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The Best Movie 5 of 2024
2024年、ドラマもふくめて旧作新作問わず見た作品は114本でした。今年はなんだか仕事でバタバタしていたり、夏が暑すぎて外出できなかったりとほとんど映画館で映画を見なかったような気がします。来年こそもっと映画館へ行きたいという希望。そしてあまり映画館へ行かなかったのは絶対に見たいと思う作品も少なかったように感じる。年始一発目は、エメラルド・フェネル監督『Saltburn』に始まり(劇場公開スルーなのは一生恨みたい)、最後に見たのはキム・テヤン監督『ミマン』でした。
パスト・ライブス/再会(セリーヌ・ソン監督)
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愛は現在からどこか、またはあっというまの幸福に導いてくれる救世主にはならないし、唯一の正しい道でもなく、これまでの人生が間違った道だったと糾弾することもない。いつでも選択の積み重ね。そしてその選択によって築かれた現在、いま・ここにいることを祝福する。
Shirley シャーリイ(ジョセフィン・デッカー監督)
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ジャクスンの小説世界に迷い込んだような幻惑的な映像と感情の起伏が激しい予測不可能な主人公像は、ひとりの作家のアンビバレントで肥大化する自己の深淵を垣間見せられ、つかのま彼女の心理世界を疑似体験させてくれる。女同士のエロティックな関係、秘密、若い女性の自己覚醒のゾッとするような過程を描き出し、道に迷った少女たちが正気を失うまでを描いた作品だったのではと思っている(でも、男権的な世界で正気でいることが狂気と同義だった時代に、狂ってしまうことは必ずしも不幸にはならないとおもう)。家に縛られた女たちの共犯関係は、男たちを尻目にねじれた関係に発展し、壊され、なんとか生きていく。
Here(バス・ドゥヴォス監督)
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一瞬の邂逅が1カップのスープのように人生を温めてくれる。そんな経験をした。“Here”、この瞬間をとても大切にする。何度も訪れる瞬間の強さと過ぎ去っていく脆弱な美しさを併せ持った完璧な1作だった。
アニエスV.によるジェーン B.
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ジェーン・バーキンとアニエス・ヴァルダ。ひとりは時代を象徴するファッションアイコンであり、もうひとりはいち早く女性性に重きをおいた映画を撮った先駆的な映画監督。最高のコラボレーションだ。イメージは思いもよらぬところに飛躍し、突飛でいて驚かせもするが、ふたりの女性アーティストが互いのメモを共有して、共同作業をしていくという過程すらも収められたこの映画は、一方的な視線によってまなざされ、ミューズとして永遠に生きさせられてしまう女性性というこれまでの創造の構造に異議を唱えるものであり、まさにさまざまな男性のミューズとしてまなざされてきたジェーン・バーキンという人間を「永遠に」置き去りにしない意志を感じさせる。ヴァルダが捉えるジェーンは、つねにくるくるまわり、怒ったり、戸惑ったり、笑ったりしている。このときこそ、ジェーンの魅力が爆発するのだといわんばかりだった。(ジェーンも「完璧」よりも「不完全」なほうが魅力を感じると答えていた。)そのイメージが強烈に頭のなかに張りついている。
SUPER HAPPY FOREVER
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あっという間に過ぎ去ってしまう「幸福」、そのキラキラを閉じ込めようとしたら、その煌めきの手触りだけが残されたような、寂しくて温かい一作だった。事象ばかりのこの世界で、記憶はとても頼りないものかもしれない。しかし、どこかで記憶は、形を変えて存在している。凪がかつて歩いた路地を佐野が歩く姿を観て、そうおもった。かつての日々に戻ることはできなくても、きっと永遠に失われることはないのかも。そうであってほしい。太陽に照らされた海面の美しさは永遠だった。
!次点・・・ヒューマン・ポジションとBut I'm a Cheerleader、チェレンジャーズ
『But I'm a Cheerleader』、ほんとうに素敵だったのでDVDスルーしてないできちんと公開されてほしいという気持ちが強まった!(GO!GO!チアーズという邦題は変更してくれ)。だれか。
!ドラマ・・・アガサ・オール・アロング
まったくもってマーベル関連を通ってきてないのだけど、魔女が活躍する魔女作品と聞いて見て、終わった後に「ワンダ・ヴィジョン」も見たりしておおいにたのしんだ。
来年はすこぶる『ウィキッド』に期待。