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【未完小説(完結を目指します)】とびっきりの恋をしよう! 第二話 魔術師の弟子

前話

 翌朝、佐和子を呼ぶ声がうるさいほど聞こえた。

「サーコ。サーコ。ブスサーコ。どこ行った?!」

 ブスを連呼され思わず着替えぬまま制服で部屋を飛び出していた。寝間着は用意されたがどのように着たらわからなくて渡された荷物の中から制服を引っ張り出してきていたのであった。

「うるさい。まだ起こさないでよ。今何時だと思ってるの!」

「何時って朝の五時じゃねーか。朝議は終わってる」

「なに。朝議って」

「ややこしい会議だよ。それよかサーコのほうが面白い。お前の顔見てたら飽きないからな」

「レン様、朝議のすぐ後で来ないでください。追いつくのが大変でしたよ。サーラ。サーコの用意を」

ぼさぼさ頭の佐和子を見てサーラが驚きの声を小さくあげた。

「女の子がそんなぼさぼさ頭でいてはだめですよ」

そっと佐和子に言うと佐和子が顔を赤らめる。

「だって。ぶすぶす言われたら」

「その愚痴は向こうで聞きます。さぁ」

 そういってサーラは佐和子を連行していく。

「サーコ!」

「はいはい。レン様すぐに戻りますよ。着替えるだけですから」

「レガーシも気軽にサーコを扱うな。俺だけだからな。ブスサーコと呼んでいいのは」

「はいはい。じゃ。サーコは着替えて朝食をとったら魔術の勉強をしますがレン様もなさいますか?」

「ま・・・魔術」

 勢いのよかったレンが小声になる。佐和子が見ていたら確実にいじっていただろう。

「お・・・。おう。魔術でもなんでもしてやる」

「頼もしいお言葉頂戴いただきました。では魔術の部屋に参りましょう。サーコはすぐ来ますよ」

「お・・・おう」


 「遅い。サーコは何してるんだ?」

 一刻の間佐和子は姿を見せなかった。

「それは朝食もありますから時間はかかりますよ。もう少し寝かせてあげればよかったのですが」

「なんでだよ。俺達なら朝早くうごいてるじゃねーか」

 レン皇子、とレガーシは眉間を押えながらいう。

「昨日異国の地に来ていきなり魔術師の弟子にさせられたら普通は落ち着くのに時間がかかるのはお判りでしょう? 心配なのはわかりますがここは少し落ち着く時間を与えてあげないと」

「誰が心配してるって?」

 ぶすっとした顔で佐和子が入ってきた。

「サーコ。朝食は食べられたようですね。」

 レガーシの言葉に佐和子は小さくうなずく。それが面白くないのかレンは悪態をつく。

「べ…別に心配何てしてねー。面白いやつだから見に来ただけだ」

「ふん。そのツンデレ皇子の言葉には慣れたもんね。素直に心配してるっていやいいのよ」

「なに? ブスサーコ」

 今にもその辺のものを持って追いかけっこをはじめそうな二人の上にレガーシの雷が落ちる。

「二人とも神聖な天幕の下でふざけるなら追い出しますからね!」

「すみません」

「わかった」

「ではこの国の歴史でも語りましょうかね。サーラ。竪琴を」

 どこにいたのかサーラが出てきてぽろん、と竪琴を鳴らす。竪琴の旋律に乗ってレガーシの物語が始まる。内容はこうだった。はじめ一つの大陸に太陽神と月の女神が降り立った。大陸は二分されお互いの時代が交互に隆盛を極めた。そのうち、小さな町が独立していき群雄割拠の時代を迎えた。今まさにその群雄割拠の時代が終わろうとしている、というようなものだった。

 佐和子は悲しかった。争うことの悲惨さ、悲しさは自分の世界で学んでいたからだ。

百年近く前日本は戦争に負けた。多大なる犠牲の上に。そこから発展するのは早かった。だがほかの国はまだ争っていた。内戦、テロ、人種差別。悲しい歴史はもう見たくなかった。知らず知らずぽろぽろと涙をこぼしていた。

「サーコ・・・」

 レガーシが慰めようとした矢先レンが思いっきり佐和子を抱き締めた。

「サーコ。お前の国でもあったんだな。この悲しい戦争が」

 佐和子は涙をこぼしながらうなずく。それを見てレガーシは佐和子に背負わされた秘密を明らかにせず元の世界に返そうと思った。この少女にはまだ重い。もっと大人ならよかったものの。この多感な時期の少年少女に与える使命ではない。もう一度託宣をやってみよう。レガーシはまだ明らかにしていない佐和子の重大な使命について思い直していた。

