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【再掲載連載小説+エッセイの勉強とあとがき】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(44)+【エッセイの勉強】朝活やめたら朝活になってる

前話

「ああ。散歩の時間だね。アルミを連れてくるよ」
 ウルガーの後を追って私はヘレーネを連れて行った。
散歩の間中、またウルガーは無口になっていた。
「ウルガー。聞いているの? 次の作付けの話よ。ウルガーも手伝ってくれなきゃ、あんな大きな菜園扱えないわ」
「ああ。ごめん。君の大得意な思考の泉、ってヤツに沈んでた。次の作付けねー。コメでも植える?」
「ウルガー。真面目な話よ。水田なんて急に出来ないわよ。小麦ならいいけれど。そうねぇ。蕎もいけるけれど、蕎麦打ちが出来る人がいないわね」
「なんだい? ソバって」
「え? この世界は蕎がないの?」
「え? あると思い込んでたの? どういったものなの?」
「小麦で麺を作るように蕎も麺になるのよ。字が難しいから簡単なカタカナ・・・え? 私、今、カタカナって言ったかしら?」
「言ったよ。カタカナって食べ物」
 私の顔は真っ青だったことだろう。ゼルマ、としてでなく瀬里の記憶が急速に入ってきた。目がくるくるする。
「ゼルマ!」
 私は思わず、リードを手放してウルガーの腕の中に倒れ込んだ。
 目が覚めると、そこはキンモクセイの宮だった。側にお母様とウルガーが心配そうな顔をして座っている。そう。お母様とウルガーよ。忘れてなるもんですか。名前まで。私は瀬里じゃないわ! あらがうように心の中で言うけれど、記憶はゼルマの記憶より瀬里の記憶の量が圧倒的に多かった。
「私・・・」
 そこまで言ってもう言葉にならなかった。意識の世界に戻らないといけないの? ウルガーと添い遂げられないの? 瀬里の意識がはっきりしてくるに従って私のこの世界にいられる時間は短いと感じていた。意識に目覚める。そういう風な感覚が私を支配していた。
「ゼルマ。大丈夫か?」
 ウルガーが優しく前髪に触れる。
「大丈夫。少し、目眩を起こしただけ。さぁ、散歩続けないと」
「ゼルマ、お母さんって誰?」
 身を起こしかけた私にウルガーが決定的な言葉を投げかけた。私は固まる。
「ゼルマ? 何かが起こったんだね。話してくれないか? 今度婚礼の式をあげる仲じゃないか」
「瀬里の、母の事よ。今、私の頭の中は、心の中は、瀬里の思い出や想いが多いの。もうすぐ目覚める、ということね。折角、ウルガーと結婚式挙げられるところだったのに。ヘレーネとも別れるだなんて、嫌よ」
 上掛けをぎゅっと握る。その手の甲に水滴が落ちる。
「顔をお上げなさい。ゼルマ。いえ、セリ」
「お母様?」
 涙で濡れた目でお母様を見る。そう、瀬里のおかあさんじゃない。お母様だ。
「婚礼を早めましょう。きっと物語師の介入があったのよ。あなたはこの世界になくてはならない人間。またあなたの本に勝手に書き足した人間がいるのよ。ゼルマでもセリでも、あなたは私の大事な娘です。むざむざ、帰す気はありませんよ」
「お母様!」
 急にゼルマとしての想いがあふれる。思わず抱きついて声を出して泣き出したのだった。
私はいつの間にか泣き疲れてお母様の腕の中で眠ってしまった。遠い意識の中からレテ姫の声が聞こえる。
『光と闇の物語師に会いなさい。そうすればゼルマと瀬里としての新たなユメ姫の道が始まるわ』
「ユメ、姫? 名前が変わるの?」
『裏向きはね。表向きは今まで通りゼルマでいいんじゃない? ウルガーを救ってくれる約束忘れたわけじゃないでしょうね』
 勝ち気なレテ姫の声が胸にささる。
「忘れていないわ。でもどうすれば・・・」
『ウルガーを問い詰めるのね。あの隠した書類は何? と』
「書類?」
『ああ。バクが目覚めるわ。この夢を食べられないうちに目を覚まして。ほら』
「いたっ」
『お尻じゃないからいいでしょ。ほら。さぁ』
 言われるままに光の差す方に手を伸ばす。急に瞼に光が入ってきた。お母様の腕の中で今まですやすや寝ていたらしい。窓の外は夕闇がせまっている。
「ごめんなさい! お母様、腕がしびれたのではないですか? のうのうと寝るだなんて」
 慌てて身を引く私をお母様が止める。
「いいのですよ。娘が悩みを抱えているときに母が出来るのは抱きしめることだけですからね」
「レテ姫にあったんだね? お尻蹴り上げられなかった?」
「ウルガーどうして! それに仕事が・・・」
 まだお母様の隣に座っているウルガーに言う。
「君の生死が関わっている時に仕事なんてしないよ。レテ姫に何を聞いたんだい?」
