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【群作群】澄川市物語 第二章 二人の四旬節 第五節 暖炉

 翌日の25日の夜、カフェ・ノスタルジアで残業を一心不乱にする水脈のタブレット画面に人影が落ちた。
「あら。勇二さん。昨日は教会へ?」
 何気なく話してるが、心臓はばくばくしている。この際にも水脈はまだ自分の心がわかっていなかった。鈍感にもほどがある。
 相変わらず指定席で暖炉の近くだ。火が熱い。この頬が熱いのか? 勇二は素知らぬ顔をして隣の席に座り、暖炉の暖かさを感じていた。それからやおらゆっくりと手を出す。
「これ? クリスマスプレゼント?」
 あ。
 テーブルに向きをそろえてきっちり置いてあったロザリオの入った箱を勇二は手に取った。
「い、一応。散歩の連れへの安いプレゼントよ」
「おや。私にかい。開けてもいいかい?」
「ダメ。旅立ってから明けて。明日には立つんでしょ?」
「そうだね。そろそろ出版社が作品を出せと言ってるからねぇ」
 言いながら包装をとる。
「ちょっと! それはっ」
「ロザリオじゃないか! これをどこで」
「可愛いお嬢さんが売ってる骨董屋よ」
「そうか。ありがとう。……水脈」
 勇二が水脈を呼び捨てにした。ちょっとと抗議しかけて顔を上げると勇二の真剣なまなざしがあった。
「今更だが、これを受け取ってくれないか?」
「これ? ダイヤモンド?」
 きょとんとしている水脈に勇二は笑いが隠せない。
「婚約指輪だよ。この旅が終われば必ず帰ってくる。何度飛び立って君の元に必ず戻る。だから、結婚してくれないか?」
「わ、私と?」
「そう。その私と……」
「式はいつするのよ。明日には旅立つんでしょーが」
 水脈はゼロ日婚は嫌だった。せめてウェディングドレスまがいでも着たい。
「大丈夫。一年間猶予がある。この一年間に私よりいい男が出来たら遠慮なく乗り換えてくれ。そうでなければ、一年後式をあげよう。君に素敵なドレスと新居をあげるために次の旅では作品を量産するよ」
「一年間の猶予? 私でなく、あなたの懐事情なのね」
「それに思いっきり資産をつぎ込んだのでね」
 そう言って箱の中で輝く指輪を示す。
「わかったわ。一年間よ。ゼロ日婚もウェディングドレスがないのもいやですからね」
「わかっているよ。その代わり、君は仕事の一部を部下に引き継ぎしておいてほしい。専業主婦になれとは言わないが、そこそこフリーな時間を君と過ごしたいからね」
「はいはい。仕事の虫もそろそろ飽きていたのよ。うんと高いウェディングドレスを作って待ってるわ。じゃ、マスター。ホットチョコレートを」
「私はホットワインを」
 祝うべき時でもいつもの飲み物を頼んだ二人は顔を見合わせてくすり、と微笑み会った。
 以心伝心。皆まで言うまででもなかった。二人は一年目の四旬節の終わりを静かに楽しんだのだった。
 来年の四旬節には幸せそうな二人がいるだろう。二人のバラバラに過ごす四旬節は来年ともに過ごす四旬節となる。幸せな未来地図を二人は同時に描いていた。


あとがき
うーん。二人で歩く姿をもうちょっと書きたかったな。腕が下がっている。現を抜かしていたのが原因。ライティング誰かに教わらないとなぁ。確たる方法論も勉強せず独学でここまできているので。いや、勉強もしてない。すべてパロディを学生の頃書いてだんだんいろいろかき分けるようになった。無論、一人称が多かったけれどもいつの間にか三人称に変わった。一人称だと新井素子氏が顔を出す。わぉ、とか。つーのとか。
あたし、もだしね。さて、次に書くのは何にしようか。訳ありも書き出しながらも覚えてないため止まっている。余計な話が出てきてえ?というところなのです。勝手に生み出したので収拾が付かない。辻褄は合ってるんだけど。ほんと無意識の産物だわ。あれは。ということで時間置いてまたきまーす。エッセイは書くだけ愚痴になるのでやめておきます。ここがエッセイに近いけれどね。また、ふつふつと怒りが。繰り返しきてはひいてくんでしょう。波のように。ほんと謝りもしないなんて大人として礼儀がなってない。来週のカウンセリングまで言えないのが痛い。ここでぼやくからなぁ。と、眠い。昼寝しよう。あんまり寝ても行けないけれど、インスタもあきたし。映像入れられないことないんですけどね。一本だけまともなのがある。旧YouTubeにも公開してる短い奴が。あれもどうなるのか。ログインをアウトして違うアドレスから入ってるから。チャンネルは別だったような。YouTube思い出したら嫌なことも思い出した。忘れてというかスマホ壊して再起不能にしたい。使いたくない。スマホ一つで人の心壊すんだから。心が壊れた人の箇条、ほぼ当てはまっていた。向こうはそうなっても相手がいるしねぇ。独身者の立場も考えて発言してほしいものだわ。と、エッセイになっとるやん。あとがきやといいのね。はぁ。困ったことだ。正面切ってエッセイが書けないとは。だから勉強がぬけない。一回エッセイって書いてみたいわ。題名に。さて、休憩します。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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橘優月/切り替え完了/
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