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【再掲連載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り姫 (7)

前話

「フリーデ。好きな人がいるの?」
 泣きじゃくるフリーデに私は聞く。小さく肯く。
「じゃ、その人のために笑えるようにならないとね。一緒に食事して楽しみましょう。はい。ハンカチ。私のものかどうかは解らないけれど」
「ありがとうございます」
「鼻水も拭いて大丈夫よ。クルトに洗濯押しつけるから」
「エミーリエ様、冗談事ではありません」
「いいの。いいの。未来の夫と豪語するんだから、なんでもさせるわ」
 そこへカロリーネお姉様が飛び込んできた。
「クルト、独り占めはだめよ!」
「兄上!」
 今度はヴィルヘルムが飛び込んでくる。
「メンバーが揃ったようね。食事にしましょう」
 私が音頭をとる。この宮殿の主人なんだからそれぐらいしてもバチは当たらないわ。
「姉上やヴィーは余計だろう?」
 不満げにクルトは言う。
「結婚すれば姉上もヴィーも家族になるのよ。今から練習よ。フリーデも・・・。フリーデ?」
 あれだけ落ち着いた雰囲気のフリーデが顔を真っ赤にさせている。
「フリーデ。まさか・・・」
 カロリーネお姉様を見ると流石に顔を真っ青にする。で、ヴィルヘルムを見ると落ち着きをなくす。
「フリーデ。全力で応援するわ!」
 フリーデは十歳ほど違うヴィルヘルムに恋していた。叶う見込みは少ない。王族の上に年下。ヴィルヘルムにして見ればおばさんぐらいにみえるだろう。不利と言えば不利だろう。でもこの可愛い女性を姉とするのは理想的だ。それほど、私はフリーデに親愛の情を抱いていた。この感情がどこから来たかわからなかったけれど。まさか、私の一族の誰かの生まれ変わりじゃないでしょーね。不思議な顔をしているとクルトが手を引く。
「君の生きていた時代の食事を模倣している。違和感があれば言ってくれ」
 いつの間に用意されたのか食卓にはとてつもない量の料理が並んでいた。
「こんなにたくさん食べなかったわ」
 父は騎士として新たな領主に仕えていた。家はあったけれど、それもこんな宮殿と比べれば雲泥の差。食事も質素だった。豆のスープが私のお気に入りだった。
「はい。君の椅子だよ」
 クルトが椅子を引く。しかたなく腰を落とすとすっと前に着けられる。そこにはあの幻のお母様の、一族の定番中の定番、豆のスープが置いてあった。
「これは、手紙にレシピが載っていたんだよ。これを伝えていって欲しいと。代々の料理長はこの料理を復元してから認められていた。君の覚えている味と一緒かはわからないけれど」
「食べていいの?」
 怖々聞く。
「うん。君が食べないと俺たちも手が着けられないから」
 疑問符が飛び交う。
「この宮殿の主人は君だからね」
「そう。じゃ、いただきます」
 そろりとスプーンを持って豆のスープを飲む。お母様の味だった。スープに涙がポタポタ落ちる。
「そんなに泣いたら、スープが塩辛くなるよ」
 クルトが器を持って私にスプーンで運ぶ。私はぼろぼろ泣きながらスープを完食したのだった。


あとがき
朝活の中の時間で更新です。一応、また101日までもどらにゃならんので。+αも書き疲れたのでもう日にちは入れません。+αだけ。昨日、寝るのが遅いままに五時半起き。半分ねてます。

あと、土曜日の夜には……。の中で夏の季語を取り扱ったものをまとめてファイルにしました。ので短いものですが、小説家を支援する会様に提出したいと思います。皆様はもう既に読まれておりますが、改めて作品とまとめました。まぁ。記事に出てたらOKもらったんだなーとでも思っててください。これもKindleにする気は子れっぽちもないです。製本作りたい病は収まったので。大抵無料期間に読み放題でページめくられるぐらいですから。あと朝活で載せ直しているモノも再編集しようかなーと思ってます。一話二千字ぐらいなので規定の四千字には届かないものの、これも作品として出ればいいなぁと思ってます。
今日は朝寝か昼寝が必要です。でも、なんだかコーヒー飲んでメールの整理してそう。あやりのメルアドいらなくなったのです。X抜けたから。ので削除してきます。それするのに頭に力が入らないので何か飲んできますねー。ここまで読んで下さってありがとうございました。

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