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【連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(77)

前話

 大勢の夕餉が終わって、キンモクセイの宮に静寂が漂う。なんとなく、外を見てももう真っ暗で空に星が輝いている。フローラお姉様がアーダと一緒に世話をしてくれているけれど、今はちびっこ双子姫のお風呂。きゃっきゃとはしゃぐ声が聞こえるだけ。ウルガーも仕事で早々に上がってしまった。ふと、寂しい、という感情にとらわれる。
「ゼルマ姫様」
 アーダの心配そうな声に振り返って笑顔になる。
「大丈夫。ちょっとうるさすぎたのよ。頭が痛いの」
 そう言うと、アーダは急いで奥に行く。また頭痛を止める薬と冷たいタオルを持ってくるのね。そんなもので解決できればいいのに。大方の原因はわかっている。ウルガー欠乏症。どうして、こんなに恋しくなるのかはわからない。いろいろありすぎてやっと静かに過ごせるようになったら一人が寂しかった。一番通じ合うウルガーにそばにいてほしかった。
「恋煩いね」
「お姉様!」
「私もわかるわ。アウグストを思う時はすごく寂しかった。恋しかったわ。あなたたちは春が長すぎるわ。もう、婚礼を上げたほうがいいのに」
「お姉様まで」
「って?」
 他に誰が言ったの? という顔をする。
「お母様。もう、結婚しておしまいなさいと。ウルガーは地味婚は嫌だ、ってはねのけたの。私もこの状況で挙げるつもりはないわ。財政がひっ迫してるんだもの。復興に力をいれないと」
 お姉様が抱きしめる。
「苦労性ね。あなたも」
「ねぇ。お姉様もティアラを持っているのでしょう。お父様は王室出なんだから。ウルガーの好みじゃダメ、って言われているけれど、どれも同じに見えてよくわからないの。お姉様に、教えてもらっていいかしら。ティアラのことを」
「ええ。いいわよ。でもあのちびっこ姫たちをアウグストに預けるから少し待って。今夜は姉が一緒にすごしてあげる。最近ほったらかしにしてごめんなさい」
 お姉様がそう言って何かでお兄様に連絡を取る。お兄様はまだカシワの宮にいたのかあっという間に来る。
「今夜はここに泊まるわ。ゼルマが可愛そう。ひとりきりなんて。ちびっ子たちをお願い」
「いいよ。ゼルマ、なんて顔をしてるんだい。妻が一晩泊まったからと言って怒る兄じゃないよ。ゆっくりフローラと話してはしゃいでお眠り」
「お兄様」
 また涙がでる。おかしいわね。心の風邪は治ったはずなのに。
「また、みんながゼルマだよりにしてしまったんだね。大丈夫。フローラに慰めてもらいなさい。さぁ。アイリ、クラーラ。叔母様にご挨拶は?」
「おやすみなしゃい」
「うん。お休み」
 涙をぬぐって可愛い姪の頭をなでる。
「おかあしゃま。おやすみなしゃい」
 なぜ、フローラと別れて寝るのがわかるのか、クラーラがフローラに抱き着いていう。
「この子は、もう大人の会話を理解してしまうのよ。ゼルマにそっくりね。人を大切にしすぎてしまうのは。クラーラ。お母様は明日は一緒に眠るからね」
「あい」
 そう言って双子姫と父親は城の外の貴族通りの屋敷に帰っていく。私はその後ろ姿をいつまでも見送る。と、急に腕が引っ張られた。
「ゼルマ。ティアラを決めるわよ」
 強引に引っ張ってお姉様がカタログを取り出す。
「まぁ。今はこんなに素敵なものがそろっているのね。さぁ。ゼルマに一番似合うのをアーダもエルノーも呼んで見るわよ」
 え、と私はお姉様を見る。
「アーダ達は控えの間に寝泊まりしてるんだから一緒に寝ているのも同じよ。ひとりじゃないことを教えてあげるわ」
 ぽろぽろっと涙がこぼれる。泣くつもりもないのに涙がでる。
「そうとう我慢してたのね。見る前に泣きなさい。誰もいないから。元気なゼルマでなくていいのよ。病気したっていいのよ。ゼルマだって風邪の一つや二つはひくわ。気の抜けない生活ばかりで疲れたでしょう。支えるときにいなくてごめんね。ゼルマ」
「お姉様……」
 もう。声にならなかった。ずっと走り抜けてきた。たくさんの事件が起きていきつく暇もなかった。デートもろくにせず、恋愛のことも知らないままここまで来てしまった。せっかく大好きな人がいるのに深い話もできなかった。乾いた心に何かがしみわたっていく。お姉様の子守歌が心のさざ波を静かにしていく。いつの間にか、私は眠ってしまっていた。


訳あり姫復活ー。でも原稿が一話抜けている。普通につながると言うことはナンバー打ちの間違いかリネームで間違えたか。
やっと本筋に戻ってきた。結局ちびちびジュリーちゃん。おなかに穴が開いていてつつかれたか溶けたか。そんなに環境が悪かったのかと自己嫌悪。もう今いる子達で精一杯育てていこうと思ってます。落ち込んでねかなか寝れない。水カビ病を発症していたので、その関係か、どうなのか。音真空留守君を隣の水槽に移そうか悩んでます。全部、ものどけないと確保できない。おまけに動きが速い。うようよとコリがいるので間違えてコリ捕まえかねないほど。さくらに引っ越したので、あなただけ見つめている……。サイト制作中。Wordpressもアドレス変わります。一からの積み重ね。ほんと落ち込むー。寝れない。この話、あとであらすじも載せますので、明日はそれにかかりっきりかも。長すぎてまとめられない。オラクルも聖なる旅人~まではそろってるので、載せていきます。もっかショートショート連載群が人気。すぐ読めるからね。これも筋まとめないと。ここまで読んでくださってありがとうございました。

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