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「競プロer のソフトウェアエンジニアとしてのキャリアパス Part2」イベント開催レポート 後編 《社会人編》

2024年11月13日、前回4月に開催され好評を博した株式会社estieとの共催キャリアイベント「競プロer のソフトウェアエンジニアとしてのキャリアパス Part2」をハイブリッド開催しました。
 
オンライン約120名、会場には約25名のエンジニアたちが来場し、登壇者たちの多様なキャリアについてぶっちゃけトークが繰り広げられ、多くの参加者にとって自らのキャリアについて具体的に考えるヒントになったようです。
 
今回は前編「学生編」に続いて「社会人編」をお届けします。活躍するエンジニアたちが競技プログラミングに出会って(しまった)学生時代から、どのように社会でのキャリアを積んでいったのか…?今後はどんな展望を抱いているのか、ご覧ください。


Q:競プロと出会ってキャリアの第一歩をどのように選択した?

drken1215(けんちょん):僕はやっぱりアルゴリズムが大好きだったので、アルゴリズムを使えそうな会社を探しました。そんな中でNTTデータ数理システムと出会って。実際に入ってみると、新人研修でもアルゴリズム関連のものがありましたし、実際に仕事を始めてからもET結構書きましたし、焼きなまししたり、ビームサーチしたり、業務でたくさんアルゴリズムに触れる機会が多くて楽しかったです。

kenkoooo:僕の場合はちょっと変わっていて、ニートで競プロをやる生活をしていたら秋葉 拓哉という人から突然「研究室で予算が取れたから来ないか。暇なら手伝ってよ」とDMが来たんです。最初は迷惑メールかなとも思ったんですが(笑)。秋葉先生はアルゴリズムのアイディアはあるけれど、それを実装する手が追いつかないというくらいの天才で。なので僕はアイディアを聞いて、それを実装して論文を手伝うという仕事をしていました。研究所の技術職員がエンジニアとしての最初のキャリアです。

akensho(青木):その頃秋葉先生から「良い人いない?」と聞かれて何人か紹介したよ。みんな中退して暇してそうな競プロer(笑)。

Q:アルゴリズム一本でやっていける会社はそうそう無い?

akensho(青木):そうですね。drken1215(けんちょん)が行っていた会社はとても珍しいですし、世の中にはそんなに多くないと思うんですよ。これを見ている学生さんも、実はアルゴリズム一本でやってやるぞ!と思っている人は実はそう多くないんじゃないかな。レッドコーダーとかオレンジコーダーの人たちはもしかしたらそう思うかもしれないけれど、(レーティング分布的に)それ以外の人の方が大半です。

僕の事例は参考にならないので色々と考えてきたんですけど…。学生と話していると、よく「自己分析はどうしたらいいか」という相談がよくあリます。企業の人事の人と話していても「自己分析ができない人が多くて」という発言をよく聞きます。でも、自己分析ってあんまりやらなくても会社に入れます/実際に入れましたよね?いくら自己分析ができていても、その内にある自分自身の本質そのものがブレていたり弱かったりすると、「大丈夫かな」と思われて面接で落ちてしまう。自己分析しなくても、体から滲み溢れるオーラのある人は、面接に受かっていく。自己分析はそのくらいで捉えていいと思います。

もう一つ、「幸せのカタチ」について。(会場笑)
人それぞれだと思いますけど、今日は競プロerのキャリアについてですが、集合論的に考えるとその上にはエンジニアとしてのキャリア、さらにその上には人間(社会人)としてのキャリアがあります。そもそもキャリアって何かと考えると、自分の人生を良くしていくためにありますね。なので、どういう状態が自分にとって幸せなのか、それを言語化したり定義したりしないと、キャリアを考えるのも難しいな、と思いまして。・・・とすると、自分にとっての幸せのカタチを考えるためには自己分析が必要で、就活のときだけじゃないです、自己分析が必要なのは。

drken1215(けんちょん):akensho(青木)の幸せのカタチは?

akensho(青木):僕の幸せのカタチはですね、世の中の先を見出せない人たちがお目目バッキバキになって「やってやりますわ!」という状態になることで、それは良い競争が生まれるからです。

自己分析をして幸せを見つけたときに、人の数だけ幸せのカタチもたくさんあると思うのですが、根っこは共通していると思うんですよね。
・会社でしっかり仕事をこなして、きちんと評価されること
・それによって収入が増えて配偶者や家族に良い暮らしを提供すること
これらを否定する人ってあまりいないはずです。

