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AIによる配船計画最適化の新潮流とは 〜「人が仕上げる」AIソリューションVol.1

「配船計画」は一部の企業だけでなく、原材料を海外から調達している企業、日本から部品を輸出する企業など、数多くの企業にとって重要な業務です。スムーズな調達のためには緻密な配船計画が欠かせません。配船計画は、日本の製造業を、ひいては私たちの生活を支える重要な役割を果たしており、これが杜撰であれば、必要なタイミングで製品を届けることはできません。

しかし、この重要な配船計画業務は属人化という課題を抱えています。そこで最近注目されているのが、AIによる配船計画の最適化です。このAIソリューションは、配船計画を最適化するだけでなく、属人化の問題も解決します。

今回はそんな配船計画におけるAIソリューションについてご紹介します


1.配船計画業務の難しさ

配船計画とは

配船計画業務は、海外から原材料を船で調達する外航船と、国内で貨物を海上輸送する内航船があり、それらの配船計画を立案する仕事です。今回は海外から原材料を調達する場合の配船計画の例として、製紙会社を例に挙げてみます。
製紙会社の場合、紙の原料となる木材チップを世界各地から国内の工場に併設された港に運んでいます。大型貨物船による海上輸送を基本に、複数の海運会社と契約している専用船を使って、どこの産地のどのような原料をどのくらい載せ、日本のどの港にいつ届けるのか。そのような計画を日々策定しています。

【概要】配船計画の作成業務

配船計画の難しさ

配船計画の策定には、さまざまな制約条件があります。
木材チップの例では、木を伐採し加工する手間がかかるため、必要なタイミングで必要な量をすぐに準備できるわけではありません。また、木材チップを積み込む港によっては、船舶の大きさに制限があり、入港できないケースもあります。この問題を解決するには、必要な量を読み、船舶の大きさや入港可能な港を常に把握しておく必要があるのです。一方船舶を受け入れる国内工場では、在庫を切らすことなく、また多すぎることもなく、適切な在庫量で保管する必要があります。
そのほか航海の距離や船の速度、船のチャーター代、燃料費、滞船料などの指標を考慮しながら最適な配船計画にしていきます。また昨今はGHG(Green House Gas)の排出量なども管理が必要とされています。

複雑なExcel調整の工数

配船計画はExcelで配船表を作成することが一般的ですが、これには問題点があります。
船の位置情報や行先、積載物の状況、在庫状況、気象情報などをExcelに入力しますが、人間が入力するため、当然ながらミスが発生しやすく、ミスの見落としも起こります。
また工場の生産計画が変更されたり、気象などの要因で船舶のスケジュールが変わったりすると、適宜、条件や要素の変化にも対応していかなければなりません。その都度担当者には膨大なExcel調整という負荷がかかってきます。

膨大なコミュニケーション

配船計画業務には多くの人が関わります。営業、生産管理、各工場の担当者、プラントの担当者など、さまざまなステークホルダーと頻繁にコミュニケーションする必要があります。しかし複雑で分かりにくい配船表をベースとしたコミュニケーションでは、配船業務に不慣れな人や配船計画の全体像を把握する意思決定者にとって、情報の整理や理解に時間を要し、その分コミュニケーションコストが増大します。
さらに、変更が発生した際も、目先のトラブル対応だけでなく、関わるステークホルダーが対応可能かどうかを確認・調整しながら計画を変更していくということが求められます。

2. 属人化によるリスク

担当者の負担増

  • 配慮すべき制約や要素が数多くあること、またそれらが密接につながっていることで、すべての情報が集約される必要があること

  • 様々な変化に応じた長年の経験が求められること

  • ステークホルダーとの密なコミュニケーションが必要

これらのことから、配船計画業務は属人化する傾向があります。属人化によって担当者への負荷が増加することはもちろん、ノウハウの共有や継承も困難にします。担当者が休む場合、他のスタッフが代行することになりますが、引継ぎノート等だけでは十分に対応できず、かえって担当者の負担が増えてしまうということも起こりかねません。

企業全体としてのアウトプットが低下する

属人化が進むと、その業務に関する知識やノウハウが特定の担当者だけに集中することで、業務の標準化や効率化が難しくなり、業務の進行遅れや、品質が低下したりするリスクが高まります。
例えば、担当者の不在中に配船計画を迅速に修正しなければならない場合では、対応遅れによりステークホルダーに多大な迷惑をかける可能性があります。最悪の場合、賠償金の請求を受けることも考えられるのです。

また属人化によって組織全体としてのスキルの蓄積が進まないことは、企業としての競争力低下にも繋がります。
属人化は、個々の能力に依存する一方で、組織全体のパフォーマンスを阻害するリスクとなり得るのです。

3. 最適化AI(ヒューリスティックアルゴリズム)による課題解決

複雑な条件もAIで解決〜ヒューリスティック最適化

複雑で難しい配船計画という業務だからこそ、AIを活用することで解決が見込めます。
AIソリューションはさまざまな業務に適用されていますが、最適化に利用されるAIの主な種類として、数理計画法、機械学習、ヒューリスティック最適化などがあります。ALGO ARTISはその中でもヒューリスティック最適化を主に採用しています。

ヒューリスティック最適化とは、複雑な問題を効率的に解決するために使われる手法で、厳密な最適解を求めるのではなく、現実的で実行可能な良い解を迅速に見つけることを目的としています。
柔軟性に富み運用面の透明性も高いヒューリスティック最適化は、配船計画における複雑な要件に対して、実行可能で効率的な配船計画を立案するのに非常に有用です。計算資源や時間が限られている状況でも、影響を最小限に抑え良好な解を迅速に見つけることができるため、配船計画業務に適しています。

“使える”ものにするには

計画がAIによって最適化されたとしても、計画担当者にとって「使える」ものでなければ本末転倒です。例えば、弊社の計画最適化ソリューションOptium(オプティム)では、わかりやすく直感的なUIを重視しています。ツールの使い方に不慣れな方でも、少しの研修で誰でも扱えることを目指して設計しています。各種オーダー、積地の契約状況、揚地の在庫状況、バース表(桟橋の管理表)、潮汐データなど、各担当者がインプットしたデータをシステムが集約し、最適化ボタンを押すだけで簡単に操作可能です。
さらに、Optiumはクラウド型のため、場所を選ばずに使用できるうえ、ステークホルダーへの通達機能を実装しており、複雑なコミュニケーションを削減することで、現場で“使える”ことを徹底しています。

ALGO ARTISには、ヒューリスティック最適化に精通した世界トップレベルのアルゴリズムエンジニアが在籍しており、最適化のコア部分を支えています。さらにビジネス・アルゴリズムエンジニア・プロダクトエンジニアがプロジェクトチームを組み、お客様の課題を吸い上げ、各社にとって最適なソリューションに仕上げています。担当者に寄り添ったソリューションとしてAIが最適化したものを、担当者が手元で手触り感を持って最後の仕上げができることもポイントです。

担当者に寄り添い、課題を理解して設計し、最終的には人が仕上げることで、速度と精度のバランスを高次元で実現するAIソリューションを提供しています。実際にあるお客様の事例では、配船作業時間が導入前の約1/3に短縮され、CO2排出量は2.8%削減する成果を上げることができました。

次回は、ALGO ARTISがどのようなアプローチで設計を行っているのか、さらに具体的にご紹介していきます。

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