「さぁ。サーコ。いつまでも男の胸にすがってる場合じゃないですよ。文字の読み書きをしましょう」

 そっとレンの胸から佐和子を引き離すと手帳のようなものを見せた。

「これ。日本語じゃないの」

「日本語?」

「サーコ。この文字が何か知ってるのですね」

 確かに太陽の娘が落とした文字を魔術師たちは使っている。同じ世界から来たならそれもあり得る。

「少し読みにくいけど現代の日本語と一緒よ」

「サーコは何者なんだ?」

 レンにはなかなか理解できないこの文字を容易く読む佐和子が不思議だった。

「レン様にはちょうどいいですね。恋い焦がれる女性に文字を教えていただけるのですから」

「ばっ・・・バカいえ。だれが恋い焦がれるなんて」

「そうよ。こっちこそ迷惑だわ。ブスブスというセクハラ男に好かれるだなんて」

「セクハラ??」

 男性二人が一斉に問いかける。

「あー。もういや!! 部屋に帰る!!」

 佐和子は飛び出すなり与えられた部屋に戻る。レンが後を追って扉をどんどん叩くが佐和子は開けなかった。さっきレンに抱き寄せられた時なぜか胸がときめいた。悲しい感情のほかに安堵やこのまますがっていたいという気持ちになった。好きになってはいけないというのに。

「そっちが開けないならこっちにも手がある!」

 レンはそう叫んだきり静かになった。どうしたのかと気になってしばらくしてドアを開けたらそこにはレガーシとサーラが困った顔で立っていた。

「レンは?」

「いずれわかりますよ」

「あけろ~~~」

 背後の窓からレンの声が聞こえてくる。まさか壁伝いに上がってきたの? 佐和子は驚愕した。

「こちらはレン様のお母上の別邸でもありましてね。レン様はここのことはよくおわかりなのですよ。開けてあげてください。転落死させるわけにはいきませんから」

 転落死!

 ぞっとして佐和子は窓に急ぐと開け放した。

「オレ様はここの事なら何でも知ってるんだ。逃げようたってそうはいかない」

「なんでブスブスいうのに来るのよ」

 よいしょ、と窓枠から上がってきたレンはにっと笑う。

「面白いから」

 その笑顔を見て佐和子は脱力する。

「よほど暇なのね」

「暇で悪いか。兄上は戦場で忙しいから暇なんだよ」

 ほぉ、と佐和子から言葉がでる。

「レン。ブラコンなんだー。お兄ちゃんがいないからさみしいんだ」

 今度は佐和子がにっとする番だ。

「だ・・・誰がさみしいと」

「今言ったじゃない。暇って」

「暇なだけでさみしいわけじゃないっ」

 向きになって怒るところがまるで子犬のように見えてしかたない。佐和子の中から笑いが出てくる。けたけた笑う佐和子にレンが止めようとするが佐和子はかなりツボにはいったらしく笑いがとまらない。

「オレ様ツンデレがねぇー。はぁー、おなか痛」

「侮辱したな。オレ様の権力を持ってしたらお前なんて首ちょんだぞ」

「やれるならやりなさいよ。元の世界に戻れなかったら一緒なんだから」

 レンははっとした。この少女は来たくてこの世界にきたんじゃない。いきなり魔術で連れてこられたのだと。いくら帰りたくてもまだ帰る方法もない一人ぼっちの少女なんだと。

「ごめん。これから・・・」

「ブスはいいわよ。慣れちゃったから。あれだけブスブス言われたら慣れるわよ。ただこんな転落死してしまうようなことはやめて。こっちが犯罪になるじゃないの」

 ブスはやめようとした途端佐和子はいきなり言い出す。恐る恐るいいのかと聞くと承諾の言葉が返ってきた。

「どうせ。私の事ブスっていうのレンしかいないじゃない。それぐらい目をつぶるわよ。ただサーコ、サーコと大声で探すのはやめて。私は今、『ここ』にいるから」

「そうだな。今、お前はこの世界にいるんだからな。ありがたく思え、オレ様がじきじき魔術を教えてやる」

「できんのー? そんなこと」

「できる!」

「じゃ、お手並み拝見といきますか。レガーシ。天幕に戻るわ。子供っぽいことしてごめんなさい」

「いいですよ。レン皇子とも和解なさったみたいですし。さて続きをしましょう」

「はーい」

 二人して同じ返事をすると天幕のある部屋へ二人とも向かったのであった。


あとがき
第一部はすんなり行ったんですけどねぇ。二部が……。見直しながら考えるか。コメントやら記事やら執筆やらがどーんと来てもうすぐ十時。早いよー時間。寝ないといけないのにー。質のいい眠りを求めて早寝する予定でした。一万歩以上歩き、疲れ切っていてもう寝れるだろうと思っていたのに。まだ書くことが残っている。明日は恒例季語ミニシリーズの日。なんの季語かまだ決めてない。初霜を候補には上げてますが。サーコも髪の毛ほんとにロングなんでしょうか。ショートカットのイメージがある。でもイラスト生成するときにロングと指定してしまった。読むとイメージが出てきたけど読む前に設定しちゃったので。明日で第一部は終了。第二部、途中まで載せます。その続きは四千字もかけるかわからないので、プロット立ててみます。二千字なら簡単だけど四千字は一苦労する。ハムちゃんずもあるし。マガジンも作らな。aoi所、なんか創作置いていた気がするんだけど……。忘れた。また見に行かないと。あとは朝活のところにフォーチュンシリーズを入れに。見出し記事画像、作らんでいいのかしら。まずはとっとと動く。ということでここまでで読んでくださってありがとうございました。

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