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【長編小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(83)

前話

  こうして、ウルガーとの共同生活、もとい、同棲生活が始まった。でも、寝所は別々。周りは一緒でもいいんじゃないの? と言ったけれど、けじめはけじめ。あえて二人とも別々を選んだ。そのほかはいつもと同じ。食事も何もかも今までも一緒だったし、執務の宮もカシワの宮に常駐になっただけ。二人きりであまーい朝食なんてない。いつも、人が山ほど押しかけてきて大テーブルでお食事。その後は暇な時間だけど、春祭りの施策で、今は取り込み中。お兄様方に交じって私も協議に参加中。
 そう言えば、この間八百屋のおじさんおばさんに指輪を見せびらかしに行けば、「いまごろ?」と言葉をもらった。どうして誰もが、いまごろなの? ていう反応なのかしら。ずいぶん、遠い春だったのに。もっと早くにプロポーズされてたらお受けしてなかったと思うんだけど。不思議よねー。
「ゼルマ。物思いにふけらない。アルポおじいさんたちのことだよ」
「はーい」
 特等席の話と聞いて嬉々として参加する。気まぐれなんだから、とウルガーがぼやく。だって。審議の間中、難しい法律用語ばかり出して退屈なんだもの。わかりやすく説明してよ。いつの間にか転寝してばっかり。
「やっぱり、まだ、下町には行けないね。いくら衛生に気を付けて人を入れてもゼルマの窓枠理論とかいうものの効果は長期間待たないといけない。だから、今回は貴族も入らない、城門付近に特別席を入れる。警備はマティアス兄上を筆頭に選んでエーヴィー姉上にも協力を仰ぐ。子供の扱いには長けているからね」
 そう。託児所の前段階のベビールームが出来上がり、入れ替わり立ち代わり経験者がやってきて、子供たちを見守る。その中でも子供たちの一番人気はエーヴィーお姉様。子供の扱いがお母様以上かもしれない。本屋に集まる子供たちを飽きさせないことは確かだわ。
「下町の家からどうやって来るの?」
 簡単に城門付近には立ち入れない。
「入場券を首にかけてもらう。それは本屋で渡して、城門付近で見せる。子供の間者なんていないだろう。少なくともアルポおじいさんには見分けがつく」
「そうね。ティナも来られるの?」
「ゼルマが望むならね」
「もちろんよ」
 私を慕っていたティナは亡くなった。でもアルポおじいさんの言うとおりにあの日、本屋に行けばティナの妹のティナが生まれていた。ゆりかごに揺られて静かに眠っていた。面影がある。新しい命の誕生に私はうれしかった。あのティナはもういないけれど、また新しいティナが命の灯を付けた。大きくなればまた絵本を読んであげたい。
「ゼルマ。顔が崩壊している」
 はっと我に返って表情をひきしめる。
「ほう。ゼルマ姫は子供好きか」
「将来、跡継ぎとウルガーでゼルマを取り合うんだろう」
「当り前だ。俺のゼルマだからね」
「ちょっと脱線してるの専門家たちじゃないの。ティナは私が可愛がっていた子の妹なのよ。感慨にふけっただけ。さぁ、それで、必要なものとか資材とかどうなの?」
「椅子が必要だね。テーブルも」
「そんなのキンモクセイの宮でつかっているものじゃ足りないの? 一体何人呼ぶつもり?」
「今、アルポおじいさんに希望者を聞いてもらっている。みんな本当にお姫様と王子様なの? って必ず一回は聞くらしい。そんなに庶民に見えるかな?」
「庶民の服を着て行ってるから、庶民に見えて当り前じゃないの」
 そっか、とウルガーはつぶやいて考える。
「この件は、アルポおじいさん次第だな」
「そうね。それを聞いてからにしましょう。じゃ、私本屋さんにお使いに行ってきます~」
「ちょっと。ゼルマ~。執務になれないとー」
 ウルガーが追いかけてくる。
「聡明なゼルマ姫すらややこしかったか。この会議は」
 ダーウィットお兄様。
「議会は法律だけでできてますからね」
「俺も、もう限界だ」
 と、マティアスお兄様。後で聞くとこんな会話をしてその後の審議は途中になったらしい。私はと言えば、ヘレーネを連れて下町へ降りて行ったのだった。その後からウルガーがアルミをつけれて剛速球で追いかけてきたのは言うまでもない。途中で市場によってお母様の好物桃を買うのもしっかり忘れていなかった。ウルガーは奪われる運命の葡萄を懸命に選んでいた。子供たちのキラキラした目が思い浮かぶわ。私はウルガーと一緒にアルポおじいさんの本屋に向かった。


あとがき
久々の訳あり姫君。懐かしいわー。最近執筆してないので、また、一つ一つ始めないとなーと思います。ですが。登販の試験勉強が近づいています。もう200日切った。ほんとにしないと。キャンプで受験勉強してよかな。iPad持って行って。Wi-Fiあるので、大丈夫です。でも、パンケーキ作りで粉まみれになってそう。またAIにレシピ聞かなきゃ。持って行くモノとかほぼそれとYouTubeで知識入れてます。竜ちゃんに会いたくて必死でキャンプの勉強です。でも、何よりも、茶畑の中で満天の星空を見たいという本命もあります。来年の七月頃行きたいです。それまで経験磨くのみ。父と見たプラネタリウムを本物で見る。そんな夢を持って準備してます。でも、外に目が行くとなかなか執筆に行けなくて困ります。想像力が今欠乏中。現実ばかり見てます。夢を見ることは必要なのにね。どっちもできればいいな。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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橘優月/切り替え完了/
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