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【共同マガジン・連載・ロマンスファンタジー小説】改訂版 羽根の生まれる街第一章 はじまりは殺人事件

前話

 羽根は夢を与えるのか。それとも何を与えるのだろうか―――。


 羽根が生えてそろそろ一週間。違和感もなくなってきた。たまに背中の羽根をぱたぱたしてみるのが密かな楽しみなミリである。普段は長いミリの髪の毛からちょこんとでているだけなので灰色と言う異端的な要素は目立たなかった。

 そんな日々をすごすミリの元へ手紙が舞い込んだ。ネット社会が世界を席巻している現代でそれはアナグロなにおいをかもし出していた。家族の好奇の目にさらされながらも親展とあるかぎりはミリにしか読めない。ミリはしっかりと胸に手紙を抱いて部屋に戻った。


 ベッドの上にふわり、とミリは腰掛けた。ベッドがぱふん、ときしんだ。はさみで封を切る。はらり、と紙が落ち手紙が入っていた。落ちた紙は地図らしい。一枚のそっけない便箋にはこうかかれれていた。

「あなたは羽根結社の一員に選ばれました。今度の日曜日に面会を行います。この場所にきてください・・・」

 ミリは考え込んだ。新手のダイレクトメールかもしれない。だが、羽根のことについてもっと知りたかったミリは好奇心に負けてそこへ行ってみることにした。

 日曜日。ミリは適当な服を着るとちょっとでかけるといって外へ出た。きょろきょろとあたりをみまわしてからミリは歩き出した。歩いている途中なんだか不安になってきたが、それを押し隠しつつ部屋へと向った。それはビジネス街のある部屋だった。

 迷いながらもなんとかたどり着いたミリはためらいがちにノックした。物音が聞こえない。なんだか胸騒ぎが起こるような静けさにミリはおののいた。だが、さらにドアをたたく。ふっとドアノブをひねると簡単に開いた。

「すみません・・・。面会に来たんですけど・・・」

 部屋を進んでいくとそこには男性が倒れていた。真っ赤な血があたりに広がっている。

「あなた! 何をしているの?!」

 急に女性の詰問が飛び込んできてミリはその女性にしがみついた。

「ひ、人が死んでるんです!」

 ミリの声は大声を出したつもりでも小さな叫びにしかならなかった。女性が男性に目をやって叫ぶ。

「ジェンキンス!」

 女性は衣服が血に染まるのを意に介することなく男性を抱き起こした。男性は弱弱しくまぶたを開ける。

「メモリー・・・」

 しごくいとおしいものを見る瞳で彼は女性を呼んだ。

「しゃべらないで。今・・・」

「チップを盗まれた。・・・。パスワードは・・・・」

 ふっと男は意識を失う。女性が男性を揺さぶる。

「ああ・・・パスワードは・・・」

 夢見るようなまなざしで女性の顔を眺めて男はまぶたを閉じた。

「ジェンキンスー!」

 女性の悲痛な叫びがビルの谷間を走り去っていった。

 警察の実況見分の間メモリーと呼ばれた女性とミリはそこにとどまっていた。というよりはつかまっていたのである。鑑識が長く行われその間に事情をミリたちから引き出していた。その後、警察に二人とも連行された。重要参考人だからである。順番に事情を聞くこととなった。ミリは早く家に帰りたいのを言い出したくてたまらなかったが躯体のでかい警察官たちには何もいえなかった。ただミリは手紙が来たこと。そのとおりに行けば女性が名を呼んでいたあのジェンキンスが倒れていたとだけ話した。ほかにはなんの覚えもない。素直に話したせいかすんなりとミリは開放された。警察の中を歩く。すれ違いざまにメモリーとであった。メモリーは小さな紙切れをミリの手のひらに押し付けた。ミリは反射的ににぎりそのままポケットにしまった。そして二人は行き違っていった。


 帰ってきてから家族は怒るより先に心配だったとつげミリを落ち着かせるよう努力していた。おそらく警察にしからないでやってほしいとでもいっていたのだろう。警察でミリは萎縮してしまっていたからだ。あまりの萎縮度に警察も気が引けたのだ。

 意外な家族の反応に脱力したミリはそのまま自室へ引き上げた。またベッドの橋に腰掛ける。枕際に置かれているぬいぐるみが少し飛んでまたベッドにおちついた。ポケットをごそごそして出したカードには指輪のマークとメモリーという名前、そしてスマホのアドレスがのっていた。

 ミリはなんとなく怖いとおもいながらもあの澄んだ青い瞳を思い出してキィをおしていた。数回コールが続いてオンに変わった。

「もしもし?」

 恐る恐るミリはたずねる。

『ミリ・・・さんね』

「はい。メモリーさん、ですか?」

 ばかげた名前の確認をし合ってお互いほっとしたようだった。少なくともミリは相手があの死んだ男性でないだけでほっとしていた。人が死ぬ瞬間をミリは目にしたことはなかった。画像で見たことがあっても実際にその場に立ち会うことはなかった。そのショックがまだひたひたと押し寄せている頃だった。

『あなたの連絡を待っていたわ。これから私たちは秘密結社を立ち上げるの。彼の意思とは違うけれども奪われたチップを取り戻すにはあなたの力が必要だわ』

「私の・・・力?」

『そう。あなたの力・・・。詳しいことは本部で話すわ。また来週の日曜日にあの部屋へ来て頂戴』

 きりりとした声色にミリはうなずいたがあわてて通話であることに気づいてはい、と返事した。

『待ってるわ。それじゃ、おやすみなさい』

 一瞬優しさを帯びた声でメモリーに言われてミリは少しまぶたがちくっとした。いつしか通話は切れ、ミリは泣いていた。

 メモリー、という人も泣いたのだろうか?

