旅#01 和紙のふるさと小川町
2024年11月某日
私たちは、一年のご褒美旅で埼玉県比企郡小川町へ行くことに決めた。
小川は彼が見つけてきてくれたすてきなまちだ。
今年の5月には「分校カフェMOZART」へ行った。
里山に囲まれた趣のある木造校舎で食べるごはんは
最高においしい。
地元の有機野菜がふんだんに使われたランチをいただき、
私たちは小川町に魅了されていった。
さて、本題に戻るが、
今回の旅の大きな目的は二つ。
「紙漉き体験」と「まちやどツキ」
「まちやどツキ」は、街道沿いに面した広々古民家をリノベした一棟貸し宿。
なんといっても、槻川に面しているお風呂場から夜は月や星を眺めることができるというのが贅沢な宿。
「紙漉き体験」は小川町和紙体験学習センターへお邪魔することに。
小川では楮だけを使った「細川紙」が主流となっていて、重要無形文化遺産にも登録されいる。
ものづくりが好きな私は、小川に行くことが決まってから
まだかまだかと12月3日を心待ちにしていた。
2024年12月3日
ついにこの日がやってきた。
小さめのキャリーケースとわくわくする気持ちで
私たちはアパートを出た。
冷たい澄んだ空気が漂うけれど、暖かい太陽の光が降り注ぐ冬晴れの日。
電車に揺られ、お昼ごろ小川駅へ到着。
山を背景に学校で子供たちが外周マラソンをしている。
平日の静かな日常風景。
腹が減っては戦はできぬ。ということで
腹ごしらえに「おがわ食堂」へ向かう。
駅前通りにある、ガラスブロックとかわいいイラスト看板が目を引く外観。
扉を開けるとまず目につくのが梁みせの大きな吹き抜け。
Rの壁が高く立ち上がっていてとても印象的な空間。
私たちは窓際の席へ座った。
彼は「なすとモッツァレラのトマトパスタ」を、
私は「スモークサーモンとアボカドのニョッキグラタン」を注文。
ぐつぐつ熱いうちにいただく。
一口食べて思わず「うまっ」とつぶやく。
感動してすぐさまお互いシェア。
今まで食べたことがないくらいもちもちのパスタとニョッキ。
実は次の日も本気で行こうかなと迷ってしまったくらい、
おいしかった。(次また来る理由を残すため、2日連続は断念)
あっというまに完食し、食後のデザートもいただくことに。
チーズケーキとコーヒー。
彼はカフェラテ。
こちらは言わずもがな、おいしい。
お腹も満たされたので、少し散歩をして宿を目指すことに。
日が落ちてきて空の色が赤く染まってきたころ。
私たちは「まちやどツキ」に到着した。
川の対岸には紅葉した樹々が夕日に照らされ
伸びをしたくなるような景色が広がっていた。
今回は、小川の有機野菜セットプランで予約をしていたので、
その食材たちを使って晩御飯にすることに。
裏の勝手口(土間)から川に出られる導線がすごくいい。
ここに住めたらどんな暮らしができるのだろうと
妄想がとまらない。
あっという間に日が暮れて、夕食を食べる時間に。
小川の有機野菜をふんだんに使った鍋とカブのソテーをいただきます。
次の日。
昨日よりも風が強く肌に刺さるような寒さ。
川の流れが速く、水面がきらめいていた。
朝ごはんは昨日の鍋の残りと平飼い鶏の卵かけご飯を。
あっという間にチェックアウトの時間が来てしまった。
名残惜しいけどまた来ようという気持ちで宿を出た。
2日目はもう一つの大きな目的「紙漉き体験」をする日。
その前に少しだけ「わらしべ」で少し休憩することに。
チャイとサツマイモのアイスをいただくことに。
甘さを自分で調整できる、やさしい体が温まるチャイ。
2階には民芸作品の販売店が入っていて、可愛い雑貨やアクセサリーがたくさんあった。
体も温まり、ついにお目当ての紙漉き体験の時間が来たので
最終目的地、小川町和紙体験学習センターへ向かう。
冷たい風にあたりながらわらしべから数分歩いて到着。
1936年に和紙の研究施設として建てられた歴史ある建物らしい。
ピンク色の塗装がとてもかわいい。
講師の方に誘導され、さっそく紙漉き体験をはじめることに。
工房の近くに進むと独特な香りが漂っていた。
のちに教えてもらうのだが、この香りは原料をトロトロにするためのトロアオイを保存するための防腐剤の匂いらしい。
小川の和紙は楮を原料としている。
皮をどこまで割くかによっても、出来上がりの風合いが変わってくる。
たくさんの工程を経てやっと紙漉きができるようになる。
むしろ、紙漉きの前段階がとても長い。
手間暇かけて出来上がっているということが改めてわかる。
繊維は割きすぎると強度がでなくなり、和紙の風合いも減る。
紙漉きにはネリが重要で、このネリの役目を果たすのがトロロアオイ。
繊維を均一に分散させたり、繊維を簾にへばりつかせるような働きをするという。
今回は、すべて紙漉きまで準備をしていただいて漉きの体験のみのコース。
さっそく、職人さんに実際に教ええもらいながらやってみる。
見ているよりずっと難しく、体力も使う紙漉き。
特に横にゆする動きは慣れるまで時間がかかりそう。
漉いた和紙は機械で乾燥し、後日郵送で送られる。
楽しみがまた増えた。
他にも素材や工法がたくさんあって、仕上がる風合いが変わる。
和紙の世界は奥深い。
また、行こう。