【群作群】澄川市物語 第二章 第三節 冬の鳥
それからカフェ・ノスタルジアで出会うと会計をお互い済ませて手から森の中を一緒に歩くようになった。カフェ・ノスタルジアは湖畔で背後を森にした中に建っている。散策にはうってつけだが、その分、冬は極寒だ。
そんな中を何も知らないキャリアハイの水脈と経験豊富なはずのライター勇二のデコボココンビが一緒に歩く。
水脈は鳥が羽を休めて眠る姿を見ながら足下の小石を蹴る。
コロン。
小さな音だけして小石は転がっていく。鳥は目覚めない。
「春に飛び立つ前の冬鳥か……」
勇二がつぶやく。
「まるで君のようだね」
「わ、私?」
いきなり話を振られて水脈はドギマギする。なぜ、そうなのかもわからず。
「そうだよ。仕事に向かっている君は美しい。こんなしわがれたむさい男の前からとっとと飛び去るさ。冬の鳥のように」
いつもの前向きでないどこか自虐的な勇二の声色に水脈は勇二の顔をそっと盗み見た。そのまま正面切って見るのは怖かった。なぜか。その理由はあとで思い知ることとなる。
気難しい表情で勇二は湖にいる鳥の群れを眺めていた。うっすら涙さえにじんでいるかのよう。水脈はわざと明るく声を出した。家に帰ってあの声は恥ずかしい、と反省することになるが。
「ほら! もともとは旅のライターの勇二さんが冬の鳥でしょう? もうすぐ澄川を出て行く。ほら、あのアニメの有名ななんとかすきーという旅人みたい」
「スナフキンかい? あれはムーミン谷が眠りにつくからだよ。澄川は眠らない」
「でも、いずれ出て行く」
真剣な声が出た。そう。自由人の勇二はその方がふさわしい。自分はいつまでも会社のパソコンにしがみつくおばさん。
「そう。だね。何かなければ……。でもまた四旬節には帰ってくる。私にヨハネと名付けた神父の墓がある教会に参るために」
「神父? ヨハネ? あなたキリスト教徒なの?」
勇二の意外な出生の一部がでて水脈はおどろく。
「そうだよ。仏教徒でも思ったのかい? それとも?」
「だって。五七五の俳句まがいばかりじゃ海外の宗教なんて想像も付かないわ。あなたがヨハネなんて。預言者の力でもあるの」
勇二が丸坊主になった姿が思い浮かんでくすくすと水脈は笑いながら言う。
「どうせ、頭を丸めた小坊主でも想像してるんだろう。それは剃髪者に失礼だよ。私は剃っても構わないが」
「やめましょ。この論議。笑いしかでないわ」
「この笑い上戸が」
「ふふん。笑い上戸が泣き上戸より幸せなのよ」
前にすたたと水脈は駆け出すと勇二を振り返った。勇二の顔は今までになく穏やかだった。だが、それもいたずらっぽい笑みに変えるとこのーとマフラーを振り回しながら追いかけてきた。察していた水脈はその前に走り出す。
いい年した男女が追いかけっこをしているの馬鹿にしてみているかどうか。冬鳥は自分たちの寝床で得る大切な睡眠を逃すまいとただただ、羽を休めていた。
あとがき
今日は泣いたり笑ったり。シベリアンハスキーに癒やされてワンコの十戒?に泣きました。シベリアに帰れないシベリアンハスキーというのがほんと面白くて。動物飼いたいなと思うも予想外の事に対応しきれないためとそれとなんとなく動物飼うステージは終わりつつあるのです。もともと猫二匹みおくっているので、今更他の方のワンコに会う必要はもうないんです。それにハムスター何匹か看取って、今は魚。これも規模を縮小してます。
動物を飼うステージから自力でソロキャンプをこなせるようになるステージへと移動しているようです。インスタでワンちゃん見ていて愛猫の最後を思い出して泣いたとき、私にはみーとねねがいたじゃない。それで十分じゃないの、と思い、納得できたんです。最後合祀して頂いたし。ちゃんとお経も上げてもらったし。なぜか帰り卵をもらいましたが。
次は自分の事を自分で決められるようになる練習。誰かに依存してばかりの私。だからそれを絶つ必要があるんです。ソロキャンプデビューなら自分で考えて過ごさないといけません。メンバーシップとは別に最終目的に茶畑のキャンプを入れています。それが終わったらどうしようですが。この投資がどうなるやら。ランタンだけは買おうかしらと思ってる私。でも春まであるでしょう。春に買えばいい。でもほしい。こっちの依存が大変です。
社会で通じる文章と小説で通じる文章って違うような気がします。そこが、分け目だったんでしょうね。事務通知のまんまで書かれてそれが気に食わない私。相手はあれで失礼のないように書いたのになぜ? と思うでしょう。裏に隠された意味が受け取れるかどうかのところなのです。意識せずともそう仕向けている文章。会社では字面を追います。小説は裏を追います。この差。説明できませんね。わからない人には。と、字面論を繰り広げてしまった。元々私も受験期には字面を追う練習してたんですけど長い間に忘れてましたし、まさか会社の事務の続きでメッセージ来るとは思いもせず。
社会の闇ですね。
ま。わからんならわからんままで。
それより鼻上げしている白コリが気になる。寝るしかないんですけどね。こういうときも。起きてたって解決しない。なるようにしかならない。もう、かれこれ三、四年生きているので寿命です。五年はかあちゃん。もう五年も超えたかも。もう、自然繁殖はないでしょう。
さて、明日で二章終わります。また構想に戻ります。古書店あたりをだしましょうかね。で、赤ちゃんの話が飛んでいくー。あっちにからくり一つあるのに。その種明かしまで行くところがあっという間に冬になって春の物語がかけなくなったのでした。秋にしようとして冬だ、と気づいて季語も変えましたからね。もう。冬なんですよ。週末寒いらしいです。関西。さて、明日のラストをお待ちください。あら、アレクサも終わりって言ってる。
ここまで読んでくださってありがとうございました。