 血の広がる床を気にせず抱き上げた彼女。彼女の瞳に映った悲痛な色。そしてあの悲しげな声。人が死ぬということがまだわからないミリはメモリーの悲しみはわかりかねた。

だが、自分もあの男性が死んでしまったのはなんだか悲しいと思い、ベッドにもぐりこむと静かに涙を流し続けた。


 一週間は駆けるように走り去っていく。あわただしい時間をすごしているうちにあっというまに日曜日になった。ミリは迷ったが約束したという手前もある。あのビルへと向った。死んだ人がいた部屋に行くのは気が進まなかったが、なんとか勇気を出して一歩一歩歩いた。近づくと同時に緊張が高まる。またあそこに死体があったら? 殺されていたら?

 緊張は高まり、恐怖が競りあがる。帰りたいとおもう気持ちを戦いながらミリは惹かれるようにあのビルに入った。エレベーターに乗って四階に上がる。そして突き当たりのドアをノックした。

 そしてミリは10秒間動きを止めた。動揺がミリの中を駆け巡っていた。

 そこには羽根人だらけだった。いや、一人、メモリーを除いては。

 紅い羽根を持ついまどきの高校生っぽい少女、さわやかな印象の蒼い羽根の青年。頭からつま先までピンクの少女。むろん羽根もピンクである。そして幸せの羽根の象徴といわれる黄色の羽根を持つ少年。

 ミリの口からうわーと声がでた。静かな空間に違和感のある声が響き、ミリはあわてて口に手をやって黙った。黄色い羽根の少年がじろっとミリを見る。

「変な目でみるなら出て行けよ」

「マヒト。仕方ないよ。君は幸せの羽根を持っているんだから」

 蒼い羽根を持った青年が押させる。

「どこが幸せなんだかね・・・」

 当人にとってはありがた迷惑なのだろう。ありありと迷惑なのだといっているのがわかった。

「よく来たわね。ようこそ。羽根結社へ」

 メモリーがにこやかに微笑んでミリを迎えた。

「羽根・・・結社?」

「そう。私たちは羽根を持つ人々で作られたグループなの。ここでいろいろな作業をしてもらうわ。そうね・・・」

 メモリーは言葉を捜していたようだったがなんのためらいもなく次の言葉を放った。

「気が狂った羽根人を狩るとか」

 ミリは目を見開いた。

「狩る? 殺すんですか?」

 うそといってもらいたいという表情でミリは問いかける。

「殺すか殺さないかは上が決めるのよ。私たちは持っている力で彼らを捕獲するだけ。もともとこのプロジェクトWINGはジェンキンス博士の考案なの。今まで私たちは二の足を踏んでいたけれど、博士は殺され博士の大事な記録が残っているマイクロチップを盗まれたの。それを探す目的もあるのよ。ここにいるのは私と博士がよりすぐった羽根人たちの集まりよ」

「羽根人・・・。私にどんな力が?」

「あなたの力はまだわからないといったほうがいいでしょうね。でも灰色はこの世で一人だけ。幸せの羽根といわれる黄色すら100人に一人いるわ。でも灰色はあなただけ。次第に力を発揮するはずよ」

 はず・・・といわれても・・・。ミリは戸惑った。こんな中でやっていけるのだろうかと不安になる。不安そうな表情が目に入ったのだろう。真紅の少女が目の前にやってきた。

「まぁまぁ。そんな怖いことは気にしないで仲良くしましょ。あたし、アリス。よろしく」

「あ、私はミリです。よろしく」

「元気がないぞー。それと敬語はなし!ね」

 アリスはそういうとミリの手をぶんぶんと上下に振った。アリスと言う少女は頭の先からつま先まで真っ赤だ。翼も赤い。ほんの少し短い髪の毛をポニーテールにしている。前髪はあちこちはねていていまどきのように赤いキャミソールを着てルーズソックスをはいている。唯一色がないのがそのルーズソックスになる。

「僕はロバート。よろしく」

「よろしくお願いします」

 ミリは几帳面にぺこり、と頭を下げる。柔和な感じの青年だ。蒼い羽根を持ち、栗毛の髪と瞳を持っている。

「僕はシュン。白い羽根であんまり面白くないんだけど」

 日本人風の少年が言ってミリはプッと噴出した。

「それって自慢ですか?」

「いや、愚痴さ」

 思わず突っ込みを入れるとシュンは答えを切り返してきた。だんだん慣れてきて楽しくなってきた。あとの二人をミリは見る。

「俺はマヒト。羽根が黄色だからといって懇切丁寧だとおもってもらっちゃ困る。足を引っ張るなよ」

「マヒト。そんな言い方ないでしょ?」

 全身ピンクの少女が言う。アリスよりより丁寧に色が統一されている。

「私はラクシュ。可愛いピンクの天使ちゃんよ」

 その明るい笑顔にミリの顔もほころぶ。

「まぁ、これで自己紹介は終わったわね。彼女はミリ。新しく入ったメンバーよ」

 メモリーがミリを紹介する。

「みなさんよろしくお願いします」

 ミリは丁寧に頭を下げた。



あとがき
過去作って、今の作風とずいぶん違います。擬音がすごく多い。句読点が少ない。あれはあきらかに新井素子先生の影響。そしてあの殺人事件はトルーパーの外伝の影響。とんまにも当麻君は凶器を抜き去って犯人と間違えられる。ふつうは現場維持。ひっこぬいちゃだめでしょうが。と突っ込んだサスペンス好きの私。ハンカチで引っこ抜くならともかく。あれでIQ250?
でも愛すべき旦那には違いない。押しはサトテル。なぜかそうなり、おしグッズはどうやって作るのだろうと悩んでいる。しばらく、このダサい過去作とお付き合いくださいませ。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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