【新連載・ロマンス・和風ファンタジー小説】あなただけを見つめている……。 第一部 クロスロード 第八話 朝日の滴
前話
ブン、という音とともに智也の部屋の前に三人は現れた。この異常な出現の仕方に屋敷の者は忙しく、気づかない。日史が三人を見た。
「おいで。もうすぐ、言葉が交わせなくなる」
「日史!」
どうして! と步夢が強く言う。
「彼はがんばったんだよ。もう、楽にしてあげないと。優衣を呼んでる。行ってお上げ」
「優衣? 私じゃなくて?」
「智也は安心したそうだ。当騎が現れて。だから、今は優衣に夢中」
智也と優衣が?
「それならもっと早く……」
「当騎が来るまでは、と思っていたそうだ」
步夢と当騎が顔を見合わせる。
「じゃ、どうして步夢を借りたいと」
今度は当騎が不思議そうだ。
「初恋の彼女は渡しがたかったんじゃないの。さ。優衣行っておいで」
「ええ」
看護師やいろいろな人間が入ったり出たりする忙しい智也の部屋に優衣が駆け込んでいく。
「私。また智也を不幸にしたの?」
「むー」
当騎が見ると步夢は悔しそうに唇をかんで泣いていた。当騎は思わず抱きしめる。
「お前のせいじゃない。智也が選んだんだ」
「当騎も知って……?」
「来た当日に知らされて步夢を貸してほしいと言われた」
「私だけが知らなかったの?」
「でないと、命かけて彼を救っただろう? 步夢は」
日史に言われて步夢はきっと日史をにらんだ。
「ヤブ医者!」
そう言って当騎の腕の中からすっと消えた。
「むー!」
「お願い。当騎、智也の意識がなくなる前に步夢を引き戻して。話があるそうだ」
「無茶言うなよ。智也を頼む」
当騎はそう言うと宝珠を握った。宝珠の力で步夢の後を追う。当騎の姿も消えた。
*
「むー!」
当騎が追いかけたところには錫杖を持った步夢が立っていた。
「今からでも遅くないわ。私の全生気を……」
「馬鹿な事するな! そうするから言えなかったんだろうが」
ぱし、と乾いた音がした。当騎が步夢の頬を軽くたたいていた。
「せっかく生まれてきたのに、もう死ぬのよ? 前と同じじゃないの!」
凶弾に倒れた前世を言う。
「話があると言ってるそうだ。意識を失う前に帰ろう」
步夢の肩を当騎は抱き寄せる。わっと步夢が泣きじゃくり始めた。
「つらいな。俺もつらい。仲良くしていたかった。あいつとは……」
幾分か収まったところでまた当騎は宝珠を握って智也の部屋へと向かった。
*
「姉様! 智也がこれを……」
「優衣? 智也は?」
「先ほどお眠りになりましたわ。沈静化の前に渡してほしいと言われたものです」
「石?」
「陽の石と陰の石、と。この二つが『朝日の滴』というものに、変われば母様の意識が戻るそうです。智也はずっとそれを探していた、と」
「馬鹿ねぇ。智也。そんなの探して命削って。ミイラ取りがミイラになったら仕方ないじゃないの」
言葉はひどいが、声は優しかった。
「そんな優しい姉様のことが好きだったんだと思います。智也は」
「優衣の事は? いつから?」
「今朝、姉様から乗り換えませんこと? と言ったらそれもいいね、と」
最後の会話を交わした優衣は満足そうだった。
「泣いていいのよ?」
「いいえ。当騎が言うような歯の浮く台詞をたくさん言ってくださいました。それでもう十分です」
優衣の声が震えた。
「馬鹿ねぇ」
步夢は優衣を抱きしめる。優衣の泣く音と肩をふるわせて泣いている步夢の姉妹の世界があった。步夢はそれを優しく見守っていた日史を見る。
「ごめんなさい。ヤブ医者って言って。精一杯尽くしてくれたんでしょう? 気づかなくてごめんなさい」
「いいよ。しばらく沈静化の日々が続く。疲弊しないように千輝の元で元気をもらっておいで」
「行こう。むー。優衣」
「もう……。話せないのね」
「沈静化を止めたら激痛だけが戻るよ。したくないだろう?」
「ええ。優衣。ちーちゃんにミルクと離乳食をあげましょう。おなかすかせて待っているわ」
「ええ。姉様」
二人は手を取り合いながら出て行く。
「二人を頼むよ」
日史が当騎に言う。
「わかった。智也を頼む」
「まかせて」
そう言って当騎も出て行った。
あとがき
重すぎる話数です。すみません。ここはこうならないと困るんです。次も大変かも。まぁ、字数が短いから大丈夫かも。これ四千字かけてたらずとーんと落ちすぎ。千単位でよかった。日史にはラストにご褒美をあげるのでお待ちください。顔立ちなどはオマージュにしたアニメとは全然かけ離れてます。わざと、変えました。バレたら怖い。オマージュだけどね。キーワードはなるべく少なく。これを更新するだけで半日、呆けてました。なぜか、第二部は浮かばず、やる気も出ず、六月病になってるようで。野球中継も見られず。かけてますがほぼ無視です。スタミナ不足。夏バテ。ついて行けない。いいところだけ見る私。一度、横になったらラストの岩崎優選手でえ? 終わり? あらーという事が。なのでこの間は横にはならないんですがね。先制点入れられてるので、いつ逆転か。昨日はさっさとお風呂に入って最後にサヨナラ勝ちだったので、もういつお風呂入っても一緒。はいろかなー。第二部が書けるかも。気分転換をねばる。第二部副題も考えてない。難しい。話のとっかかりはできたけれど、副題が。あー。もう。はいってこー。ここも愚痴のるつぼになってしまった。すみません。これも裏話ということで。ここまで読んでくださってありがとうございました。
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