第百八十八回 Gt ヒロト|『月間少年HRT』vol.20

<特集>
仙台の小学校で行った授業「夢と仕事」について
「授業もライブも目の前の“あなた”に全力で、希望や光、未来を届けるのが僕のライフ」

<特別付録>
『ブラヒロト in 全国ツアー 〜レンズ越しの世界〜』


ーー最初に、毎日p.m.9:00にヒロトさんがテーマを出してTwitter上を賑わせている“アリス99チャレンジ”について伺いたいのですが、この企画をやろうと思いついた時、他のメンバーに相談はされたんですか?

してないです(微笑)。思いついたからやっただけで。結果を見てもらえればいいかなと思って。そもそもこれ、オフィシャルで始めちゃったら違うんですよ。

ーーそうなんですか?

うん。硬くなる。

ーー九組のみなさんのコメントが。

そうそうそう。ちゃんと書こうとしてしまうと思うんですよ。僕はそういう"余所行き"のコメントじゃなくて、“本音”が欲しいんですよ。

ーーオフィシャルのアカウントでやるよりも、個人のアカウントで行った方がみなさん構えずに書けるのではないかと。

そう僕は思うんですけどね。いずれはオフィシャルに移行してもいいとは思うんですが、スタートとしては「あ、またヒロトが思いつきで何かやってんな」ぐらいの方が。

ーーハードルが低いと。

みんなも「じゃあやってみよう」ってなるんじゃないかなって。

ーーそれでは、ここからは「Graced The Beautiful Story」ep.2〝Farewell Flowers〟について具体的に質問していきたいと思います。3月9日、ツアーの幕開けとなったSpotify O-EAST公演。この初日、ヒロトさんはどんな気持ちでステージに上がられていたのですか?いつもとは違う気持ちだったんでしょうか。

昨年クリスマスにやったライブ(「Graced The Beautiful Story」TOUR FINAL)のアンコール後、そこから繋がっている気持ちでした。エネルギー的にはそこに照準を合わせたって感じです。あのツアーから声出しも解禁して、すごくいいツアーでしたからね。でも時期的にはまだちょっと世の中的に気持ちは全開ではないところはあったと思うんですよ。だけど、今回はいよいよ世の中的にも声出し解禁がどんどん広がっていっている状況だから。

ーーさらにそこのエネルギーを拡大していこうと。

ええ。あとメンバー間でも、あのツアーで何かが動いてたんですよね。この先に“凍結”というものはあるものの、メンバー各々の中で、"今何かが動いてる"というのを感じられた。"凍結"を表に出したことによって、ようやくそれをファンの人達を含め、アリス九號.として共有できる状況になったので、自分の中では全部が続いてるんですよ。

ーー凍結発表前後で切り替わるとかではなく。

ええ。あくまでも「GRACE」というアルバムを軸にしたツアーだし。

ーーたしかにそうですよね。

それを軸に、今回はアリス九號.のこれまでのヒストリーをどう掛け算していくか。それが加わったツアーなので、自分の中では初日とはいえ、昨年のツアーから続いている感覚でした。

ーーなるほど。このツアー初日から、ヒロトさんが以前行っていた"フロア散歩"も遂に復活となりました。

そうですね(微笑)。人力特攻が。

ーー初日は1階フロアを制覇した後、2階まで突撃してましたね。

そうですね。あれはね、広い会場だとステージまで戻るのが大変なんですよ。その瞬間は1分、1秒の重みをひしひしと感じるんです。

ーーそうして、ステージではメンバー達が曲が終わらないかとヒヤヒヤしながら帰還を促すような表情でヒロトさんの帰りを待っているという。

あれがいいんですよ。あの「戻ってこられるのか、こられないのか…キター!」っていう瞬間が楽しいじゃないですか。

ーーそうですね。

実は、仙台で客席に入った時、すごくいい瞬間があったんですよ。仙台はフロアの後方に照明やミキサーのスペースとして、ちょっと高くなっているところがあったんですね。そこに小学生がいたので、そこまで突進して行って、一緒に盛り上がったんです。

ーー大喜びだったのではないですか?

はい。実はこの子は僕が招待したんですよ。というのも、仙台の小学校で「夢と仕事」というテーマで授業をしたんですよ。

ーーそれはいつのお話ですか?

今年の2月頭ぐらいですね。その学校で出会った子なんですよ。歳が離れてるのに、hideさんが好きで、僕と一緒だったんですね。だから家にモッキンバード(ギター)を持ってるんですって。

ーーまず、「夢と仕事」というテーマで授業を行った経緯から教えていただけますか?

