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【連載:ロマンス・ファンタジー小説(オマージュ)】あなただけを見つめている……。 第二部 次代の姫 第二十二話 次代の神姫

「まぁ。ひめちゃん。真っ黒に焼けて。日焼け止めクリーム塗ってもらえなかったの?」
 沙夜が驚いて姫夏を迎える。同じように步夢と当騎も真っ黒だ。
「塗ったんだけど、毎日ホテルでプール遊びしてたもんだから……」
「ホテルでプール?」
 メンバー全員で迎えたが、その不思議な言葉に絶句する。
「スパーランドとかに行かなかったの?」
「それよりあなた。後ろの方々は」
 早く立ち直った沙夜が視線を移す。
「当騎の父です」
「母です。このたびはご迷惑をおかけして……」
「室井のご当主様! あなた、早く用意して」
「ああ」
 緋影が日史と吉野を連れて客間を用意しに行く。
「あなた?」
 にたーと步夢と当騎が笑い合う。
「一歩も二歩もあったようね。やっぱり、新婚は二人にしないと」
 その言葉に真っ赤になる沙夜が二人に言う。
「ひめちゃん、少し背が高いんじゃないの? 年齢にしては」
「それが……」
 急に步夢の目に涙がたまる。
「まま、えんえんしないの」
「ごめんね。お母さん見たら安心して」
 步夢は泣き笑いの表情になる。姫夏は当騎に抱っこされると步夢の涙を拭う。
「まぁ。ひめちゃん。そんなことどこで覚えたの?」
「まま、えんえんのとき、ぱぱがしてる」
「まぁ。しっかり見てるのね。ひめちゃん賢い子ね」
 沙夜が姫夏の頬にそっとふれる。
「お母さん。準備ができましたよ。座って話しましょう」
 日史が呼びに来た。
「え? むーちゃんが当主では?」
 室井の母が日史に驚く。
「私が養子にしたのです。職は吉野家専属の医者ですわ。さぁ、こちらへ。立ったままではなんですから」
「お義母さん、お義父さん、行きましょう。ひめちゃん。お二人と一緒にいきましょうね」
 娘と手をつなぐと二人に促す。
「ばぁば、じぃじ、いこ」
 姫夏が手を伸ばす。当騎の母が素早く手を握る。それを悔しがる当騎の父。
「のたのたしてるからですわ。行きましょう。ひめちゃん」
「じぃじはばぁばと」
「はい。じぃじは久方ぶりにばぁばと手をつなぎますよ。ほら。手を」
「え、ええ」
 やや赤面しながら当騎の母が手をつなぐ。その様子を満足げに步夢と当騎は見る。
「あなたたちもですよ。何してるんですか」
「やば。お母さんの鬼面だ。いそご。当騎」
「ああ」
 二人は手を取り合って急いだ。
 全員が入るまでふすまは開いているはずなのに閉まっている。中は歓談で盛り上がっている。
 步夢は壁をノックしてふすまを開ける。
「お母さん? 私たちには誰かが用があるの? 姫夏はここでいいの?」
「察するのが早いわね。一の長老様がお待ちよ。吉野神社に行きなさい。そうね。姫夏にも関わることらしいから日史や暖と一緒に姫夏を連れて行ってらっしゃい」
「え……」
 步夢の顔が真っ青になる。
「むーちゃん。大丈夫よ。まだ、大事ではないらしいから。私たちは招かれざる客、というところなのよ」
「紬ちゃん。そんなことないわ」
「つむ」
「ぎちゃん?」
 当騎と步夢は何のことと見ている。
「私の旧姓は吉野紡。天女の話を伝える語り部の一族なのよ。さよちゃんとは幼なじみなの」
 この秘密に二人はびっくり仰天する。
「教えなくてごめんなさいね。紡の名前も結婚するときに捨ててしまったの。だから当騎も知らないのよ」
「さ。ひめちゃん。ママとパパとおおじぃじの所へいってらっしゃい」
「はぁい」
