【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子第一話 飛翔の魔法、フェリシア
前話
かしゃかしゃ。
窓をひっかく音をレオポルドは聞いた。窓を開ける。猫、がいた。
にゃーん、と声を上げる。首輪に何か結びついている。
「お入り。ミルクをあげるから」
そう言って体をずらすと猫は、すらり、と部屋に入る。そしてお行儀良くお座りする。
「うな~ん」
「よしよし。今、やるからな」
レオポルドは今しがた飲もうと思っていたミルクを木の皿に入れると猫は首を伸ばす。
「これを読め、と?」
「な~ん」
首輪に付いた紙を取ると広げる。猫はもう使命を果たした、とでも言うようにミルクを飲んでいる。
”旅人さん。フェリシアに手紙をつけてあなたの気配を追わせたわ。満月の夜、またあの湖の上で会いましょう。どう? この冒険は。なかなかスリルのある冒険よ。じゃ、返事をフェリシアにつけて返してね。ユレーネ”
「お前……。召喚動物か? 雪の国の」
それができるのは、王族だけだ。ユレーネは間違いなく、氷晶の国、セレスティア国の王女。そして自分は炎の国の王子。長年敵対している国の間柄だ。雪と炎は相容れない。そういう歴史を歩んできた。レオポルドはそんな確執を終わらせたかった。そして度々、氷の国に旅人として出入りしていた。そして、あの湖の上でユレーネは舞っていた。輝く雪の結晶の様に。
一目で心を奪われた。だが、自分は炎の国の王子。間違いなく火種になる。
だが……。
あの、ユレーネの煌めく瞳をもう一度見たいと思っていた。あの、何事にも興味を示す純真な瞳に、無性に会いたかった。いつものように身分を偽って行くのか……。レオポルドは悩む。そんなレオポルドにフェリシアがなーん、と鳴く。
「お前は行け、と言うのか?」
フェリシアの目に不思議な色が浮かぶ。今度は、なーん、ともなんとも言わない。
「はいはい。わかりましたよ。行けばいいんだろ」
机に向かってペンを走らせる。
”お誘い、ありがとう。スリルある冒険に参加させてもらうよ。レオポルド”
短文だけを書くとまたフェリシアの首に結びつける。偽名を使わず、実名使った。別人として会いたくはなかった。
窓を開ける。フェリシアはたん、と窓から飛ぶと消えた。
「飛翔の魔法、か。フェリシア、この国の魔術師に捕まるなよ」
この国には欲深いアドルフという王家付の魔術師がいる。この国に氷晶の国の魔術が入ったことを感じているはずだ。もう、火種になった。十分。
炎の国の王子と氷の国の王女が会うのだ。ただの青年と舞姫として会ってでも。身分がこれほど邪魔だと思った事はない。
だが、この不毛な対立を終わらせることができるかもしれない。共存すべき世界に立てるのかもしれない。
レオポルドは明るい未来を描いてフェリシアが飲んだミルクの皿を片付けた。
あとがき
野球観戦、見ながらぽちぽち打ってました。起きて欲しい村神様と思いつつ、引き分けで終わって~と思ってる書き手。つらつら次の話は何にしよう、と考えていたらできてしまいました。暇なのでアップしてます。漢検という気になれなくて受験勉強は止まってます。とりあえずは休みの日にすればいいので。
自己実現という物語が難しいです。恋愛でありながら、心理学や占星術を入れ込むので要素が満載。心理学は独学なので、都度都度調べて書いております。エッセイで仕入れている方ですが。学術本はあまり読んでません。読んだのですが、概説で、踏み込んだ話は意外とエッセイが多いんです。特に河合隼雄先生の本を読んでます。あとはモタ先生の本。たまに海辺のカフカ聞いて文学の健全性を考えたり。この話では必要のない所だと思います。他の話で必要なんですが。お年頃でもそういうことにはあまりならない天然キャラ同士。その代わり、大いに王族の役目を果たしてくれてます。他の話にはない展開。別人で書いてるのかしらね。本人のこの差にも驚いてます。なんだか恋物語なのに違う次元を書いてる気が……。
野球見終わったらパタン、と寝てしまいそうです。漢検~。阪神~引き分けか~? 勝ち越しか~?