呉市在住 2
駅を降りたら商店街を抜けて路地を駆け上がり、玄関の前で深呼吸。それから扉を開けて「ただいま」と声をかける。
もちろん家には誰もいないけど、戻ってきたよと言いたくなるのだ。
なにかと港町に関係のある仕事なので、最近は伝書鳩のように特急列車を乗り継いで街と街を往復する日々だ。それでも一晩だけでも家に戻れるなら戻ってこようと思っている。
家に帰ったらまず部屋の明かりを順番につけてまわって、それから給湯器のスイッチを入れる。湯を沸かして夕食を作る。そんなふうに、一晩でも家に明かりが灯るのなら、僕はこの家に戻ってきたい。
話は少し変わって、最近アロエやソテツ、リュウゼツランといった南国系の植物を育ててみたいという興味が湧いてきた。路地を歩いていると、そういった植物が玄関脇で育てられていることが多いように思う。
無機質な路地階段の街に、ゴツゴツとした姿の植物は不思議なほどよく似合う。
今日は帰りに花屋さんに寄って、ソテツの赤ちゃんを買って帰った。外に置くにはあまりに小さい個体で、しばらくは室内の縁側で育てようかなぁと思ったけど、街に生えてるような立派な個体になるには何十年もかかるらしい。