【読書記録】傲慢と善良

映画化された本。本の題名だけ知っていて、気になっていて読もうと思っていた。先日本屋さんに立ち寄ったとき、作者を見て心が躍った。
最近読んでいる辻村深月先生の本だった。元々読む気だったけれど、読む時期が早くなったことを確信して、私はその場で本を手に取ってレジへ向かった。

事前情報なし、本の裏表紙をさらっと見た程度で、完全に著者が好きだからという理由で買ってしまった。
読み終わった今、まさかの恋愛ミステリーだと思わなかった。裏表紙と本の帯を見ればびっくりするほど「恋愛ミステリー」と書かれている。
このことから、本を買った当時の私はかなり”心ここに在らず”の状態だったことを痛感した。我ながら恥ずかしい。

恋愛ものは得意ではない。得意ではないけれど、この本は読み切れた。
読み切れたという表現はあまり良くないけれど、個人的に題材は苦手なほうのものだった。けれどそれでも読み切ったこと、夢中で読んで半日かからなかったこと、それを踏まえると良い本だと思った。
恋愛に重きが置かれているわけではない感じがした。
登場人物の視点、心の声、その場の情景など、そういったものの書き方が本当に好きだった。

読みながら話の方向性がなかなか掴めず、中盤あたりからガラッと空気が変わって読むのが止まらなくなってしまった。そして視点が変わってからも止まらない。
本の中で時の経過を、もう一度別の人で見直す。これだけでこんなにも見方が変わるのか。毎度毎度、この展開は心が高ぶって興奮する。
最初は好きになれなかった2人が、最後にはなんか好きになっていた気がする。好きというか尊敬というか、人として見れるようになった。
私がすきなのはよく考えて成長する人たち。それが読んでいくうちに分かって、自分への教訓にもなっていった。


個人的に、恋愛での「ピンとこないの正体は、その人が自分につけている値段(点数)」という言葉が印象に残っている。
自分の値段に相手が合っていなければピンとこない。

「ささやかな幸せを望むだけ、と言いながら、皆さん、ご自分につけていらっしゃる価値は相当お高いですよ、ピンとくる、こないの感覚は、相手を鏡のようにして見る、皆さんご自身の自己評価額なんです」

p.137

本当にそう思っていたけれど、こうやって言葉にされるととても残酷な気がした。でもこれが現実。なんだか面白いなと思った。
この後読み進める中で、真実(まみ)の心の葛藤を見て、別にそうでもない、それでいいじゃないかとも思った。
理想が高いとか、それは他人が他人に言うべきことではないと思う。それこそ傲慢。これは私の意見。

最後に、個人的にはエピローグはない方が好みだったかも、と思ってしまった。納まるところに納まったので綺麗な作品ではあったけれど、本当に個人的な趣味でいうと、綺麗すぎてもっと余韻に浸りながら考えたかったなぁと思いつつ…。
この展開と、このストーリー、このラストは確かに映画になると美しいだろうなぁと思った。本を読み終わった後、映画を見に行く予定はないけれど、本を読むのが苦手な人には映画を見てもらいたい。そして感想を教えてほしい。と思った。


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