 とてっと座っていたのを立ち上がるとしっかりした足取りで二人の元へ行く。
「ぱぱだっこー」
 当騎が顔を崩してだきあげる。
「さ。娘にメロメロになる前に行くよ」
 日史が首根っこを捉えてひっぱる。暖も優衣も征一もいた。仲間がいた。それだけで步夢はこみ上げるモノがあった。バシッと当騎に背中を叩かれる。
「気合いいれとけ!」
「ありがと。今の効いたわ。お母さん。お父さん行ってきます」
 步夢はツインテールの頭をぺこりと下げるとふすまを閉めて行った。
「行ってしまったわね」
 沙夜が暗い表情をする。
「まだ、決まったわけではない。娘を信じろ」
「ええ。でも、怖いのよ。失うことが……」
 組んだ手は震えている。その上に緋影は手を重ねて温かみを与えたのだった。

「よう。たくさんきしゃったのう」
 一の長老は吉野神社の鳥居の前で待っていた。步夢は前世で祖父だったこともあり、気軽においじいちゃーん、と言って、胸に飛び込む。
「あいつだけだ。長老をじいちゃん扱いするのは。恐ろしくてできん」
「そんなに怖いの?」
 日史が聞く。普段の表舞台には決してでることのない長老達。しかし、吉野家には深く関係していたのだった。
「命まるごと潰されるやつもいる。内緒だけどな。步夢には」
「知ってるわよ。それぐらい。でも、そんなに怖がったらかわいそうじゃないの」
「步夢。当騎。姫夏を連れて倉へ来てくれんかの。ひめちゃんや。おおじぃじから大事なお話がある。じぃじと行こう」
 勝手に手をつないで倉に行く。
「ちょっと! ひめちゃんは娘よ。連行しないで」
 步夢が抱き上げる。
「ひめちゃん。おおじぃじとてつなぎたい」
「そうなの? 怖い人かもしれないわよ?」
「だいじょうぶ。おおじぃじ、ひめちゃんにつたえることがあるの」
 帰ってきてからえらく言葉が発達している。これも吉野神社に納められている神器のせいか。步夢は不安で押しつぶされそうな心を抱えて姫夏に頬をすりつける。
「ひめちゃんにとっていいことだといいわね」
 一行は古びた倉へ入ると奥へ進んでいく。
 一の長老は棚に置いてあった、蒔絵の美しい箱を持ちだした。
「ひめちゃんに、見てもらいたいモノはこれじゃ」
 箱をあけると、三つの勾玉が収められていた。
「え? 三つ? 二つじゃないの?」
 血のような紅の色の勾玉を朱の勾玉と言い、命を司っている。真っ青な紺碧の勾玉はこの幾瀬の間に生まれた涙の勾玉、あるいは想いの勾玉と呼ばれる、比較的新しい時代に現れたもの。そして真っ黒な漆黒の勾玉。見たことがなかった。
「この漆黒の勾玉は闇の球が変じたもの。姫夏の世界のものじゃ。ひめちゃんにはな、この世界とのつながりをもつこの真っ赤な卵か真っ青な卵かを選んでほしいのじゃ。ひめちゃんの成長には彼の地と此の地のバランスをとっていくことが必要なのじゃ。近く、その漆黒の勾玉に呼ばれる時がくるだろう。じゃが、これのどちらかを持っていれば戻ってこれる。当分はそうして姫夏の成長を見守る事じゃ。ひめちゃんや。青と赤。どっちが好きかの?」
「あかい卵怖い。青い卵がいい」
「そうか。それではこの漆黒の勾玉と紺碧の勾玉を持つといい。ひめちゃんを助けてくれるはずじゃ」
 二人のやりとりを半ば、呆然として見ていた当騎と步夢であるが、当騎が言う。
「行き来が簡単にできるのか?」
「方法は姫夏がしっている。時が来れば行くときが来る。それまでは精一杯愛情をそそぐことじゃ。どうやら魂が彼の地に行ってしまったものもいるようじゃ」
「まぁ。それならそっちで解決してくれたらいいのに」
「ややこしい理由があるようじゃ。彼の地の鼓動が途絶えた。何か異変が起こっておる。それをまずは収めることじゃな」
