【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(37)
前話
「フリーデがいなくなった?」
引き返してきた私達にクルトが言う。
「とにかく手分けして探しましょう!」
そう言うとクルトは私の手を取る。
「ヴィルヘルムと姉上も心当たりを探してくれ。こっちも探すから」
「わかった!」
ヴィルヘルムが急に姿を消した。
「何? 今の!!」
「とんでもない技を持っていたんだな。あれはヴィーにしかできない。ヴィーを追う」
「わかった。でも、追いかけるって」
私にはどうすればできるかわからない。
「ヴィルヘルムもよくあの泉の森でフリーデとピクニックをしていたらしい。そんな話を聞いている。もしかすると自殺するつもりかもしれない」
「なんですってー!」
「だから急ぐんだよ!」
私達は消えたヴィルヘルムを追った。
馬であの森へ急ぐ。泉の中に入ったフリーデとそれを止めようとするヴィルヘルムがいた。
「ヴィー……」
「しっ。声を立ててはダメだ」
どうして! と目線で訴えるとクルトはヴィルヘルムが説得するはずだから、と耳元で言う。
「どうして」
小さな声で呟く。あんなに幸せそうだったのに。目に涙が浮かびそうになるのをこらえる。
「ヴィルヘルム様、お戯れはもうおよしください。私は一介の使える身分の者。もうあなた様とのことはないも同然。あなた様はこれからこの国の要。私のようなはしためを妻にする事はいけないのです!」
「誰に入れ知恵された! 僕は認めない。やっと見つけたんだ。会ったんだ。フリーデを死なせるなら僕も死ぬ。フリーデしかいないんだ。僕の事を本当に理解してくれる女性は。過去も未来も現在も。僕達は年の差しかない本当の相手なんだ。年の差は埋められない。でもそのほかの事なら何でも捨てる。王子の身分を捨てたっていい。魔皇帝の魂も捨てる。どうすればフリーデ、戻ってきてくれるんだ……」
悲痛なヴィルヘルムの声にフリーデは動きを止めた。短刀を持つ手が震える。迷っている。戸惑っている。術にかけられたわけでもなく、誰かにはしためと言われたのかもしれない。一緒に行動することをとがめられたのかもしれない。いくら使える身分で最高の一族でも仕える身は変わらない。そう想ったのかもしれない。全ては彼女が話さないかぎり推測だ。私はそっと動き始めた。クルトもカロリーネお姉様も二人に気がいっていて気づいていなかった。
あとがき
この事件でおおかた書き止まっていたと思います。次はカロリーネの番ですが、そこの序盤で止まりました。書くことは可能ですが、他の話が止まります。それでもよければこの作品にお付き合いお願いしたいと思います。やはり、最後がないまま止めるのも嫌な気がしてきて。この話を飛び飛びでも書いてみようかと思う気持ちになっています。更新は毎日でなくてもいい。他の話もとめてもいい。ユメは進めたいけれど。がんばってエミーリエの第二の人生を書いてみたいと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました。