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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気がついたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(78)

 ふっと目を覚ますと夜中だった。足下を照らす常夜灯があるだけ。ふと、手に重みを感じてみれば、ウルガーが手を握って眠っていた。視線を動かすと書類があった。まさか、ウルガー、夜中まで仕事してここにきて守ってくれてるなんて。お姉様かお兄様から聞いたのね。申し訳なくてまた涙がでる。泣いちゃダメ。口をぎゅっとかみしめる。
「泣いていいんだよ」
「ウルガー」
「明日。虹の清水をもらいに行こう。寂しくてしょげていた、と聞いた。やっぱり、結婚しよう。こんなゼルマほっておけない。寝室を共にしなくても同じ空間で過ごせるようにしよう。せっかく元気になったのに。疲れさせてしまったんだね。みんなで。みんなのゼルマでであろうとして疲れちゃったんだよ。俺だけのゼルマになって。そして朝から晩まで一緒にいよう。一緒に食事して、遊んで、仕事して、恋人として過ごそう。バイオレットウッドの式は済ませたんだ。一緒の宮で過ごして悪いことはない。寝所を一緒にしなかったらいいんだから」
「でも。ウルガーが倒れちゃうわ。大丈夫。今の間だけよ。春祭りの準備になったら忙しくてそんな事考えている暇ないわ。ティアラも決めようとしてお姉様にアドバイスをお願いしたの。途中で泣き疲れてできなかったけれど」
 頬に涙が流れる。それをウルガーは唇で掬い取る。
「ウルガー。こそばゆいわ」
「俺の今の最大の愛情表現。ほら。予告なしのちゅー」
「予告してるじゃないの」
 ローズウッドのお盆を探しているうちにあっという間にちゅーになる。なし崩しになっちゃうのかしら……。流されながらそう思う。
「今夜は何もしない。姉上もそこで寝ているから。いつかお嫁さんになってくれた時にする。大事な俺のゼルマだから」
 思わず、心の底からウルガーと一緒にいたいと気持ちがこみ上げた。でも、言えない。ひたすら身を起こすと抱き着く。そして気持ちを落ち着ける。言っちゃいけない。こんなこと言えば、今からでも神殿に引っ張っていきそうだわ。
「ゼルマは偉いね。我慢するんだから。俺はもう我慢は嫌だけどね。ゼルマがいいと言うまで婚礼は挙げない。でも挙げたら覚悟するんだよ」
「な、なにの覚悟?」
「ひみつ」
 ふっとウルガーは柔らかい笑みを浮かべて額にキスする。
「はい。お休みのちゅー。フローラ姉上が眠れないと困るから俺はそろそろ出るよ。また、明日ね。ゼルマ」
「ウルガー。愛しているわ」
 私の精いっぱいの言葉だった。
「俺の永遠の愛をささげる相手はゼルマだけだよ。じゃ」
 書類を抱えるとまたウルガーはカシワの宮に向かったようだった。書類が大詰めを迎えているのだ。早く立案しないと間に合わない。それなのに私は我ままばっかり。ぽろぽろ涙がこぼれる。気づけばまたフローラお姉様が抱きしめていた。
「かわいそうなゼルマ。ただの恋人ならこんな我慢しなくてもいいのに。大人なのね。あなたたちは」
「お姉様……。わがままなの。私。そんな自分がすごく嫌。ウルガーは立派な王子様なのに。ふさわしくないわ」
 私の言葉にお姉様の声色がすこし変わった。
「自分を責めちゃダメ、って朝言われたでしょう? ゼルマはそのままでいいの。いっぱいいろんな人に愛情を上げたんだからもらって当然よ」
「お姉様、このベッドで一緒に眠って。広すぎて寂しいの」
「いいわよ。おとぎ話をしてあげる。眠り姫の話なんてどうかしら。何もしなくても王子様が来てキスをしてくれてあっという間に奥様よ。それぐらい楽な人生だとよかったのにね」
「そんな生活もいいわね。ねむってキスで目が覚めて結婚って。楽ちんすぎるわ」
「でしょ。今のあなたにふさわしいおとぎ話だわ。さぁ。目と閉じて。心を楽にして、おとぎ話をしましょう」
 お姉様の柔らかい声に包まれて安心して眠りに落ちていけたのだった。母とは強いのね。眠りに落ちる瞬間、そう思ったのだった。


あとがき
まさか、読んでくれる方がでてくるなんて。うれしくて本筋に戻っての掲載です。でも次はちっちゃな天気の神様との恋物語の続きを載せます。この後、ほんとどうしよう。やっぱチャットGPT様かしら。これも、千字単位に戻っているので(途中から二千字になっている)読みやすいかと。あらすじ書かないといけないわね。今日は一日寝てました。朝ご飯も昼ご飯も食べず。やっと野球で目を覚ます。つけたら才木当主打たれっぱなし。何が起こったと、目を覚ました。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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橘優月/切り替え完了/
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