このnoteでも話しましたけど、以前武蔵野大学で講義をした話をしましたよね?それを知ってた方がその小学校にいらっしゃって。「コロナもようやく落ち着いてきたので、今年卒業する6年生に向けて授業をやってもらえないですか?」とオファーをいただいたんです。仙台の学校なので、仙台市内で夢だったことを今お仕事にしている方、例えば、小さい頃にパン屋になるのが夢で、今実際に仙台でパン屋さんをやってる人とか、そういう人をゲストに招いて「夢と仕事」について授業をする、という枠があって。その学校で6年生を担当している先生の一人に、アリス九號.をずっと応援してくれている方がいて。その方が、僕のことを提案してくれたんです。それで学年主任の先生も「いいね」ということになって、その先生の提案が通って。それでオファーが僕のところに来たんです。

ーーそんなことあるんですね。

あるんですね〜(微笑)。そこからオンラインで、学年主任の先生を含めて3回ぐらい打ち合わせをして。学年主任の先生は「ぜひ来ていただきたい」と。なので、そこから校長先生に承諾を得るために色々とハードルがありまして。

ーーヒロトさんのプロフィールなどを提出したんですか?

それもだけど、当日授業でどんな内容を話すのか、それを書いた台本を提出しました。テーマの箇条書きだけではなくて、話す言葉を書いたものの提出を求められたので。知り合いにインタビューしてもらいながらそれを文字に起こして、台本を作って提出したんですよね。そうしたらそれ通って。

ーーすごいですね。それで授業をしに2月に仙台へ?

はい。仙台市内の学校だったんですけど、授業を通して出会ったのがその子だったんです。

ーー授業をやる時、ヒロトさんはスーツを着て行ったんですか?

いいえ。それでは行く意味がないと思ったので、バチバチにアリス九號.のヒロトで行きました。ギターも持って行って。

ーーさすがですね。

行く前に、その先生の生徒に対する気持ちとかを事前に伺ったんですけど、生徒達はコロナ禍で、この3年間不自由な学校生活を強いられ、ここ半年ほどは校庭も工事が続いて外できちんと遊べてない。授業もコロナが酷かった頃はリモートで授業に参加せざるを得ない状況の子もいた。給食は黙食。そんな生徒達に何か夢や希望になることを伝えてあげたい、と。それで“ヒロトさんが見てきて、子供達に伝えられることを話して欲しい”というお願いだったんですよね。

ーーしかも、先生の中に偶然にもアリス九號.を好きでいてくれた方がいらっしゃったというのがすごいですよね。

しかもその先生が、僕が行く前にアリス九號.のことを生徒さん達に話しててくれてたんですよ。

ーーそうなれば、なおさら。

アリス九號.のヒロトで行くしかないですよね(微笑)。それで、先生方から聞いた想いをアリス九號.のヒロトでよりその想いをブーストさせて、生徒達に伝えていくのが自分の役目だなと思ったんです。

ーー学校だとちゃんとスーツを着てないとダメだと言われそうなのに、そこも大丈夫だったんですね。

先生が頑張ってくださいましたし、僕もそこは頑張りました。打ち合わせの時とか、ものすごく丁寧にやりましたから。

ーーそこは抜かりなく。

ええ。それで、行った学校は6年生が160人いたので、80人ずつに分けて。多目的室で2時間ずつ授業をしたんです。自分の小学生時代は総合するといいものではなかったので、「ここの生徒達の中には過去の自分と同じような子も一人や二人は絶対いるだろう」と思ってたんですね。もちろん調子いい子にはより調子よくなってもらえることを伝えるんですけど、どん底にいるような気分の子には、少しでも一筋の希望になれる何かが伝えられたらという想いもあって行ったんです。それで授業を始めたら、さっきの子がすごく気になったんです。自分と同じような子が何人かいたので、積極的に話しかけたりして。その中でも特に気になってたんですね。でも、嵐のように2時間が過ぎていって。

ーーギターも弾いたんですか?

はい。前回の大学同様、挨拶がてらにまず弾きました。「こういう人だよ」と自分を伝えるにはギターを弾くのが一番手っ取り早いので。でも、さすがに朝8時過ぎに人前でギターを弾いたのはこれが初めてでしたけどね(笑)。

ーーそんな朝から?

そうそうそう。僕の特別授業に振り当ててあったのが1~2時間目と3~4時間目だったので。

ーー楽器を弾くとなると、一人では大変だったのでは?

そうなんです。しかも、最初にお手伝いをお願いしてた人が急用でダメになってしまったんですよ。それで助っ人として声をかけたのが、岩手で南部鉄器のエフェクターを作っているKGRハーモニーの福島さん。そうしたら「喜んで!」と来てくださいました。授業が全部終わった後、先生方が懇親会を開いてくれたんですよ。そこで「やってみてどうでしたか?」「気になる子とかいました?」と聞かれたので、気になってた子の話をしたんですね。そうしたら、その子は長期間体調を崩していて、やっと学校に戻ってこられた状況だったんですね。後日分かったことなんですが、その子のお父さんはライブハウスを経営されていて、それで家にギターがあったらしいんです。入院中にその子はhideさんを始め、ヴィジュアル系の音楽を知って、アリス九號.のことも知っててくれたみたいで。だから授業中も色々と話しかけてくれて、僕も授業を進める上で助けられたんですね。それで、その子の卒業式が僕らのライブの前日にあったんで、「もしよかったら」という感じでライブに招待したというのが流れです。

ーーそんな出会いがあってのご招待だったんですね。

はい。先生がオファーしてくれたことでその子とも出会ったので。同世代の子達よりも辛い経験をしているからこそ、ライブに招待することによって、何かちょっとでも希望になったらなと思って。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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