【連載小説】ファンタジー恋愛小説:星彩の運命と情熱 第三十八話 古文書「蒼の記憶」。こんな字読めないわっ!
グレートマザーのいるエルダリアンの聖域から離れる時が来た。リアナとオリヴィアは本当の母と娘の別れのように接している。流石にオリヴィアは泣いていなかったが、リアナはぼろぼろと涙をこぼしていた。あんなに会いたかったグレートマザー。その数日しか会えなかった事がリアナの心に悲しみの影が落ちていた。
「リアナ。もう心の迷宮を通らなくても私の所に来られるのですから、そんなに泣かないで」
「だって、ずっと本当のお母さんみたいだったんだもの。天然ボケするところも優しいところも暖かい心を持っているところも。ぜーんぶ、故郷のお母さんと一緒なんだもの。グレートファーザーになんて会いたくないわー」
びー、とグレートマザーの胸で泣くリアナである。
「ああ。これを渡そうと思っていました。『蒼の記憶』という書物です。口伝や写本して伝えられてきた古文書です。今のあなたには読めませんが、グレートファーザーに見せれば読めるようにしてくれます。これを私だと思って行ってきなさい」
「蒼の……記憶?」
ぐすぐす鼻を鳴らしながら古文書を手に取る。すぐにセイランの手に渡す。
「お前ねー。考古学者だからといってすぐに古文書読めるわけないだろう。ほら見ろ。ココに書いてるのは何世代にもわたって書かれた口伝だ。文字が何通りにも渡っている。向こうで読めるようになるなら読めるんだろ。リアナが持っておけ。グレートマザーの思い出の品だ」
セイランが渡すとしっかり胸に抱く。
「ああ。そんなに力を込めたら古文書が」
「大丈夫です。強固な保護がかかってますから」
「ならよいのですが。俺もお世話になりました。ありがとうございます、リアナとの距離が縮まりました。また」
「それは良かったこと。また来なさい」
「はい」
セイランはにっこりと白い歯を見せて笑うとリアナを引きずる。
「シルヴァリア頼む」
「うな~う~ん」
シルヴァリアが吠えるように鳴いたかと思うと巨大なドラゴンに早変わりした。自分にもできないのか、とセレスがみゃーみゃー鳴くが経験値不足である。当然、変わらない。
「お前はもう少し大きくなってからな。ほら」
真珠の涙を一つ渡す。セレスは満足そうにパクリと丸呑みする。すると小さな光がセレスから放たれる。強大化したシルヴァリアも食べたいが、空路を飛んでいる上に声を出せばドラゴンの咆吼となる。近隣の国にケンカを売っているようなものだ。
「はいはい。シルヴィにはあとからママのお菓子をあげるから。着くまで頑張って」
四つ葉のヴェルディアンの葉のペンダントを握りながらリアナが言うと、思念が入ってくる。
”ママ カラ シルヴァリア ウレシイ”
”セレス モー”
「はいはい。だからケンカしないでね」
シルヴァリアは肯きかけてやめる。そんな事それば墜落だ。まっすぐ飛ばないと目的地に着かない。シルヴァリアの苦労を知ってかリアナはシルヴァリアの背中をトントン叩く。
「後でね」
「ずるい」
”ボク モー”
「セレスちゃんだけにはね。セイランにはあげないー。あげても食べられないじゃないの」
「あれはあれでいい顔料になる」
「ちょっと。私の涙を絵の具にしないでっ」
セイランにはアーティストという面がある。絵を描くのが好きらしい。
「わかってる。リアナのセレスを一心に思った涙だからな」
自分にもそれぐらいの愛情をかけてもらいたいが、お互い、会った時が最悪なタイミングだったため素直になる事がまだできない。
「また、ケンカしてるの? もっとこうアチアチと」
「できるかー!!」
セイランとリアナが同時に叫ぶ。
「叫ぶのは同時なんだね」
情熱の王子マルコが言う。
「一緒にしないで!」
「一緒にするな!」
異口同音状態である。この事に二人は気づいていない。フィオナが盛大なため息をつく。
「とっとと嫁に行きなさい!」
一路、エルハリムの聖なる里山に向かっていた。
あとがき
なにやら話数が足りないと思ってみたら、三十八話を抜かしてましたー。急遽あげますので頭の片隅においてやってください。マガジンはこれから順序を直します。今回は前話の貼り付けは行っておりません。あとで直します。急遽アップでございます。申し訳ありません!!