【連載小説】ファンタジー恋愛小説:風響の守護者と見習い賢者の妹 第四十話 再び、放り出された庭で……。
前話
リリアーナに戻った少女はセイレンと一緒に、また庭でぼーっと時間を潰していた。
庭で何ができるのだろうか。何を得るかもわからなくなったリリアーナにとっては余計不可思議な場所だった。察してセイレンが言う。
「エターナルマナを学ぶんだってさ。僕達」
「エターナルマナ?」
「それ以外はわからないんだ。アルシャンドール、お婆ちゃんのところで修行してこいと言われただけなんだ」
「そう、なの」
そう言って改めて庭を見る。
丁寧に手入れされている。自然のまま伸び放題ではない。古木にも異常が見られたところには治療が施されている。そう言うとセイレンは目を丸くして驚く。
「この庭のそんな事までわかるの?」
「お爺ちゃんの庭も似たような所だったと思うの。そこで得た知識で話しただけよ。お爺ちゃんに教えてもらった事だけはきっちり覚えているの。どんな人がお爺ちゃんだったかも覚えていないのに」
ほんの少し悔しそうに唇を噛む。それをセイレンが止めるように言う。
「可愛い唇が可哀想だよ。記憶がなくてもまた思い出を作っていけば良いんだから。僕も前の人生を忘れたくなるときがある。それでもそれはついて回る。君が少しうらやましい。でも、きっとそんな簡単な事じゃないから言わない方がいいね。うらやましい、なんて」
セイレンの気遣いにリリアーナは泣きたくなった。
どうしたの? とセイレンは聞く。
なんでもないの、と首を振ると改めて庭を見わたす。それから驚いた顔でセイレンを見る。
「セイレン……」
絶句してそれ以上言えない。
「何?」
アルシャンドールの裏庭の出口に座って話していたセイレンは身を乗り出す。
「ち、近い」
「あ、ごめん。それで?」
「お花さんが歌っているの。風に吹かれながら。それにそこの古木はセイレンに向かって大昔のことを話しているわ」
「こ、古木が?」
改めて見る。何の変哲もない古木だ。樹齢はとんでもなくありそうだが。セイレンはリリアーナに物騒なことを言う。
「僕の頭を殴って。リリアーナみたいに記憶を失ったらわかるかもしれない」
「撲殺で死んだらどうするのよ」
「そこまでしなくたっていいから」
「いやよ。セイレンの頭を叩くなんて」
リリアーナの目に涙が浮かぶ。思わず、セイレンはリリアーナを抱きしめる。
「ごめん。ひどい事、言ったんだね」
それを合図にたまっていた感情を洗い流すようにリリアーが泣き出す。
「り、リリアーナ?」
どれほどひどかったんだろかと悩みながら背中をなで始めると老婆の声が聞こえてきた。しかし、アルシャンドールではない。セイレンはキョロキョロ見渡す。
『あたしだよ。あたし。風の王様』
「え?」
セイレンはまたも絶句した。足下のキノコがセイレンに話かけていた。
あとがき
どこかのマンガで見たようなノリですが、ここはラブコメを目指すという事で……。ご容赦を。あんまり真剣なラブストーリーにする気はないんです。わいわいがやがやとした世界で行きたいので。大ボスはどこででるか不明ですが。話を広げすぎて焦っております。あの大ボスはいつ出るのか? 第三部か? 四部か?と。三部までは考えていましたが、そんなシリアスなお話ではなかった。カールの三つ子の恋も空騒ぎの予定だった。なのに、放り出された魔王みたいな人って……。どこまで広げるんだ、この手は、とぺちりと叩いていたのででした。最後の眠り姫もラスト決まってないんです。途中でもうユング的なものが出てきて、あらら、と言う所で止まっているんですよ。延々と続く恐ろしい話達。終わる方が珍しい。これだけは予約配信しておきます。「星彩~」四十六話書きました。いつまでドランゴンネタしてるんだ、と本人は思ってます。肝心の所ー。と。次は色を隠すか塗りたくるかというくだりです。作ってはいけないものを作ってしまった……。話を読めばわかります。では、いい加減時間ギリギリなので。ここまで読んで下さってありがとうございました。