら。そこは飛ばして能力だけ見た。アロマはなくてもいいんですよ。オイルはもう古臭くなっているので。アロマウォーター入れたい。とびっきりが第三部の様相を表しました。思いついてしまって、考えていたラストがさらに遠くなってしまいました。がーん。来年の一月いっぱいで完結としていたのにさらに長引くようです。訳ありさせてー。漢検の勉強も始めようとしてるけれど、なかなかテキストにいかない。気力が回らない。ああ。ミニマリストになりたい。母は中古品買い取りにつかまって食器と鞄を整理中。あとはほぼ売ってないのですが、膨大な食器類にびっくり。昔見たことのあるものばかり。須恵器に似た、韓国の茶器は確保しました。あれは私がゼミ旅行で一目見てとっさに買ったもの。青灰色の器なんですよー。私は土器マニア。須恵器ラブなんです。そのためだけにコピー撮りまくって様式覚えたんですから。あら。来たかしら。わくわく。てアーニャじゃない。早くぐっすり眠りたいよー。