見出し画像

【長編連載小説】恋愛ファンタジー小説:気づいたら自分の小説の中で訳あり姫君になっていました(87)

前話

 クッキーは子供たちの胃の中へあっという間に消えた。余りの速さにびっくりして見ていると、小さな子が服の裾を引っ張っていた。
「どうしたの? おいしくなかったの?」
「ううん。おいしかったから、またつくって」
「え」
 リクエストが来るとは思いもしなかった。
「いいじゃないか。料理の腕も上がるよ」
 ウルガーが頭に花を咲き乱れさせながら言う。
「ウルガー。自分の分を食べてから言って」
「俺のは一人でちびちび味わうんだよ」
「おにいちゃんももらったのー?」
 じーっと子供たちの視線が集まる。
「にいちゃんのはだめ! 奥さんの手作りは旦那さんが食べるの!」
「おにいちゃん。結婚してるの?」
「これからよ。さぁ、絵本を読みましょう。どれがいい?」
 これ以上ウルガーに被害が及ばないように絵本のある本棚に向かう。
 こうしてウルガーのクッキーは守られたのだった。

 そうこうしている内に春祭りとなった。前日は宮殿総出で、花のラッピングだった。みんな寝不足だけど楽しそうだった。そして当日、眠い目をこすりながら厨房に向かう。厨房では人々に配るパンを焼いていた。そのラッピングにも人手がいる。その手伝いをしようと行くと、お母様がいた。
「若い娘がこんなところでラッピングなんてしてるんじゃありませんよ。春祭りを楽しんでらっしゃい。キンモクセイの宮に行けば準備万端よ。ほら。まわれ右」
「え? ええ?」
 お母様に背中を押されてキンモクセイの宮に戻る。そこには町娘の素朴な服を持ったフローラお姉様がいた。となりには町の青年と化したウルガー。
「ほら。ゼルマ、早く着替えないとデートできないよ」
「で、デート?!」
 目を白黒させてるとフローラお姉様がウルガーを外に追いやる。
「お着替えは目の毒です」
「ゼルマー。城門で待ってる!」
 そう言うと走っている足音が遠のいていく。
「ほら。さっさと着替える。お化粧はパレードでするから簡単にね。紅を差すぐらいでいいわね」
 言われるまま頭の整理がつかぬまま、着替える。鏡に向かわされ、いつもとは違う髪型になる。そして紅をさしてよし、とお姉様が言う。
「さぁ。若いんだからもっと楽しみなさい。はい、行った行った」
 背中を押され、城門へ向かう。ドキドキしてくる。お忍びデートじゃないデート。本当のデート。嬉しくてしょうがない。気づけば駆け足で城門に向かっていた。
「ウルガー! お待たせ」
 にっこり笑って前に立てば、ウルガーが突っ立っている。
「ウルガー?」
「可愛すぎて思考能力が止まった」
「まぁ! ウルガーだって男前よ」
 お互いなぜか褒めあってそれ以上に進展しないのでウルガーの手を引く。
「ゼルマ?」
「デートの時間が無くなっちゃう」
「焦らなくても大丈夫だよ」
 二人で城下町へ出る。城下町は春祭りにふさわしく花に満ち溢れ、活気あふれる場所となっていた。料理長もトビアスの花とパン配ってうれしそうだ。
「こんにちは」
「!」
「内緒のデート」
 口止めをにおわせて言う。
「よくお似合いで。それでは城のパンと花をどうぞ」
「ありがとう!」
 後ろのほうで店のチェックをしている隠れ王太子様はパンよりも運営に気持ちが行ってるみたい。
「ウルガー。もらわなきゃ損よ」
「ゼルマのを分けてもらう」
「お花はあげないからね」
「わかってるよ。その花、髪に飾ったらきれいだよ」
「手折るのはかわいそうだわ。トビアスが一生懸命育てた花だもの」
「じゃ、そこのベンチでパンを半分こしてそのあと、あの踊りの輪に入れてもらおう」
 少し離れた広場では音楽に合わせて若い男女が輪になって踊っていた。あの中に入れるの? わくわくしてきて目が輝くのが自分でもわかる。
「ゼルマ、可愛い。ちゅー」
 ばこん。
「どうしてここでもあるのー」
「お姉様が用心に持たせてくれたのよ。案の定ね」
 ミニローズウッドのお盆をしまう。
「もう。ほら。行くよ」
 ちゅーができないとなればさっさと踊りの輪に向かうウルガー。パンをしまって、後をついていった。そこでは陽気な音楽とともに若い男女が踊っていた。ウルガーに手を引かれてその輪に入る。はじめての経験だけど、振り付けは簡単であっという間になれた。何度も踊る。ウルガーの顔も喜びでいっぱいだった。こんなに笑顔の安売りされたら困っちゃうわ。
「ゼルマ?」
「そんなにニコニコしないで。ニコニコは私のものなの」
「ゼルマにしか笑ってないけれど?」
「ほんと?」
「ホント」
「じゃ、許す」
 めったにしない軽い言葉の応酬をする。気づけば、またベンチに座ってデザートを食べていた。次から次へと新しい体験がまち受けていた。私のここののところの心の闇がどんどん追い払われていた。
「ウルガー。もう少しで自分を取り戻せそうよ」
「難しいことはかんがえな~い」
 ウルガーが額をくっつける。目線があってにっこり笑いあう。
「もっと、ほかの場所も回りましょ」
「そうだね。じゃ、行こうか」
 ウルガー立ち上がって手を差し伸べる。その手をしっかりと手にとった私だった。


あとがき
若いですなー。うん。若い。この間一つ年を取ったおばさんとしてはうらやましい限り。だけど。若い子に交じってアバター付きの声配信のアプリ入れて見た。自分の小説を朗読できないかなーと思って。無理そう。でもSNSのもう一つ入れたのはこっそり悩み相談できるやつ。これで立ち直れるかな?キャンプができる友達ができるといいなー。でも匿名だから無理なのだろうけど。私も三番目のハンドルで入ってるから誰も知らない。インスタも柴ばかりになってしまって他の情報が得られない。それに何かと課金になるので使えない。小説を読もうなら900話もあってそれに毎回おカネをつぎ込まないといけない。読めるかーと放棄。ダイエットのきになるやつは自動的にサブスクになるらしいし。ピラティスだからいいと思ったけれどぼったくり。ただ、指導するだけで金取るなんて。画像示すのみなのに。あくどいなー。
あの人たちもあくどかったなー。明日立ち直って仕事行きたいです。これ終わったらトイレ掃除してお風呂入ってこ。それから、ナレーションする方法を考えてみよう。顔なしがいいんだけど。ポッドキャストになるんかな?
調べてみよう。その前に掃除とお風呂ー。

いいなと思ったら応援しよう!

橘優月/切り替え完了/
応援よろしくお願いします! 執筆とキャンプに生かせていただきます。