第百八十二回 Gt 虎|MOVIE TORAVIA「羊たちの沈黙」シリーズ分析&「THE FIRST SLAM DUNK」レビュー
前々からやりたいと思ってたんですよね。「羊たちの沈黙」シリーズの分析を。
やるならちゃんとこのシリーズを観返してからやりたいと思ってたんで、これまでずっと先延ばしにしてたんですが、映画のシリーズ4作、観てきましたよ。
期待してたからもう一回観たんですけど、観直してみたら思ったほどじゃなかったなというのが素直な感想です。
イメージと違ったなー。「羊たちの沈黙」自体は面白いんですよ。
これが最高傑作すぎるが故に、これが人気が出ちゃって。
この作品をどんどん深掘りしてその後のシリーズは作られてるんだけど。
今回観直したら、「あれ?これ深掘りするところを間違えてるところがあるな」って、少し思っちゃったんですよね。
まずね、シリーズの軸になってるハンニバル・レクターってそもそも、「羊たちの沈黙」を観れば分かるように、主人公ではないんですよ。
この作品の主人公は、FBI捜査官の女性(ジョディ・フォスター演じるクラリス・スターリング)なんです。
FBIという男社会に混じって頑張っている新米の、ちょっと気の強そうな女性捜査官をレクターが育てていく。
基本はそういうところから始まった物語なんですよ。
だけど、その後のシリーズを今回改めて観たら、シリーズを重ねるごとに、最初に伝えたかったことをどんどん取り違えてきてるなと思っちゃいましたね。
まず「羊たちの沈黙」が面白いのは、精神面を描いているというところなんですよ。
その重要な役割を担っていたのがレクターで。
一般人には理解されない犯罪者の心理を、犯罪者の立場からプロファイリングできる。
それがレクターの最大の強みだった訳ですよ。
シリーズではそのレクターにスポットを当てて深掘りをしていってるんですが、シリーズを最後まで観ても、結局レクターがなぜ人肉を食べるようになったのか、そのメンタル的なところがまったく描かれてないんですよ。
そこがめちゃくちゃ俺はひっかかっちゃいましたね。
「結局なんで人を食うんだよ」って。
シリーズ4作目の「ハンニバル・ライジング」を観ても分かんないじゃないかって思っちゃった。
普通に考えたら、「妹を食べてしまった」って、嫌じゃないですか。
しかも、それを大人になって言われるまで、本人はまったく気づいてなかったんですよ?
だからレクターは人の肉を食べることに対してトラウマを抱えていた訳ではないはずなんです。
妹を食べたヤツらを憎んでいただけなんだったら、むしろ自分から人肉を食べたりするのはおかしいと思うんですよ。
なのに、レクターが人肉を食べるシーンは映画に出てくる。
そこのプロセスの説明が無いままシリーズは終わるから、「なにこれ?」というのが俺の中には残ったんですよ。
深掘り違いなところとして、俺が最も気になったのはそこですね。
とはいえ「羊たちの沈黙」は、今回観直してもやはりよかったですね。
それまでって、こういう犯罪心理学的な映画って無かったんですよ。
これが新しくてヒットしたからこそ、その後色々プロファイリング的なものを要素として使った映画やドラマも出てきた感じだと思うんですね。
今回改めて観直して思ったのは、「羊たちの沈黙」はサイコホラーとかサスペンスホラーとか言われてますけど、どちらかというと、これは刑事ものの映画だったんだなと感じました。
僕の印象としては、もっとホラーな作品だと思ってたんですが、改めて観るとそんなことは無かったですね。
初めて「羊たちの沈黙」を観たのはテレビのロードショーなんですよ、多分。
その時、親が「怖い、怖い」って言ってたのを憶えてるんで、そういう親の言葉に洗脳されてホラー映画なんだと思って、その当時は観てたところがあったんですよ。
でも大人になって改めて観ると、全然ホラー映画ではないなと。
胸クソ悪いなってところがあるだけで、特にホラーなシーンがある訳ではないですし。
むしろ、今TVで放送したら、何一つ怖くないんだろうなって思いましたもん。
逆に、こういうプロファイリングを使った刑事ものの作品、日本のドラマにありそうだなと思ってしまいました。
「羊たちの沈黙」はポテンシャルの高い作品だったにも関わらず、主人公ではないレクターの方が話題を集めて人気になってしまった。
そこに制作サイドが目をつけて、「これはレクターでいけるぞ」と踏んでシリーズを作っていったんでしょうけど。
「羊たちの沈黙」の中でレクターが出てくるシーンって、実はそんなに多くないんですよ。
なのにシリーズ化に踏み切るだけの人気を集めてしまったのは、レクターを演じたアンソニー・ホプキンスの演技の巧さがあったからこそで。
あのサイコパス感を出せるのは、この人ならではじゃないですか。本物の犯罪者っぽいですもん。
そうして、ウチら一般人には到底理解できない、気が触れた人の考え方。
そこをレクターが分析していくところは、観ていて気持ちいいなと思いますよね。
そのレクターの分析も含めて、「羊たちの沈黙」では、連続猟奇殺人犯(テッド・レヴィン演じるバッファロー・ビル)が、自分が殺した女性達から剥いだ皮をミシンで縫い合わせて、それを着て自分を変化させたいという気持ちになってしまった犯罪者のすごい心理が、ちゃんと描かれてるんですよ。
なのに、これがシリーズ3作目の「レッド・ドラゴン」になると、そういう深さも何も無くなっていって、これは有り得ないだろうと。
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アリス九號.オフィシャルnote
限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…
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