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沖縄|久高島を望む斎場御嶽

観光地化が進んで、すっかり聖性が薄くなってしまった…というお嘆きの声をたくさん聞きますが・・・それでもやっぱり特別の聖地だと思います

三庫理(さんぐーい)
現在は手前に柵があり奥には入れない
三庫理から望む久高島
現在、この場所から眺めることが出来ないのが残念

近年の斎場御嶽の状況

多くの人々を惹きつける聖地斎場御嶽。観光客の増加対策で、国道331号線沿いに物産館付きの大型駐車場が整備されるなどしました。

聖地内への入場前には「聖地の館・セーファ」で鑑賞マナーなどのビデオ視聴して禁止事項や注意するべきことを確認し入場するようになっています。

それにも関わらず、2021年には斎場御嶽にある香炉が無くなるなどの事件などもあり、久高島を遥拝することが出来た三庫理(さんぐーい)の奥は立ち入り禁止になってしまいました。
とてもとても残念なことです。

緑の館・セーファ
現在の大駐車場からここまで徒歩10分位

斎場御嶽とは

聖地を意味する御嶽。「せーふぁ」は最高を意味し、斎場御嶽(せーふぁーうたき)は、御嶽の中でも最高位の場所であることがわかります。

斎場御嶽は、15世紀~16世紀の琉球王国尚真王の時代に成立したとされています。琉球王国時代に聖地として崇められてきたことは、様々な史料から分かっています。
斎場御嶽は男子禁制の場所であり、国王であっても、御門口より先に入るには女装に着替える必要があったことも分かっています。

2000年には「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の一つとしてユネスコ世界遺産に登録されています。

10年程前までの斎場御嶽

オーバーツーリズムと言われる前までは、現在の「緑の館・セーファ」のすぐ手前の駐車場に簡単に駐車出来て、聖地内は時として、誰もいない時間をゆっくり体験することも出来ました。

草葉の触れあう音や風のそよぎ、空気が動いている感覚や、何かの気配が忍び寄ってくるような錯覚を覚えるような時もありました。

三庫理から久高島を望むと、過去の人々と同じ視線を重ねながら、ひとびとの祈りについて想いを馳せることも出来ました。

50年程までの斎場御嶽

岡本太郎は戦争後の沖縄を何度も訪れています。
著書『忘れられた日本〈沖縄文化論〉』には戦後の沖縄の様子が生き生きと描写されています。御嶽についても書き残されています。

私を最も感動させたものは、意外にも、まったく何の実体も持っていない ー といって差し支えない、御嶽(うたき)だった。
御嶽 ー つまり神の降る聖所である。この神聖な地域は、礼拝所も建っていなければ、神体も偶像も何もない。森の中のちょっとした、何でもない空き地。そこに、うっかりすると見過ごしてしまう粗末な小さな四角の切石が置いてあるだけ。その何もないということの素晴らしさに私は驚嘆した。これは私にとって大きな発見であり、問題であった。

『忘れられた日本〈沖縄文化論〉』「何もないこと」の眩暈
岡本太郎 中央公論社 1961年 より

何の手応えもなく御嶽を出て、私は村の方に帰る。何かじーんと身体にしみとおるものがあるのに、われながら、いぶかった。なんにもないということ、それが逆に厳粛な実体となって私をうちつづけるのだ。ここでもまた私は、なんにもないということに圧倒される。それは、静かで、幅のふとい歓喜であった。
あの潔癖、純粋さ。ー 神体もなければ偶像も、イコノグラフィーもない。そんな死臭をみじんも感じさせない清潔感。
神はこのようになんにもない場所におりて来て、透明な空気の中で人間と向かいあうのだ。

『忘れられた日本〈沖縄文化論〉』神と木と石
岡本太郎 中央公論社 1961年 より
寄満(ゆんいち)
台所を意味する拝所で貢ぎものを寄せる場所とのことです
大庫理(うふぐーい)
聞得大君に黄金のかんざしを差す御名付けの儀式がおこなわれた場所

斎場御嶽の新しい大駐車場

現在の斎場御嶽は、入場チケット売場が国道331号線沿いの大駐車場とお土産物店がセットになった施設に移り、そこから10分程の坂道を歩いて入場口へ向かいます。人気の観光地になった以上、駐車場などを整備しなければ大変な混乱になるので仕方ありません。

聖地の静寂さを確保するため設けてある休息日の期間は入場出来ません
休息日があることはいい事だと思いますが、うっかり知らずにその日に訪れると残念なので、事前に確認した方がよいでしょう。

周辺の施設

斎場御嶽から車で20分くらいのガンガラーの谷がおすすめです。
ここの洞窟カフェは太古からの空気を感じるような不思議な雰囲気があります。
玉泉洞のガイドツアーを事前予約しておいて、鍾乳洞や森の中を巡り、三万年前に洞窟に住んでいた旧石器時代の人々を想像するのも楽しいです。

洞窟カフェ
玉泉洞ツアー
学術調査中の場所もありました

斎場御嶽は、琉球王国時代から聖地として崇められてきた場所であり、現在も多くの人々が訪れるパワースポットです。
訪れる際には、観光地ではなく、現在も聖地であることを忘れずに謹んで訪れたいと思います。

洞窟から帰還したときに出迎えてくれたキレイな花


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