「あの、隠した書類の事を聞け、と。何を隠したの? あの時」
 素直に聞くとウルガーは顔をこわばらせた。
「あの書類は・・・」
「は?」
 お母様と一緒に聞き返す。
「ゼルマを光の物語師の長に戻して欲しいという嘆願書というか脅迫書だよ」
「脅迫! それでどうするの?」
「捨てた」
「ちょっと。そんな大事な手紙を捨てるなんてどうするの! レテ姫に会えって言われてるのよ」
「レテ姫が・・・? ゴミ箱の中身を捨てられてなければまだあるよ。取ってくる」
 固い表情のままでウルガーは出て行く。背中がつらそうだった。私だってウルガーの元を去るのは嫌よ。でもレテ姫は光と闇の物語師に会えと言った。きっとこの問題の解決の糸口になる。数分してウルガーが戻ってきた。手にはくちゃくちゃにした書類がある。一部、ちぎられた所もある。
「ウルガー。ごめんなさい。辛い思いをさせて」
「それはゼルマだって同じだろう?」
 二人で見つめ合っているとこほん、と咳払いが聞こえた。
「夕餉は皆、自宅で取ると言っていましたから、三人で一緒に食べましょう」
「お母様・・・」
 潤んだ目で見るとお母様は言う。
「腹が減っては戦はできぬ、でしょう?」
 ウルガーの表情が緩み、私は泣き笑いの表情になった。
「さぁ。姫様。大好きなカブラのスープですよ。冬にはこれが一番」
 アーダが得意気な顔をして器を置いてくれる。少し深めの器にはカブラの他にヨハネスお父様の菜園で収穫したたくさんの野菜が入っていた。ヨハネスお父様の顔が浮かぶ。
「食べるときまで涙は不要ですよ」
 お母様が隣に居座ってハンカチで拭ってくれる。ウルガーは席を取られて不満そうだ。
「こっち側はウルガーなんだから、いいじゃないの。たった三人よ。このどでかいテーブルに」
「母上は近いのに俺は遠い」
 うー、とウルガーがうなる。
「あとでまた髪の毛乾かせてもらうからよしとして」
 私が言うとアーダとお母様が必死で止める。
「こんな夜更けに男女が一緒なんて許しませんよ」
「夜更けってまだ夕方から夜にはいりかけた頃じゃないですか」
「ゼルマは純真だねー。よいよい」
 私の言動がなにを変えたのかウルガーが上機嫌になる。
「ウルガー、熱風機はアーダに預けなさい」
「わかってますよ。理性が吹き飛ぶ前にカシワの宮に帰りますよ」
 おどけた調子で言うウルガーに一抹の不安を覚える。
「聡明で大好きなゼルマ。大丈夫だよ。君の愛情で俺の頭に花が咲き乱れただけだから」
「え。またなにか殺し文句を言ったの?」
「自覚がないのですか? もう少し気にしなさい。ほら。冷めますよ」
 お母様が急かして私はまた、「頂きます」と言った。
 食事が進んでいくとタピオとクルヴァが飛んできた。後ろにヨハネスお父様がいる。
「二人が、デザートはここで食べると言ってきかないのだ。よいか? ベアトリス」
「あ。お母様の名前ね」
 つい、ぽつり、とこぼす。お母様の名はベアトリス・ティーア・ユングリングだったわね。そんないつもは考えたことのない事を思い出す。
「ゼルマ、いちいち人の名前を覚えなくていいよ。ややこしいんだから」
「確かにね。末の赤ちゃんも名前を聞いてないわね」
「それは今度教えてあげるよ。でも、あの姫、元の恋人の元へ戻せないんだろうか・・・。同盟でジジィとの婚礼なんて辛いよ」
「何か言ったか? ウルガー?」
 ヨハネスお父様がしっかりと問い返す。
「いーえ。これは今の件が終われば、の話ですから」
「今の件?」
「ゼルマは光の物語師の長だから戻してくれ、と言われているんですよ」
「ああ。そんな一族がいたな。つなぎを取って会えばいい。確か、大神官様は光の方の物語師の血を引いてるのではなかったか?」
 そう言ってヨハネスお父様はお母様を見る。
「ええ。たしか・・・。私は闇の方の血筋と聞いているわ。この宮廷に二人いることで均衡が保たれていると、と大神官様は仰っていたわね」
「両方いるんですか? なんでそれをもっと早く!」
 がしがしと私はお母様をゆする。
「ちょ、ちょっと。ゼルマ、落ち着きなさい」
 ウルガーが手を止めてくれていた。
「あ。ごめんなさい」
「いいのよ。あなたは今、心に闇を持っている。この闇を追い払うのは私達よ。あなたは、十分頑張ってくれている。私達も力にさせて」
「お母様」
 今日、何度目かの抱きしめようとする私をウルガーが離して腕の中に確保する。
「もう。ゼルマは母上のものじゃない。俺の奥さんだ」
「まだ、結婚してないわよ!」
「それでもいーの」
 子供っぽく甘えるウルガーが新鮮でつい甘えるのを許してしまう。それを下の弟と両親は見ていられない、とデザートを食べ始めていた。
「あー。デザート!」
「だーめ」
 デザートとウルガーの攻防が始まったのだった。

「・・・汝らの光の長としたければ城に来られたし。ゼルマ」
 と、宮殿のウルガーの書斎で添削を受けながら手紙を書く。どうやって届けるの? という問いは、大神官様の伝書鳩でできるとのこと。なかなか、侮れない大神官様。闇の方も呼んが方がいいかかと言ったけれど、大反対を受けた。私を追い出しかけているのに呼ぶ必要はない、と。危険すぎる、と散々、ウルガーからお母様、お父様にマティアスお兄様にダーウィットお兄様。おまけに大神官様までもが説教しだした。大神官様の説教の長さは新年の行事で痛感済み。あんな長いのはいやだ、と。とっとと手紙を書いて押しつけた。そしてキンモクセイの宮にダッシュする。その後をウルガーが追う。
 説教から逃げ出しただけなのに、いつしか追いかけっこのような遊びになっていた。タピオとクルヴァもどこにいたのか。いつの間にか鬼ごっこになった。
「鬼さんこちら。手の鳴る方へ~」
 鬼となってウルガーが手加減しながらタピオ達を捕まえていく。タピオ達はこの華の宮の構造をよく知っていない。すぐに捕まるのは明白だった。私はと言うと知り尽くした華の宮。するりするりと逃げる。不意に、背中が抱きしめられた。
「つーかまえた♪ もう逃がさないよ♪」
 頭に花が咲き誇ったウルガーがそこにいた。さっきは難しい顔をしてたのに。
「怖くないの? 光の長になったら・・・」
「そんな事はないよ。俺のゼルマだもの」
「えらく信用されてるのね。そう。私はどちらにも属さないわ。光も闇も一対。どちらかが強くても弱くてもだめなの。私はウルガーと新しい物語師の系譜を作る。光も闇も何もかも併せ持った無意識の世界を作り上げるわ。そのためにはウルガーの協力がなきゃね。跡継ぎができなかったら新しい物語師の系譜もできないもの」
 言ってから、えらく大胆な発言をしたと反省する。
「大丈夫。俺とゼルマならうまく行く。子供なんててんてこ舞いするぐらい生まれるよ。それが一人っ子の俺の理想なんだ。大家族に囲まれて過ごすのが」
「もう。大家族じゃないの。タピオとクルヴァが絆を繋いでくれたわ。あとはあの赤ちゃんねぇ・・・」
「ねぇ・・・」
「わ。タピオ! いたの?!」
「いたのってひどい。姉上。ずっとタピオはいたよ。兄上とらぶらぶしてるんだもの。鬼ごっこしようよー」
 タピオが手を引く。
「姉上と兄上、外が目に入らないぐらいだったね。僕にもそんな子ができるかな?」
 クルヴァが言う。出来るさ、とウルガーは言う。
「悲しみを乗り越えたあとには希望が残っているんだ。きっと出会える。俺とゼルマのように」
「姉上ー。兄上ー。今度はボールの当てっこしようー。アルミとヘレーネも一緒に!」
「わかった。アメリをつれてくるからボール取ってこい。固いボールはだめだぞ。痛いから」
「はーい。行こう。クルヴァ!」
 双子の兄弟が走って行く。元気そうな姿にほっとする。母を亡くした心細さも兄弟の絆で乗り越えてくれるだろう。周りにはたくさんの兄や姉、母や父がいるのだから。
「難しい顔しない」
 ウルガーが言って額に額をあてる。
「もう。ウルガーったら。真剣になるひまもくれないのね」
「もちろん。さぁ。アルミを迎えに行こう」
 差し出された手を私はしっかりとつかんだ。


あとがき+エッセイの勉強
狂っていた番号をアプリを使って一斉連番したので、時折、同じ話が残っていたりするので、この話が前の話? となった時は恐怖でした。間違えたー。と思えば、ちゃんと順番は合っていたのでした。

そしてやおらエッセイの勉強のエッセイ部分に入るとすると、ここ数日、意味もなく早起きです。朝活やーめたと手帳を放り出し、(約一ヶ月書いてなかったので無理をするのをやめた)ペンを収納しないとなぁと思っている矢先の二日間目覚まし前に起きるという。しかし、睡眠時間はとてつもなく短い……。今回の支払いが終わったところで一万円のプラスがでたので、これでタニシとスムージーのお金ができた。半分は医療費かもしれないけれど。機械オタクの血の反乱は収まったので、今度は頻出順を見るだけでなく、実際にテキストを持って行って進めようと思います。30日、地元行こうかなとは思うけれど人が多そうなので、京都まで行ってやってます。土曜日で晴れてたら絶対座れない。観光客の嵐は必須。マスカラも買えるぞー。でも、マスカラって何? 塗ってみたは意味がわからない。目が大きく見えるわけでもないし。アイラインは目に突っ込みそうで無理。アイシャドウから入るといいのかしら。相談しようっと。

しかし、ゼルマの話の年は何年目だ?春と夏ときてるけれど(新連載部分)ここでも春先の話が……。このほんの少しの時期の話に三十本かけてるの?年がいっそ変わってたらいいのに。長すぎる。

でも、ようやく春の見通しが。来年という言葉がしっかりと。日取りまで。なんの花のブーケにしようかなー。花言葉を調べて花屋の話を書いていたので知識と資料は多少ある。知識の総動員して書こうっと。もう。婚礼が間近でございます、その間にもあれやこれやとあるのですが。やっとここまできた。ほっ。これもラストが見えてきました。星の誓いを進めるのもしとかないと。次の連載は何になるんでしょうか。コンスタントに毎日かけるものがいいのですが、今のところなし。ユメという名の姫君の物語が純粋に恋愛部分が多い物語でこれの後継話でですが、また専門的になってとまってる。星彩が一番書きやすいけれどダンジョンとトラップが難しい。GTPさんとやってみたがハッシュタグに入りそう。神殿のトラップと踏破の仕方だけ教えてもらった。あとは自力で書いている。これも書き直しがいいかも。改訂が続きそうな予感です。

それでは朝の目覚ましがタブレットから鳴りそうなのでこの辺で久々の早朝更新を終わります。ここまで読んでくださってありがとうございました。


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