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LHTRPG 戦士職の「硬さ」とその崩し方

この記事はログ・ホライズンTRPG(以下LHTRPG)における戦士職の「硬さ」とは何かという分析と、それに基づいたそれぞれの崩し方についてyu-jinの私見を述べたものです。

はじめに

LHTRPGのオンラインサポートサプリメント、ログホラ・ウェンズデイ23において、「戦闘遭遇において目指すのは「危険を感じさせる」ことであり、「決定的な危険」ではない」とされている。
少なくともLHTRPGにおいて戦闘はそれを目指してデザインされていると見るべきだろう。(ユーザーがシステム開発者の意図をどこまで意識的に踏み越えていくべきかどうかについては議論の余地があるが、少なくともそういった問題は本記事では扱わない)

「危険を感じさせること」、つまり「主観的な危機感」はあくまでも個人の体験であり、どちらかと言えば数値より「これ不味いんじゃないか」という漠然とした不安にもとづく。予測しきれない状況の中、何か致命的なものが含まれているのではないか、自分の持つ能力では対処しきれないのではないか、そういった不安こそがこれらを沸き起こさせる。その意味では処理しきれない情報の飽和攻撃は一つの手段ではあるだろう。

一方で、「ゲームである以上、キャラクターは常に何らかの選択と取引で成立するものであり、傾向を持つことは避けられないこと」を利用しても不安は与えられる。
つまり、そのキャラクターの苦手を突くように戦場をカスタムすればよい。
とはいってもシナリオ制作のレベルから特定の構成と相性が悪いエネミーや戦場をデザインするのは、そのシナリオが単にそれと相性が悪いだけになってしまう。
また、あらゆるキャラクターの弱点を突くようにデザインすることは不可能ではないだろうが、それは単に煩雑なデスシナリオなのではないだろうか、とも思う。

そうした問題を乗り越え、PLとの合意の上でエネミーにPCの弱点を突く「っぽい」挙動をさせるためのカスタムを、現場でGMが行うためのツールがGM因果力であり、調整用のGM用EXパワーだといえるだろう。

戦士職の「硬さ」の分析とその崩し方

そもそも、LHTRPGにおいて、戦士職の「硬さ」はおおまかに
 ①「防御判定の成功率」
 ②「防御特技の有効性や豊富さ」
 ③「防御力や軽減などの恒常型ダメージ減衰能力」
 ④「HPの多寡とその操作能力」
という四つの領域が絡み合って成立する複雑な能力だ。
その戦士職がどの領域を主に活用してその「硬さ」を担保しているのかによって、弱点は異なる。

①「防御判定の成功率」とその弱点

「防御判定の成功率」は武闘家が得意とする領域だ。また《流派:火閃絶刀》を取得した武士がこれを伸ばすビルドもある。
どんな強力な攻撃であろうと避ければダメージを0にできるので、ほぼ最強の防御能力だが、いかんせんその起動は確率によるので安定性があまり高くない。
これに大きく依存しているタイプの「硬さ」は、[惑乱]や[放心]、また因果力を注ぎこんだ高命中値の攻撃の前には崩れていく。GMEXパワーは使わないで命中判定に費やすか、命中した瞬間に大きな被害をもたらす《変異型の個体》の《メガアタック》を握っておくと危機感を覚えさせやすくなる。

②「防御特技の有効性や豊富さ」とその弱点

「防御特技の有効性や豊富さ」は両手武器を装備した武士や守護戦士が得意とする領域といえる。《カウンターブレイク》や《クールディフェンス》、《刹那の見切り》などの回数限定付きのダメージ減衰特技をどれだけ握っているかであり、任意で起動できるのが最大の強みと言える。
これによる「硬さ」は、(《アイアンバウンス》や《ハードボディ》以外)結局のところ回数限定の無敵カードだ。攻撃される回数が多ければ崩れやすい。《配下エネミー追加》や《エネミー増援》、《断末魔の救援要請》、《変異型の個体》の《ウェイクアップアクション》などでエネミーの攻撃機会を増やしてやると危機感を抱きやすくなるだろう。

③「防御力や軽減などの恒常型ダメージ減衰能力」とその弱点

「防御力や軽減などの恒常型ダメージ減衰能力」は盾を使う守護戦士や、《アイアンリノ・スタンス》を使う武闘家などの得意領域だ。こうしたタイプの戦士はスピアータイプに代表されるような攻撃型のエネミー(スピアー、シューター、アーチャー、ボマー)でもなければ通常のダメージはほぼ通らないし、場合によってはそうした攻撃すら無力化する。最もわかりやすい「硬さ」といえるだろう。
しかしこうした卓越した防御力であっても、直接ダメージを無力化することはできない。GMレベルでは《エネミーヘイト倍率強化》をボスや防御型のエネミーに積んで、わらわらと囲んで殴るとあっという間に弱っていく。これはPC側に防御型のエネミーを殴るモチベーションとしても機能するので、戦闘に幅が出ることが多い。

④「HPの多寡とその操作能力」とその弱点

「HPの多寡とその操作能力」は《インドミタブル》や《スカーレットスラスト》、《流派:風守雷攻》、《ブレスコントロール》のようなHP回復能力や上限をいじったりすることによって死ににくくするタイプの「硬さ」で、4つの「硬さ」の中では最もわかりづらい。場合によっては「柔らかい」とすら感じるだろう。
また、回復職に丸投げできてしまう能力であるので、これだけを専門的に扱う戦士も少ない。
しかし、この能力は他の3種の「硬さ」と組み合わせることによって飛躍的に効果を発揮する上、対策らしき対策がない。
それでも計画性を乱されることに弱いので《変異型の個体》の《ウェイクアップアクション》あたりを用意するとHPの収支計画を立てられなくなるので、大きなプレッシャーとなりやすいだろう。

崩す必要はあるのか?

ここまで戦士の「硬さ」の分析と、それぞれの領域の崩し方を述べてきた。戦士のキャラクターシートを見て、この戦士はどの領域で硬いからこういう因果力の使い方をすればいいんだな、みたいなところまでは読めるように思う。
しかし、徹底的にそれを崩しきってしまうと、戦士は見せ場を無くしてしまう。徹底的に崩すのではなく、回復職との連携具合を見ながら慎重に適用していく必要がある。
戦士を崩すのは、単に戦士に危機感を与えるだけでなく、回復職に仕事を与えるためでもある。そうした連携が皆無で、戦士が崩れたら崩壊するパーティであるなら無理に崩しにかかる必要はないだろう。
GMとPLは敵対者ではない。あくまでも楽しい時間を共有するための「出題者」と「回答者」だ。「この調整は本当に楽しいか?」という疑念は、必ずその卓の時間を印象的なものにしていくだろう。

このまとまりのない文章が、どこかの卓の時間の楽しさの一助となることを願う。


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