ここは多分逃げてはいけないところで、(組織に属する人間である以上)ビジネスの本質からは目を逸せないはずなんですよ。コードを書いているだけでお金が降ってくるわけではありませんから。コード書いたり、ソフトウェアエンジニアとして働いているからには、システムをつくっている訳で、その先には利用しているお客様がいらっしゃる。そのお客様の役に立っているから会社として売り上げが上がって、お金が得られる。この点が学生のうちは見えにくいはずで、社会人になって働いているうちに見えてくるタイミングがやってくるんです。シニアになればなるほど、ビジネス全体に目を向けざるを得なくて、逆にそれができていない人はシニアは難しい。

kenkooooも学生時代はただコードを書くのが楽しかったと思うんだけど、今やestieの社員全員の給料が上がることを考えている。そこにはどんな意識変革があったの?何があって君の幸せのカタチは変わったの?

kenkoooo:30代くらいから、やりたいことが変わってきたというか。ある程度やり切った気持ちになって、自分の収入のためだけに仕事する時期が過ぎて、収入はある程度あるから他にやりたいことを探そうという時期が30歳過ぎた頃にやってきたんですよね。その頃に何を思ったかというと、僕は競プロが好きなんですけど、なぜ好きかというと、「戦い」が好きだから。次に何と戦いたいかというと、待遇で外資に勝てない日本企業をどうにかしたい、勝ちてぇ!と思った時に、「給料が良い会社を作りてぇ!」となったんです。自分の幸せのカタチは戦いの中にありました(笑)。

akensho(青木):これを聞いて、まだ30になっていないtempura0224(浦上)さんとかはどう思うの?

tempura0224(浦上):今僕は28歳なんですけど、新卒で会社に入る時、実はアルゴリズムに触りたくないと思っていたんです。なぜかと言うと、一番最悪なことを想定した時に、好きなアルゴリズムを仕事にしてもしもうまく行かなかったら、競プロまで嫌いになってしまう=何も無くなるじゃん!と思ったんですよね。あとは競プロって、ソフトウェアエンジニアリングのジャンルとしてすごく狭そうだなということもあって、Webの方がより通用するんじゃないかなと思って入ったのが最初の会社=フォルシアでした。

実際に一通りフロントエンドが書けるようになったり、RDB接続してある程度大きいアーキテクチャにも対応できるようになったり、アプリも作れるようになりました。研修も一通りあったので真面目にやって少しずつ身につけ、もちろん最初から全部を任されることは無く、せいぜい2-3ファイル編集できたらそれだけで褒められて嬉しいといった感じでした。3年くらいやっていると(その会社においては)新しいものもゼロからも作れるようになっていましたね。入社して生活が変わったこと、コロナでオンサイトが無くなったこともあって競プロは一度辞めていたんですが、4年目(2023年)にトヨタオンサイトに行きたくて再開して、やっぱり楽しいなと思っていた頃にALGO ARTISと出会いました。ALGO ARTISはアルゴリズムとフロントエンド両方できる人を探していて、アルゴリズムを仕事にする自信もついた今だったら、その2つで戦えるんじゃ無いかなと。

akensho(青木):やっぱりwebは武器でもあり、エンジニアとしての自信に繋がった?

tempura0224(浦上):そうですね。両方できる人は日本にそうそうはいないので。それにALGO ARTISはがっつりアルゴリズムでマラソンしている会社なので、不安はありませんでした。

akensho(青木):他のお二人はジュニアからシニアになる過程で、意識の変化はありましたか?

drken1215(けんちょん):一つの会社でジュニアからシニアに上がった経験は無くて、今の会社に入った時からシニアだったんですが、立場が人を変えるというのは感じますね。嫌でも成長せざるを得なかったのが正直なところ。

kenkoooo:やらざるを得ない状況と言うのは理解できます。僕がestieに入った頃はエンジニア10人くらいで、入社した時から「新しいプロダクトをとりあえず一人でやってください」的な状況だったので、こなしていく中で自信をつけていきました。

akensho(青木):ある程度仕事をこなして、行ったり来たりを繰り返しているから今の自信がある。そういう意味で仕事の真面目な取り組みはジュニアを脱出する重要な部分ですね。最初からそういう視点があれば良いんですけど、皆さんはメンター的な人がいましたか?

tempura0224(浦上):最初の上司の方がすごく優しかったんですよね。その上司の方が辞めた時に、会社で一番詳しい人が僕になってしまい、やらないといけない状況になりました。最初は結構シンドかったのですが、だんだんやっていくうちにこなせるようになってきて。今振り返ると、上司が辞めたのは成長の機会でしたね。

kenkoooo:意思決定の経験は大きいですよね。その責任を感じながらやることは大事だと思います。

drken1215(けんちょん):意思決定の段取りも、会社に入ってから段々と分かっていきました。ドキュメントをまとめてみたり、ステークホルダーを明確にして会議招集したり、ちょっとずつやっていくうちに分かってきましたね。

akensho(青木):僕は22〜23歳から意思決定ばかりだったので、謎の自信がついています(笑)。ものを決めて自分で実行するまでのプロセスを一手に引き受ける、一種の覚悟のようなものが、精神的なものにも、役職的なことにも、どちらにも効きます。

