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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(71)

前話

 翌日、さっそくウルガーが迎えに来て、カシワの宮へ移動しようとすると廊下をトビアスが駆けてきた。
「あねうえー。あにうえー」
「あら。トビアス元気ね〜。ま。またウルガーにくっついてるわね」
 ぴとっと足元に抱きついてウルガーは動けなかった。
「ちょうどいいわ。トビアス。鬼ごっこしましょう。ウルガーが鬼よ。さあ、隠れるわよ〜」
「ゼルマ! もう。元気になればすぐそうなんだから」
 ウルガーが言ってるのも無視して華の宮で鬼ごっこする。
「鬼ごっこしてる暇はないよ! 春祭りの計画立てないといけないんだから」
「あにうえ。はるまつりってなに?」
 またトビアスはウルガーにくっついていた。ホント大好きなのね。
「トビアス。隠れないといけないじゃないか」
「トビアスはよくて、私はだめなの?」
「ゼルマ見ーっけ。確保」
 ウルガーが抱きしめる。
「トビアスもー」
「トビアスもぎゅ~」
 三人で抱き合っていると赤ちゃんの声が聞こえた。
「マチルダ様! スティーナ!」
「様はいらないと言ったでしょう?」
 マチルダ様は幸せそうな微笑みを浮かべていた。お幸せなのね。
「そうだったわね。マチルダ、体の調子はどう? スティーナ。元気だった〜?」
 抱かれているスティーナの小さな手をにぎにぎする。赤ちゃん特有のミルクの香りがして、スティーナはあーとかうーとかグーイングを発している。
「もう。いろいろなものが食べられるでしょう? 本当にスティーナは可愛いわねぇ」
 自然と頬が緩む。
「やはり、ゼルマ様から取り上げない方がよかったのかしら……」
「マチルダに様がないんだから私にも様はなしよ。それから、経験者優遇。真似事だけでは育てられないわ。ねぇ、ウルガー」
「そうだね。俺たちの子はやんちゃだろうからね」
「あら。男の子希望?」
「ぶー。ゼルマ似の姫希望」
 二人で言い合ってるとくすり、とマチルダ様が笑みをこぼす。
「本当にお似合いね。お二人は。最近、ゼルマを華の宮以外で見なかったから何かあったのかしら、ってトビアスに見てきてもらえば、姉上が元気なかったって言ったのよ。それで、スティーナを連れてきたの。今日、一日、スティーナの面倒を見てくれる?」
「え。いいの!?」
 あまりにも嬉しい提案に身を乗り出す。ウルガーは今日の執務はつぶれた、って嘆いている。本当に膝の上に乗せて執務する気だったの?
「スティーナ。別の新米ママでもいいの?」
 マチルダ様からスティーナを受け取って抱っこする。人見知りはまだなのかしら。ご機嫌よく、きゃっきゃとはしゃいでいる。
「本当にいいの?」
 念には念を押す。
「一日預かってもらうだけで永遠にいなくなるわけじゃないから、大丈夫よ」
「じゃ。ピクニックしましょう。トビアスも借りていいかしら?」
「ええ。たまには主人と夫婦水入らずもいいから」
「スティーナー。トビアスー。今から厨房行ってサンドイッチ作ってもらいに行くわよー」
「さんどいっち?」
 トビアスはきょとんとしている。そのトビアスをウルガーが抱き上げる。
「パンの間にいろいろ挟んで食べるのよ。スティーナは離乳食ねー。何がいいかしら」
 あれこれ考えているといつの間にかマチルダ様は消えていた。
「あら。ご挨拶しなかったわ」
「ゼルマがあまりにも嬉しそうだからそっと出られたよ」
「申し訳ないことしたわね」
「ま。たまには新婚家庭を楽しんでもらってもいい。さぁ。料理長の元へ行こう」
 ウルガーが私のそばに立つ。
「パパ。似合ってるわね」
「ママもね」
 乳幼児二人と育児を楽しむ婚約者同士が厨房まで仲良く歩く。途中で見かける、使用人たちもほほえましく思うのか始終にこやかだ。厨房で料理長にサンドイッチと離乳食をお願いする。料理長もなぜかほっとした表情だ。
「どうしたの?」
「ゼルマ様は最近食事も残しがちで心配しておりました。ようやくいつものゼルマ様ですね。庭園の裏に眺めのいい丘があります。そちらにウルガー様、ご案内して差し上げてください。今はとてもいい季節です。ゼルマ様のお心が晴れるといいですね。ウルガー様」
「そうだね。後で受け取りに来るよ。トビアス。それまでキンモクセイの宮でお絵かきしよう」
「おえかき、トビアスするー」
 そうしてウルガーと私はにわか親子を一日楽しんだ。
 この一日は私の心に一筋の光を与えたのだった。


【あとがき】
やっと載せられた。そう、かつてフローラの乳児の世話を散々させられているのである程度の事はできるんです。でも、素人には違いない。本当はもっと大変なんですよね。育児のページを見たりニュースを聞くと思います。私は子供が居ないためすべて想像と資料のみに頼ってます。あと育児日記。母が綺麗につけてくれていたおかげで追体験して読めます。でも、わからんなぁ。いやいや期とか。私が変わっているため、書かれていることは特殊なんです。それも、この年でなるほど! と納得する特殊なんですね。父が病院のポスター見てこれだ! と言っていてさすがに我が子は普通と思いたい母も納得したという。見た目は変わらんのですがね。と夜食が食べたい。おなかすいた。iPadでスケジュールをつけようとして苦労してます。勉強のリフィルを使いたいのですが。でもいろは出版さんのノートが三冊ぐらい残っていて。なんとかiPadの活用の道を考えてます。一応、お絵かきの勉強もしてます。まず、線が綺麗にでない。なにか震えてる線になる。それがまっすぐになるまではお絵かきどころじゃない。ペンシルの使い方をマスターせねば。がんばろう。漢検までは後141日だそうで、間に合うかなと思ってます。肩がましになったかと思えば、今度は足。どうなってるのやら。汗をかきながら寝ます。せっかく新しいエアコンなのに。ショック。

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橘優月/切り替え完了/
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