「彼の地の異変……」
 闇の神は消えてしまったのだろうか。
「考え込んでもらちがあかん。帰るぞ。みんな。ひめもその石を大事に持ってるんだぞ。ママがお守りを作ってくれるからそれに入れたらいい」
 当騎に抱っこされた姫夏が聞く。
「お守り? どんなおまもり?」
「ママの心がいーっぱい入ったものだよ。パパもそれをもらって勇気をいっぱい出した」
「ちょっと。当騎! ハードルあげないで!」
「その通りだからな。なー。日史?」
「そうだね。懐かしいなぁ。みんなのも作って。步夢」
 日史がにっこり笑って悩殺する。
「~~~。特別にね!」
「よし!」
「って、暖は優衣に作ってもらえば?」
 お鉢が回ってきた優衣が首を振る。
「どんなお守りかしりません! わたくしにも一つください」
「あ~。数が増えていく。お母さんにもらったのと同じなんだけどなぁ」
「初代が作れば威力も違う」
「どんな威力よ」
 ぽすっと拳を当騎に突き立てる。ひょいっと当騎がかわす。
「この~」
 姫夏をだっこしたまま、当騎は逃げる。步夢がおいかけて一同も倉をでる。以前、倉の中で追いかけっこして怒られたので外でする。
「あーたん!」
 綾音がダイブしてきた。
「おっと。元気にしてた? あーちゃん」
「うん!」
「ひめのままー! とっちゃやー」
 步夢の取り合いが始まる。やっぱり綾音とは冬音のように姫夏と取り合いになるようだ。どう収めるか。
「パパ。まかした!」
 そう言って外へ出る。二人の子供が後を追ってくる。
 見上げた残暑厳しい空はもうすぐ秋が訪れようとしていた。

 次の試練が始まろうとしている。次代の神姫である姫夏。その成長はどこまで行くのか。まだ見果てぬ土地を思った步夢だった。


あとがき
ひたすら姫夏が持って行った部となってしまいました。とっとと向こうで集合せねばならないのに。第三部も書きかけていますが、今しばらくこちらで子育てオマージュ小説です。とっとといけ!と思うも成長した姫夏が想像できず、とりあえず三歳までは。と思っているところです。二歳から三歳の間になにがあるかはわかりませんが、きっとたいしたことはなくさっさと時間が動くでしょう。と思いたい。チャットGPTも中国風掛け軸風に絵をつくったもんだから、とんでもなく半端な見出し記事になりました。
することたんまり。リコちゃんのお骨箱みると手が止まってしまいます。私も魚の命を預かってますから、そんな事は言ってられないのですが。今朝、ショー・ベタのジュリちゃんがお星様になりました。もうベタは買うつもりはありません。毎回悲しい別れなので。店長さんも魚は終わりの方向へ行ってるからベタは飼えないと言いました。勧められるんだけど。飼いたいのはやまやまだけど母が怒りの角をだす。金魚で最後でしょと。その後にエビとメダカ飼ってるので、ごまかすにはベタのように一匹一水槽はさけないと。
そして、ひたすらテロップ入れに苦労してます。どうすればあんな風に編集出来るんだろう。スマホで撮ってるみたいだけど。GOPRO12買ったので、致し方なくスマホ撮影はしてません。アクションカメラでもっと動きのある映像を撮りたいのですが、魚は皆おとなしかったのでした。オトシンクルス君が唯一嫌われ者になってるけれど。それではしばらく間が開きますが、第三部でお会いいたましょう。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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