【連載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(69)
前話
「クレメンス様。まぁ! キアラ!」
クルトと私が神所を訪れるとキアラがクレメンス様の膝で喉をなでられていた。キアラはごろごろ喉を鳴らしている。
「お可愛いエミーリエ様の影ですな。その隣でクルト様がやきもちを焼かれていますから、お返ししましょう。さぁ。キアラご主人のもとへお戻り」
床に置くと不満げな顔を見せるキアラだったけれど、クルトの顔を一目見るなりこちらにやってきてクルトの足下にすり寄る。
「パパは知らない。ママのところへおいき」
「そう。パパ、拗ねないで抱っこしてあげて。クレメンス様と結婚するわけじゃないんだから」
「むぅ」
顔をしかめながらキアラを抱き上げる。
「キアラはパパとママのところしかいっちゃダメ」
「キアラはお婿さん取らないの?」
ふっと、気になって私は聞く。
「キアラは嫁にださない!」
キアラをぎゅっと抱いてクルトは大きく言う。
「それはちょっとかわいそうでは……。エミーリエ様の時代ならば無理でしょうが、この時代ならばもう一匹猫を飼うぐらいはできるでしょう」
「それはそうですが……」
「パパ。キアラにも恋をさせてあげて」
「わかった。じゃ、キアラ、パパとママがちゃんと結婚したらお見合い、な?」
「お見合いって……」
「……」
私とクレメンス様が言葉をなくしているとクルトが不思議そうな顔をする。
「家柄とかちゃん見ないと」
「って。キアラ、森で生まれたのよ。家柄も何も……」
「いーや、不良には渡さん」
「と。それより、仮の婚礼のことで来られたのではないですか?」
私もクルトもはっとして、顔を見合わす。
「あ。はい。東に行く前に、指輪をとお父様が……」
「国王陛下がさきほど、これを預けていかれました」
小さな箱が二つ。ふたを開ける。
「国王と王妃の指輪じゃないか」
「まぁ。お母様やお父様のなさっていた指輪だわ。いくつもあるの?」
「いえ、この国でたった二つしか存在しません。陛下は代わりに前国王と王妃がはめる指輪を持って帰られました。この指輪をお二人に、と……」
「それほど、東はあぶないの?」
お母様の指輪の入った箱をそっと宝物のように持つとクレメンス様に聞く。
「そうですね。エミーリエ様の存在が東も欲しいのです。クルト様のようなロマンティックな理由ではなく。幻の血筋という道具が欲しいのです」
「エミーリエが東の皇太子の跡継ぎを生めば、その親の教皇が幻の血筋の庇護者として権力をふるうことができるんだよ。俺はそんな権力いらないけれどね。この国の国民の命を背負うんだ。これ以上国土も国民も大きいよ」
「東の教皇様は奥さんも息子も持てるのよね。なんだかおかしい気がするんだけど」
「ゆがんだ権力だよ。と。こういう話はここぐらいでしかできないんだ。王城ではだれがこんなうわさ話を持って東に行くかわからないからね。ぎすぎすはしたくないけれど」
「さて。国勢のお話は終わりましたか? 仮の婚礼と言えど婚礼です。礼装をしていただかないと」
「ドレスがいるの? 一着しか作ってないわ」
「王妃様のドレスを陛下が置いて行かれました。むろん、陛下の礼装も。少し変えてきていただきましょう。それではエミーリエ様、こちらへ。針子が待っておりますので……」
「ええー。いきなりー?!」
「カロリーネ様の婚礼も近づいております。猶予はありません。さぁ」
クレメンス様に背中を押されて別の部屋に行く。そこにはずらりとお針子さんが待ち構えていた。
「うそー!!」
私の声が神所を通り抜けていった。
あとがき
あれ? カロリーネのドレスじゃなかった? あとでチェックしなきゃ。頭が働かない~~~~。眠い~~~~。冬眠だ~~~~~。これだけは毎日書いてだから83まである。また明日書こうっと。明日行ったら休みだー。創作天国~。ってアクアリウムもしなきゃ。ベタの稚魚生きとるか? おっと。終業時間だ。寝ようっと。明日から「とびっきり」執筆プロット立てますね~。