【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(80)
前話
「ゼルマ! パレードの道順を決めに行こう!」
「え? 昨日の立案は?」
「もう終わったよ。あとは兄上が判を押したら終わり」
「議会に通さないの?」
「うちのポケットマネーだからね。関係ないよ。ほら。早く」
ウルガーが引っ張るけれど、動けない。フローラお姉様から仔細を聞いたお母様が来て桃の皮をむいてる途中だった。
「ウルガー。危ないからしばらくお待ちなさい」
お母様が言ってウルガーが椅子を持ってきて皮をむく私をじーっと見つめる。
「う、ウルガー。どうしたの? なんだかうれしそうね」
見つめられすぎて恥ずかしい。
「それは後で。ほら。剝けた。母上、ゼルマを借ります!」
「ちょっと! ウルガー!!」
まるで子供のようなウルガーに引っ張られながら街を歩く。どこに特等席を設けるかやアルポおじいさんと子供たちがゆっくり眺めるにはどうしたらいいかとか、事務的な話をつづけるけれど、ウルガーは終始ご機嫌だ。そのうち見知らぬ道にきて目の前は何もない、原っぱに来た。
「ここ、よく城を抜け出してレテ姫と遊んだところなんだ」
「そう。思い出の場所なのね」
「で。こんな不誠実な他の女の子の思い出の地で渡すのもいけないんだろうけど、二人きりになれるのはここしかないからここでこれを……」
ウルガーがポケットの中から指輪を取り出した。ウルガーがすっとひざまずく。
「最愛のゼルマ姫。この指輪を受け取って私と結婚してください」
「け、結婚?!」
目を丸くしていると指輪がはめられる。
「こん……やく、指輪?」
「そうだよ。抜いて裏側を見てみて」
言われるままに見ると刻印があった。
”永遠の愛をここに刻む ウルガー”
ちょっとゆがんだ、ウルガーの文字。
「作ったの?」
「うん。鍛冶屋のおじさんに教えてもらって作った。石も俺が持っているブローチからとった」
「ウルガー! どこにそんな時間を持っていたの!?」
夜中まで立案にかかっていた人が。
「時間はどうとでもなるよ。で。答えは?」
「え? 答え?」
「求婚の答えだよ。ゼルマあたまの中真っ白なの?」
「あ。ああ。きゅうこん……求婚!? ちょっと待って春祭りは?」
「するよ。プロポーズをしたかったんだ。もう、待てなかった。毎日心が揺れている君を見たら寝所さえ一緒にしなかったらいいんだから、おれもキンモクセイの宮に引っ越そうと思ったんだ」
「どこで式を挙げるの?」
妙に冷静な自分が信じられなかった。あたまの中がぼーっとしている。衝撃の度合いがあまりにもすごかったのだ。
「そうだね。どこでしよう。神殿で軽い式をあげようか。身内だけで。ダーウィット兄上もそんな感じだっただろう? 国民の見るウェディングドレスを着る式は改めて挙げるよ。で、さっきから返事待ちなんだけど?」
「へんじ……。返事! もちろんお受けします、よ! 式なんてあげなくていいわ。恋人同士で同居する同棲というものがあるの。それをしたらいいんだわ。ウルガーと一日中一緒なんて夢、ゆめみたい……。あれ、涙が……」
意味合いが形になるとどっと涙があふれだした。この時を待っていた。ずっと。ウルガーに求婚されるのを。バイオレットの式があったのにね。ずっとほしかったものが分かって私はうれしくてうれしくて涙が止まらない。ウルガーがまた唇で涙をすくいあげる。
「ウルガー。こそばゆいわ」
泣き笑いの顔になりながら、私は言う。うるがーはちゅーの雨を顔じゅうに降らせて最後には私はもう我慢できなくてけらけら笑ってしまった。せっかくのプロポーズなのに。そんな私を上機嫌で見つめるウルガーだった。
今日はいつもの手ですみません。困ったら訳ありを載せる私です。動画作成を数日かけてしてるのですが、その時間もないです。なんせ、フリマで二つも売れて梱包に悪戦苦闘してまいした。家からモノがなくなるのはいいことですが、梱包の腕を上げたいです。あと一つ画像と思ってましたが、力尽きました。明日に響くので休憩します。ここまで読んでくださってありがとうございました。