元カレみたいな男・中井大介
別れてから、「あー、やっぱりわたしはアイツが好きだったんだ…」という、"失ってわかる大切さ"みたいな話は、野球の世界にもあるらしい。
わたしにとっての"アイツ"とは、10月26日、巨人から戦力外通告をうけた、中井大介のことである。
1989年(平成元年)生まれの29歳。三重県立宇治山田商業高校から2007年高校生ドラフト3位で巨人に入団。ちなみに同級生に中田翔や丸佳浩などがいるが、プロ野球界で平成生まれの第1号ホームランを放った男は、なんとこの中井さん。さらには2015年シーズンには球団第83代4番打者を務めた男だ(ただ4番に座ったのはその1試合限りであったが)。
昨季はキャリアハイとなる90試合に出場、打率.249 本塁打5をマーク。期待がかかるプロ11年目となる今季だったが、70試合で打率.186 本塁打1、と期待に応えられたとは言い難い成績だったから、戦力外は仕方ないか…と思うところはある。
しかも期待に応えられなかったのは、今年だけではなかったから、正直「あー、その時が来ちゃったか…」という気持ちだった。
とはいえ、中井さんが嫌いだったわけじゃない。むしろ好きで応援していた選手だ。だからこそ、いろんな感情が湧き上がってしまうのだ。これが嫌いな選手だったら、あっさり「まぁ、そうだよね。この成績だし。」と思ってしまっただろう。
中井大介に惚れた理由
チームの主力ではない中井さん惚れた背景をお話ししたい。
きっかけは、数年前のとある試合前練習見学。
その日、練習用の半袖シャツで練習をしていた中井さん。シャツの袖から覗く太く逞しい筋肉隆々の二の腕。これこそが惚れポイントだった。まさに一目惚れ。可愛らしい顔とは裏腹に太い腕っ節。「こりゃ当たったらすごい、ってやつかな」と思った。
さらに中井さんラブを加速させる出来事が2017年9月26日に起こった。
セントラルリーグ 巨人対ヤクルト第24回戦。7番でスタメン入りした中井さんは、4回に2017シーズン第5号となるソロホームランを放った。
これが、球団史1万号のメモリアルアーチだった。第1号から80年以上、歴代のG戦士たちが積み重ねてきた1万号は誰が打つのか。みんながソワソワしていた。やはりここは坂本か?それとも国際試合など目立つ場面でお馴染み小林か?色々な予想が渦巻く中、打ったのはまさかの中井さん。
こんな展開、誰が予想しただろうか?わたしだって、まさか中井さんだとは1mmも予想してなかった。なんだったら、その日のスタメンだってことすら。
この、予想を(いい意味で)裏切ってくる感じに、言語化できないゾワゾワとした魅力を感じてしまったのだ。
とはいえ、何年も期待に応えられない姿にモヤモヤしていたのも事実。中井さんへの期待が大きいからこそ、それに応えられない姿に、イライラはつのる。今年は「いい加減打ってくれよ!」という気持ちが先行し、「好き」という感情に陰りが出ていた。
中井さんの戦力外で嬉しかったこと
眠れる大砲は眠りから覚めることなく、ついに戦力外通告。球団公式ツイッターでも中井さんの戦力外が伝えられた。
2軍暮らしが続いた選手が戦力外になると予想していたわたしにとって、それは驚きのツイートだった。そんな中、ふと冷静に「他の人は中井さんの戦力外をどう思うんだろうか。」と思った。
なぜ普段なら気にもしない他人の反応を知りたくなったのか、自分でも明確な理由は分からない。だけど心のどこかで、自分と同じように"中井さんに期待していた人"を見つけたかったんだと思う。
「戦力外は当然の結果だ」という厳しいコメントで溢れ返ってるかもしれない…と腹をくくり、戦力外を報じた球団のツイートへのリプライを読めるだけ読んでみた。
しかし、そこに溢れていたのは、「好きだったから残念」「まだやれる」「手放すのはもったいない」など、中井さんへの愛に満ちたコメントの数々だった。
そういうコメントで喜ぶ自分を見て、「あ、中井さんのこと、好きだったんだな」って思い出した気がした。
厳しいコメントがなかった、と言えば嘘になるが、それでも同じように中井さんを応援する人と気持ちを共有できた気がして嬉しかった。
中井大介が辿る移籍ドリームとは?
とはいえ、これからどうあがいても来シーズンの巨人に中井さんの姿はない。だったらこれからの楽しみを見つけるしかない。そう、それは次の球団での開花だ。
それはまるで、大田泰示(現 日本ハム)のような移籍ドリーム。
期待されて高卒で入団して、でもなかなか芽が出なくって。何度も何度もアピールチャンスがあったけど、うまく結果が残せなくて、1軍と2軍を行ったり来たり。ある日突然違うチームに行け!と言われ、行った先で才能開花。
大田さんが築いた移籍ドリームの足跡を、これまで似た境遇であった中井さんにも辿ってほしいと切に願っている。
-10月20日、トライアウトを経て、中井さんのDeNA行きが決まった。DeNAのユニフォームが妙に似合っていて、ちょっと複雑な気持ちではあるけれど、まずプロ野球を続けられることがファンとして素直に嬉しい。来シーズンは中井さんがDeNAの主力選手なんてことがあるのだろうか。
実は密かに、大田さんのように巨人戦で華麗なホームランをかっ飛ばしてくれないか、とやっぱりここでも中井さんに期待してる自分がいる。ましてや同じセ・リーグ、対戦の機会も多い。今から楽しみで仕方ないのだ。
チームは変わっても、やっぱりまだまだ中井さんから目が離せない。だって、わたしが好きなのは 巨人 中井さん ではなく、 野球選手 中井さん なのだから。彼の物語は横浜に舞台を移し、まだ続く。
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