電子書籍元年❓



2012年6月26日、午後11時のNHKラジオニュースで、アマゾンが、ついに太平洋のこちら側でも、電子読書端末を発売すると伝えていた。翌々日の28日、今度は、グーグルが台湾のメーカーと組んで、タブレット端末を売り出すとラジオは伝えた。

また、カナダのベンチャー企業の開発した端末も、近く、楽天が売り出すという。この、コーボーという電子書籍配信会社は、この国のネット通販の大手、楽天が2011年11月に買収している。

読書専用の機器は、携帯電話がこれほど普及しているこの国では、普及しないのではないか。

狭い室内の家具や電化製品に囲まれて暮らしている日本人には、蔵書のためのスペースがいらなくなるので、重宝な製品なのは間違いがないのだが。

電子書籍は、米国で売上全体の2割、英国では1割までを占めるまでに成長してきたが、フランスでは、まだ3%にとどまっている。これは、アップル、アマゾン、グーグル、マイクロソフトに代表される英語帝国主義を苦々しく感じているフランス人が多いせいだろうか。

フランス人は、慣れ親しんだ紙の本への愛着が強いのだろう。おそらく日本人も、この愛着から逃れるのは無理ではないかと思う。

少なくとも、紙の本の内容をそのまま端末に流し込むだけでは、画面で読書する習慣は、この国では根付かないと筆者は見ている。

青空文庫には、すでに1万5000を超える作品が掲載されているので、著作権の切れた、これらの膨大な数の電子書籍を読む人は多くなるかもしれない。

だが、ネット上に只で読めるものが、これほど溢れかえっているのに、お金を出してまで、画面で読書を楽しみたいと考える人が、はたして大勢いるのだろうか。はなはだ、疑問である。

画面での読書は、紙の裁断、印刷、製本、配送といった手間がかからないので、読者参加型のものを工夫すれば、案外、端末の普及が進むかもしれない。

たとえば、原稿用紙120枚に相当する小説を執筆するとき、最初の20枚をプロの小説家に書いてもらい、残りの100枚で、続きを書き上げるように、コンクール形式で募集するのである。

最優秀作を選ぶのも、読者投票にすると、かなり盛り上がるのではないだろうか。ひとつの小説の創作に、間接ながら自分も関係したと思えるからである。

あるいは、100枚のアドベンチャー・ゲーム形式の小説を作り上げるとき、全体の構想をプロの小説家にまかせ、ひとり10枚の執筆を10人に任せるというのはどうだろうか。

このときも、どれを採用するかは、読者投票にすればよい。寄せられる投稿があまりに多いときは、間に編集者がはいって、候補作を10本に絞ることもできる。

年齢を小学生、中高生、大学生以上と分けても面白いかもしれない。小学校と中学校では、国語の時間に競わせてもいいだろう。

妄想をもっと膨らませると、これを全世界規模で開催することは、できないだろうか。共通言語はどうしても英語になるが、非英語の作品は翻訳家の力を借りればよい。

これだけ、世界が狭くなり、ネット人口が多いことを考えると、必ずしも、見果てぬ夢だとは言えない。


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