ちなみに皆さんは、最初から自ら手を挙げるタイプでしたか?まだ自分には無理だから先輩にお願いするなど、冷静なタイプでしたか?どこかで手を挙げる勇気は必要になってくるし、それができたから今があると思うんですが。

drken1215(けんちょん):自ら手を挙げることが本当に好きかと言われると今でも分からないですが、会社全体への影響力を持つことは好きなので、自動的にそうなる、手を上げざるを得ないところはありますね。

tempura0224(浦上):僕はネガティブ故のポジティブかもしれないのですが、「できる?」と聞かれると「できない」と言いたくないし、それが続くとできないと言えなくなっていくという…(笑)。自分から積極的にやってきたというよりも、「やります」と言ったからにはがんばりますという、割とそんな感じです。

akensho(青木):手を挙げられない人、一歩前に踏み出せない人、いらっしゃると思うんですけど、そういった人たちへ投げかける言葉はありますか?

tempura0224(浦上):生存者バイアスでしかないですよね。たまたまこれまで大きなやらかしをしてないという・・・

akensho(青木):ああ、先ほどkenkoooo さんの言葉にもありましたが、「責任」というのもキーワードですね。僕は経営者でない限り、たかが一従業員が取れる責任は限られているから、と思うんですよ。悪意が無い限り、もしミスしてやらかしてしまっても、そもそもミスが起きる状態であったことが問題であって。

kenkoooo:自分はとある仕事で巨大なシステムを止めてしまって、4,000万円の損失を出したことがあるんですけど、クビにはならなくて。自信とは違うんですけど、人間なんとかなるんだと言う感覚はありました。

akensho(青木):やらかした時の振る舞いが大事ですよね。すぐにすみません!と謝ってリカバリーしようとする姿勢。だから責任とか感じずに、まずはやってみたら良いんじゃないかなと思います。

Q:それぞれの転職について

kenkoooo:20代の頃はプログラミングの仕事で給料が良いかどうかということばかり気にしていました。2年すると大体一区切りつくので、そのタイミング毎で給料が上がるならという判断軸で決めていました。estieは全くそれとは違って、「戦いがしたい!」と言う気持ちで考えて、一番戦えるのはどこか?estieだな、と納得して決めました。

drken1215(けんちょん):僕は日本の、ゆくゆくは世界の全人類と関わりを持ちたいと思っているところがあって、自分にできる方法は何だろうと考えると「教育」だと。でも自分一人で自治体や協会に教育メソッドを売り込んでもそんな簡単には受け入れられないし、地方には地方で出来上がっているものがあったり、そもそも課題を感じていないところにニーズを作り出すのは難しいことで、とても一人ではできないと思っていた頃に、モノグサから声がかかって、モノグサのバリューの一つに「全人類に届けるのを諦めない」という一文があって、合っているなと感じた、そんな経緯がありました。
 
tempura0224(浦上):自分の中の変化と声をかけていただいたタイミングが合ったこと、友達のリファラルだったということもあって、ですかね。僕は人生の目標が何かと考えた時に、若くて視座が低いからというのもあるかもしれないですが、見えない人の想像がしにくい、というのがあるんですよね。仕事をしていて思うのは、同じ会社の人を幸せにするのがすごく楽しいんです。例えば、今まで1時間掛かっていたデプロイを10分でできるようにするとか、それぞれでやっていたことを汎用化して共有するとか、そういう働き方をして社内の人に褒めてもらったり喜んでもらえたりすると、ダイレクトに喜びを感じることができるんですよね。たまたま自分の仕事がお客様と実際に対面することが少ないからかもしれないですが、社内のメンバーを幸せにするということが好きで、そういう働き方を目標にしている

akensho(青木):今の言葉はヒントになりそうですね。みんなが壮大な目標を持つ必要はない。大学生だったら研究室のメンバーを助けたい、親とか家族に経済的な援助がしたいとか、そういう身近な人を助けられるように力をつけたいというのは幸せのカタチの一つでもありますし、それを続けていればもっと大きなところに辿り着ける能力が芽生えそうな気がします。

転職、自分は経験が無いので語れることが少ないですが、たくさんの人の話を聞いてきて、いろんな人を見てきて、自分を振り返ると「今の仕事より面白いことはあるかな」と思います。
AtCoderをやっていると、いろんな人の人生に影響を与えていて、今日もそれが分かったし、この規模感で人に影響を与えることができるのは、なかなか無いんじゃないかな・・・その魅力に取り憑かれている以上は、辞めることは考えづらいです。

ただ、一旦個人的な資産を築いた、そういう人たち(JTC役員クラスの人たち)って「身のまわり」の枠組みが日本という国レベルになって、そのレベルで仕事をしている人たち=大企業で日々グローバルで戦うことをやっている人たちと何か一緒にできるとなったら、何かしらの意思決定をするかもしれません。

パネルディスカッション後は懇親会が行われた

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