【再掲載小説】ファンタジー恋愛小説:最後の眠り姫(18)
前話
雪遊びをやるだけすると、冷えた体を温めるために、自室で暖かいレモネードを飲んでいた。クルトだけが、用事があると言っていなかった。
「もう。くたくた~。ケーキみっつ~」
「経費削減でないわよ」
カロリーネお姉様が言う。
「経費削減?」
「逆プロポーズしたのでしょ? 春に婚礼の式を挙げるに決まってるじゃない。盛大な婚礼を挙げるにはこの国はお金持ちじゃないの。でも内外に示しをつけるためには派手にしないといけない。そこで!」
カロリーネお姉様が指をたてる。
「経費削減なのね。でもケーキみっつ削減しても変わらないわ」
「ちりも積もれば山よ」
「まぁね」
そこへクルトがやってきた。
「エミーリエ、開かずの間に行くよ」
「え? あそこは私でも入れない場所じゃなかったの?」
「状況次第さ。さぁ、行こう」
手を引かれて開かずの間にいく。クルトはどこから持ってきたのか鍵を開ける。開けた途端、豪華な内装に驚く。シャンデリアが輝き、まるでクリスタルが集まって出来た部屋みたいだった。
「眩しい」
「眩しいほどの事をエミーリエはしてくれたんだよ。さぁ。その玉座に座って」
「こ、こう?」
高座の椅子に座る。するとクルトは突然跪く。
「我が、愛しのエミーリエ姫。この指輪を受け取ってください。私の永遠の愛の印です」
古い布で覆われた中から出てきたのは、この部屋に匹敵するほど眩しいダイヤの指輪だった。
「これがおばあさまの・・・」
「左手出して」
「こ、こう?」
余りにもまばゆくて正視できない。でも、真剣なクルトの顔は見ていたかった。すんなり指輪は入った。まじまじと見つめる。
「それから、これが母君から伝えられてきた君への婚礼の決まりをぎっしり書いた本」
「わ」
ずっしりと重い本に落としかける。中を開く。懐かしいお母様の字だった。涙がこみ上げる。嬉しいのか懐かしいのかわからない涙がこみ上げる。
「泣いちゃダメじゃないか。折角のプロポーズに」
「プロポーズだから泣くんでしょ?」
「カロリーネお姉様!」
「古代語だからわかるでしょ?」
今はエレオノーラお母様になっている。思わず言う。
「お母様かお姉様に統一して!」
「たまに出てくるのよねぇ」
もう・・・。ここの姉弟達は・・・。そうしている内にお付きの人が何人もつれている威厳のある方が入ってきた。
「ようやく、実ったのですね」
はい、と嬉しそうにクルトが答える。この方は・・・。
「母上だよ」
ヴィルヘルムが椅子に近づいてそっと耳打ちする。
「まぁ。お母様なんて。失礼しました。お初にお目にかかります。エミーリエと申します」
家庭教師に習った通りに最高級のお辞儀をする。
「そんなにかしこまらなくても大丈夫ですよ。もっと気楽に。親子になるのですから」
「でも・・・」
「でももすともないよ。娘が姉上一人だからもう一人増えて嬉しいんだよ」
クルトが説明する。
「では、妃殿下。本当に春に婚礼の式を挙げるのですか?」
「お母様と呼んで頂戴。妃殿下なんて堅苦しいわ」
「では、お母様、国が困窮してても婚礼の式は派手に?」
「そうね。少し派手すぎるのが嫌のようなら手を打ちますよ。これからは婚礼の式の準備でいそがしくなるわ。覚悟しなさいね」
「はい。お母様」
「可愛いエミーリエ。クルトがなかなか会わせてくれなかったのよ。エミーリエが減ると言って。カロリーネ達は自由に出入りしてるのに」
「それは母上もエミーリエとお人形ごっこするからです。姉上より大変なのはわかってるでしょう?」
「カロリーネを産んだ母ですからね。遺伝よ」
いつまで経っても会話が終わらない。私はずっしりと重たい本を持て余していたのだった。
あとがき
一介の騎士の娘がここまで玉の輿になるとは。じいちゃんの血筋は怖いのう。魔力なんてほぼないのに。血筋ってある意味いろんなところで変わりますよね。犬がいい例。血統書とかついてるし。うちも親戚が調べたら侍の家の末筋らしいけれど、戦国時代前は調べなかったらしい。でもどうせ源氏と平氏のどっちかに別れるんだよ、とは高校時代の日本史の先生の言葉。そりゃそうだ、と納得した。妙に納得したのを覚えています。
日本史は選択しなかったけれど好きだった。平安時代までは。それいこうはあまりわからない。やってないからなんだけど。漢字で間違えるので世界史選択となったのでした。世界史は発音の違いで部分点があるのですよ。カール大帝をシャルルマーニュといっても正解。ドイツとフランスの発音の違いです。それで乗り切った私でした。この話もドイツ語風の名前をつかったりしてます。このときはまだChatGPTいなかったのでヨーロッパの名前一覧というサイトで見てつけてました。どういう意味があるかはわからないので適当ですけど。カロリーネはカテリーナと案外間違える。話が違うのに。一度こちらのハッシュダグでカテリーナを入れて後からえ? 入れたっけとなったときが。まぁ、名前のまつわる秘話はそこそこあるのですが、半分以上は忘れているしドイツ語かスウェーデン語にまつわる名前です。変わった名前となると。まぁ、レオポルトもフランスかドイツかでよくわからないし。ドなのかトなのか。ポなのかボなのかも。ChatGPTに効いてもどっちもドイツ語と言うのでもう信用してません。採用した方を延々と使っております。
ま、そんな名前の事だらけになってしまいました。ここまで読んで下さってありがとうございました。